98話 5章 ~???~
何が起こった?
あまりの異様さに頭が混乱している。
落ち着け。
いったん状況を整理しよう。
先程まで、僕はユウリくんの対峙していたはずだ。
だが今目の前に見えるのは、天井だった。
しかも円卓の部屋の天井ではない。
これは、2階にある個室――恐らく自分に割り当てられた部屋だ。
ユウリくんと話している間に、後ろからチハヤくんに殴られでもしたか?
いや、そんな衝撃はなかった。
本当に一瞬。
一瞬で、目の前の光景が入れ替わったのだ。
まるで、紙芝居で次の場面に進んだかのように――
「・・・・・・っ! おいクウギョ!」
思わず運営側であるあいつを呼ぶ。
するとクウギョは、いつものようにフヨフヨと浮かびながら現れる。
「はい、何でしょうか?」
「これはどういうことだ? 何で僕は個室に運ばれているんだ?」
「それも含めて、説明のために『円卓の部屋』に集まっていただくよう、先程アナウンスをしたのですが・・・・・・寝ていらっしゃったのですか?」
「アナウンス・・・・・・?」
何を言っている?
「運営のお前達が何かしたのか? 神である僕に?」
「何かしたも何も、ワタクシ達は前任の神である貴方様に何でもかんでもできるわけでも・・・・・・あれ?」
クウギョが魚の姿なのに器用に首を傾げる。
「どうかしたのか?」
「いえ、貴方様ですが、神の『能力』が――無くなっておられます」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
何を言っているのか理解できなかった。
「お前・・・・・・『運営』側にあらかじめ言ってたよな! 僕は神の『能力』を使えるままにしておけって! それをこの終盤にいきなり奪うってどういうことだよ!?」
「そのお約束はしておりましたが、しかし、これはワタクシ共がやったわけではありません」
「嘘つけ! そんなの信じられるかよ!」
「それに、今、おっしゃいましたが――終盤、とはどういうことでしょうか?」
「は?」
こいつは何を言っているんだ?
残り4人となり、マシロくんを殺した。チハヤくんも致命傷でもうじきに死ぬ。
残ったのは僕とユウリくんの2人で、後は円卓会議の投票で適当な人に入れれば終わりという状況だ。
これを終盤と言わずになんと――
「これから――今回の『宴』が始まるという所ですが」
「・・・・・・は?」
今、なんて言った?
目の前がくらっとした。
まるで先程、景色がいきなり変わった時のように。
「もう皆様、集まっておられますよ。早めに向かっていただければと」
「ちょっと待って。今から『宴』が始まる、って?」
「はい。先程、そう言いました」
クウギョはふざけた様子もなく、至って真剣にそう答えた。
僕の中で嫌な予感がどんどん膨らんでいく。
胃がキリキリと痛むような、そんな不快感も襲ってくる。
「っ!」
僕は一刻も早く確かめるべく、部屋を出て円卓の部屋へと向かった。
2階の廊下を走り、4階まで階段を駆け上がり。
息を切らしながら、円卓の部屋の前までたどり着いた。
・・・・・・落ち着け・・・・・・そんなわけない・・・・・・そんなわけが・・・・・・
僕は大きく深呼吸して呼吸を整えた後、その扉を開いた。
その部屋の中には――12人いた。
忘れもしない。
間違えようがない。
あの時と同じ人達が、そこに生きて、いた。
第一の事件で殺された、牛場タケルが。
その事件の犯人だった、馬目サイが。
第二の事件で殺された、虎賀ケンタロウが。
その事件の犯人だった、鳥羽ツバメが。
第三の事件で殺された、猿島サスケが。
その事件の犯人となった、犬飼ヒナタが。
第四の事件で殺された、蛇見ナギサが。
その事件の犯人だった、羊谷ジンが。
僕が刺し殺したはずの、兎沢マシロが。
同じく致命傷を与えた、龍崎チハヤが。
そして僕と最後相対した、猪瀬ユウリが。
更に――
「君が最後のようだね」
入り口近くにいた真面目そうな黒髪の男の子に、そう声を掛けられた。
前と同じ構図で、同じ言葉だった。
「……」
嫌な予感が更に増幅する。
僕は敢えて同じ言葉を口にする。
「えっと・・・・・・最後かどうかは分からないんですけど、そうなんですか?」
「そうだと思うよ。先程の放送で『13人』と言っていたしね」
全く同じ言葉だ。
ならばきっと――
僕は希望を込めて、同じ言葉を口にする。
「あの、もしかして・・・・・・根津くん? 生徒会長の・・・・・・」
「?」
彼は疑問符を浮かべ、そして――
「根津? 誰のことだ?」
彼は怪訝な表情で僕にこう言ってきた。
「ワタシの名前は、猫山アユムだ。誰かと勘違いしているのではないか?」
・・・・・・本名を名乗っている。
ってことはやっぱり、神の『能力』が無くなっている、ということか。
その事実に愕然とし、僕は膝をつく。
「おいおい、大丈夫か? ・・・・・・ん?」
アユムくんは僕に手を伸ばした瞬間、何かに気が付いたかのように自分の手を打った。
「そうだ。君、同じ学校の子じゃないか。えっと、確か名前は――」
彼は告げる。
僕の――本当の名を。
「鼠尾コウタ君」




