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死に戻りの公爵令嬢は、三度目の人生もひた走る!  作者: とり
第一章 武者修行

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1.死に戻り二回目 

「リリアナ、来月に十五歳よね。ノーエル王国の王族に連なる者は十五歳、成人になると王宮で祈りを捧げるのがしきたりなのよ」


そう言うと、先代国王陛下の王妹であるお祖母様は上品な仕草で紅茶を一口嗜み、庭園の咲き誇る花を愛でながら微笑んだ。


「わたくしの孫娘である貴方もよ。そうだわ、三日後にでも非公式で王宮へ参りましょう」



(‥‥っつ!! ううっ、ちきしょー、二回目だわ!!)


荒い息を隠しながら、ドレスの上から心臓をギュッと強く押さえつけた。


(くっ‥‥襲撃されて、剣で、心臓を貫かれて‥‥し、刺殺?!)


目の端には剣呑な雰囲気を感じ取ったらしい護衛達が原因を突き止めようと辺りを真剣に見回している。


つい先ほどまで襲撃者とやりあっていたので、溢れでた殺気は許して欲しい。

呼吸を整えながら顔を上げると、四阿の穏やかな陽だまりが強張った心と身体を癒していく。



ここは、また(・・)お祖母様とのお茶会。


深呼吸をして気持ちを落ち着かせながら『ここはお茶会』を三回心で唱える。


「え、ええ、お祖母様‥‥」



冷や汗をかきながらも体裁を取り繕ったお茶会が終わり、王都の公爵邸に着く頃には心情を表すような薄墨色の雲から雨が降り始めていた。


自室の侍女達をにこやかに追い出してから、空虚な気持ちで片手を見やれば指輪がきらりと光る。


そして、寝室にある衣裳部屋には当たり前のようにあの外套があった。


(うっ、死に戻り、二回目と言うことなのかしら‥‥)


見たくもないとばかりにバタンと音を立てて衣装部屋の扉を閉めた。




◇◇◇




ディフラン公爵家長女リリアナとして生を受け、『家の利益のために政略結婚は令嬢の義務』と努力してきた結果が謎の転落死に続く、刺殺の死に戻りである。


これまで経験してきた記憶が走馬灯のように頭を駆け巡り、理不尽やら何かやらで感情を上手く抑えることが出来ない。侍女達に聞こえないように両手で顔を覆い、嗚咽を堪えながらひたすら泣き続けた。


どのくらいそうしていたのか分からない。泣き疲れて考えるのも面倒とばかりに寝台に身を任せていると、ややあってコツコツと控えめに扉が叩かれた。


適当な返事をするとやわい夕焼け色の髪をキュウと後に束ね、若葉色の瞳、二つ年上の侍女兼護衛のテリーが心配そうに立っている。


「あの、お嬢さま、ドレスですと何かとご不便かとっ。お召し物を夜着に変えられますか?」 


テリーの声に心臓が激しく動悸する。今度はテリーとまた会えた事が嬉しくて鼻の奥がつんと 沁みて、涙が出そうになる。コクリと頷くだけで精一杯だった。


手際良く身支度を整えてくれて、泣き腫らした酷い顔をしているはずなのにそっとしておいてくれる気遣いが嬉しい。


テリーに少し疲れたので数日は部屋でゆっくりするつもりと伝えて、ばさりっと毛布を捲り、寝台に滑り込むとほぼ同時に深い眠りに落ちた。



何度か不意に心臓を貫かれた激痛を思い出して額に脂汗が滲み出る。全て夢であったらと願いつつうとうと眠り続けていると、扉をコンコンと叩く音がする。


「お嬢さま、お加減はいかがでしょうかっ? 本日の先代公爵夫人様とのご予定はいかがなさいますか?」


覆っていた厚手の窓掛けで気付かなかったが、すでに三日も閉じこもっていたらしい。約束を違えることはしたくないので、やむを得ず起きることにした。


(できることなら、一月は閉じこもっていたかったわ‥‥)


朝支度で侍女達がさっと窓掛けを開けると、スコンと抜けるような青空が眩しい。眩しさに目を眇めていると、侍女達の息を呑むような「ひっ!」としゃっくりのような声が上がった。


不思議に思いながらも、いつもの流れるような運びで水グラスが載った銀盆を受け取る。その磨き込まれたツルツルの銀盆には自分でも愕然とする程の顔が映っていた。


やつれた顔に腫れあがった瞼と血走った目。付け加えると髪が絡まり、見るも無惨なもじゃもじゃだ。


テリーと実力派の腕利き侍女達が後に数歩下がって全体を眺めながら唸るほどだった。


「現状を把握しましたっ!」と、気合を入れ直したらしい侍女達に取り囲まれ、時間は掛かったがなんとか見れる姿にしてもらった。


あてがわれた姿見には十五歳の美しい顔立ちの少女がいる。透き通るような白い肌、艶やかな銀色の髪、そして角度によって色味が変わる真夏の青空のような瞳が美しく輝く。


「お嬢さま、いかがでしょうかっ? 王宮に向かわれるご予定ですので、落ち着いた気品ある感じにいたしましたっ」


胸を張る侍女達が選んだドレスは、瞳に合わせた紺碧色の生地を贅沢に使った逸品で、袖と裾にある銀糸の繊細な刺繍が上品さを際立てている。


「流石ね。ありがとう」


やり切った感のある侍女達が退室した途端に静けさが戻ってきた。


淹れてもらった爽やかな香りと心地よい渋さの紅茶を一口二口と味わっていると、段々と頭の中がスッキリしてくる。


そして、無性に腹が立ってきたのである。怒りで冒険者達に教わった荒くれ者の言葉がどうしても混ざってしまう。


「ちょっと、何なのよ、あの黒マント野郎っ! 魔力を玉にして剣でかっ飛ばすわ、地面に潜るわ、モグラかっつーの! 全くもって騎士道に反するわ!」


侍女達に心配されないように小声でゴチりながらクッションをボスボスと叩きまくる。



「しかも、あの貫かれた時の猛烈な激痛っ! クソボケがっ!!」


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