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GENE SERIES 03 魔法少女たちの輪舞曲  作者: クリスタルナオト
魔法少女大戦Ⅰ 黒の来訪者
21/48

異界の陰謀、希望の道標

 今回から新章を展開します!

 新キャラも続々登場予定だよ!

 魔法少女vs魔法少女の激しい(?)バトルに刮目せよ!

「つまり白の魔女セレネの身柄を確保することは未遂に終わった、と捉えてもいいのか?」

「はい。アテナの報告をまとめるとセレネの眷属を一掃。しかし彼女を重傷に追い詰めたものの、新たに現地の少女を眷属して命を取り留めた模様。更に靖国やすくに永善えいぜんという名のキリスト教司祭がアテナたちを阻害、以後は仲介役として取引していた様子。彼の取引に応じたアテナは新たな眷属と戦闘し敗北。結果としてセレネのジュエルハートを奪えず、奪取していた欠片も敗北条件に従って『返却』したようです」


 紺と赤が配合されている、夕焼けでもなく夜空でもない、どこか混沌とした空。

 見渡す限り光という光――星などがどこにも点在しない奇妙な風景。

 その天下でギリシャのパルテノン神殿に似た、ドリス式の岩の建築物に佇む一人の少女は、繋がりのあると女戦士アテナの詳細を報告していた。

 その前に立つのは複数の黒いきり。それが空中に浮遊して揺らいでおり、少女は霧に向かって報告しているのだ。

 だが確かに少女に問いかけていた男性の声は明らかに黒霧から発せられていた。


「それで……我等の要求をあと一歩の寸前で叶えられなかった女戦士はどんな言い訳を残したのだ? それくらい聞いておるのだろう」

「そのことですが……戦士アテナは『二度と関わらない』との言葉を残して魔界ヘル・アースへと帰還しました」

「ッ……あの役立たずめがぁ!」


 黒い霧から発せられる怒号が廃墟となった神殿、外の

 だが少女は臆することもなく跪いて聞き流している。


「白の魔女のジュエルハートを一度手にしておきながら敗北するとは何たる愚者の顕現よ! 大方、人間の口車に乗って一対一で戦ったのだろう! 他に二人もいながら失態にも程がある!」

「仕方がねぇッスよ。半人ハー魔の奴らは人間界から故郷を追われてノコノコとコッチにやってきたンスから民族意識が強いンスよ。それにあの筋肉モリモリのアマって誇り高さを大切にするマグルカ族の戦士なんでスよね? そりゃ愚直なまでに誠実を貫くんだから敵の策に乗るのも当然じゃないでスッかね~」


 中高年の男性に続くは軟派な若者の男性の声。

 これも思春期相応の少女の前に出現する黒い霧から発せられているものだった。


「ゾンデューグ、そんな事は聞いておらんのだ! やはりあの混血の魔人に任せるのが間違いだった! 魔女の眷属が相手と雖も千載一遇の好機を逃してしまった! マグルカ族には恥がないのか!? そうだ、我々を裏切った責任として滅ぼすのだ!」

「ガミダーラ様、どうか落ち着きなさってくださいな。我々純粋な魔族は魔界ヘル・アースでも殆どの魔力を失っていますわ。その上、魔力が存在しないコミリ族は特化した身体能力だけは群を抜いていますから、殲滅に向かったところで返り討ちにされるところですわよぉ?」

「ぬぅぅ……」


 怒号の絶えない男性を宥める女性。これも複数の黒い霧の中の一つが発しているものだ。

 その口上はどこか艶めかしい色気が含まれている。

 しかし雰囲気が毒婦と似た女性は更に続けた。


「それに白の魔女セレネと契約した眷属と靖国永善が協力関係を結んでいたとするならば、戦士アテナでも敗北するのも当然ですわぁ。彼は魔力破壊の我流拳法『かっしんさつけん』の持ち主ですから舐めてはなりませんよぉ?」

「ほう……やけにその人間の実力を買うではないか? フラディアスよ、貴様はその神父と関係があったのか?」

「ええ、勿論。彼と……私たちおやとは大いに。今はもう敵ですが」


 跪いている少女が毒婦の言葉に若干揺れたのを実体のない黒い霧は見逃すことはなかった。

 その姿――前髪を横に一直線に切り、後ろ髪を腰まで伸ばしたロングヘア。腕、耳、首、額に施された金のアクセサリ。アイシャドーで陰影のついた目線。上半身から下半身まで繋がった半袖のローブ。太ももから足首までが露出してグラディエーターサンダルが見える。

 それが少女の特徴だった。

 ガミダーラと呼ばれた黒い霧は、フラディアスと呼ばれた霧と少女を見比べて静かに笑った。

 ――なるほどな。

 霧の一つ、フラディアスの娘である少女は報告を再び行う。


「お言葉ですが、もう関門せきと市の教会には靖国永善はいない模様。行方は未だ知れませんが、白の魔女セレネの存在が弱まっている今、早急に彼女のジュエルハートを奪取した方がよろしいかと」

「そうらしいッスね~。魔女も神父もいないんじゃ、眷属が強くても恐るるに非ずッスよ!」


 ゾンデューグと呼ばれる黒い霧がやたらとテンションを上げ、それに同調するようにして中高年の男性が吠える。 


「他の魔女や眷属に遅れをとってはならん、すぐにセレネのジュエルハートを我ら魔族の手中に収めるのだ。そして衰退しかかった魔界ヘル・アースかつての威光を取り戻し、今度こそ人間界を再び我等に!」

「ガミダーラ様、最高ッスよ~! 配下ゾンデューグ、どこまでもガミダーラ様についていくッス! そして人間の悲鳴をこの身に浴びましょうよッ!」

「ガミダーラ様の広大な計画、素晴らしいですわぁ。私もゾンデューグと同じ気持ちです、何れ人間界を闇を染めましょう」


 黒い霧の意気揚々とした様子に少女も更に跪いた。


「フラディアスの娘――――アイリーンも心深くから賛同致します」


 すると黒い霧と少女のアイリーンが存在する神殿の入り口からコツコツと踏み歩く音が響く。それは此方に向かってくるようで、すぐにドリス式の柱からその姿を現した。

 それは道を練り歩いて地域を流離う大道芸人の身形みなりに扮した長身の男性だった。

 漂白したかのような灰色の髪、彫りが深くて高すぎない鼻、そして殆ど閉じきった糸目。いわゆる優男だ。

 大道芸人風の優男が黒い霧と少女の前に慇懃な礼を見せて従属を示す。


「ならば、偉大な計画の成就の為にこの私を戦士アテナに次ぐ第二の尖兵として派遣しては如何ですか? ンフンフンフンフ」

「貴様――魔族ではないな。人間か? メタ空間フィールドにどうやって入った?」

「ンフンフンフ。左様、この私めは人間でございますが只の人間ではありません。『魔術師ウィザード』なのです。それも上位の、ね。ンフンフンフ! ですからここに入れたのも当然と言えば当然です、ンフンフンフ」

「……」

「おっと、紹介が遅れましたね。私の名はマステルド・バドラルカでございます。普段はマジックや超能力と称した魔法で商売しながら人間界の各地を巡回しています。どうぞ宜しく、ンフンンフンフ」


 不気味な笑い声に魔族と称する黒い霧たちも気が引けていた。フラディアスの娘アイリーンは無表情はあるが。

 はっきり言えば――信用してもいいのか、と。

 魔族にとって人間は敵であり、支配すべき下等生物なのだから。魔力を有した人間でもそれは例外ではない。

 しかし大道芸人は気にする様子もなく不気味な笑みを今も作っている。

 ここでゾンデューグと呼ばれる黒い霧がヒソヒソと静かに呟いた。


「ガミダーラ様、コイツを信用してもいいんじゃないスかぁ~? 我等には魔女や眷属に打ち勝てるだけの駒は数少ないんでスから利用したらどうかと~」

「うむ……魔術師ウィザードは魔女にも劣らない魔力の持ち主……ならば利用しない手はない」


 ――こちらには切り札があるのだからな。

 ――魔女や眷属に対抗するには、なるべく切り札は秘蔵していた方が有利だ。

 ――であろうが魔術師ウィザードだろうが利用できるものは利用すればいいのだ。


「よし! 魔術師ウィザードよ、貴様に白の魔女セレネのジュエルハートの奪取を任せよう。現地で契約した眷属は殺していいが、他の魔女や眷属と鉢合わせになるような厄介はするなよ」

「ええ、与えられた任務は必ず果たしますよ。それと……眷属の処理については私の方に任せてください。ンフンフンフ!」


 ピエロのような笑いの表情で口元を更に引き攣らせて不気味さを醸し出す魔術師ウィザードは、そのまま笑いながら廃墟の神殿を退散することとなった。

 その場に残るは静寂と少女と黒い霧。

 少女は彼の気配が完全に消えたと察知する。


「では私は人間界へと赴き、少しでも多くのに協力を求めるよう交渉してきます」

「アイリーン、我等に協力できる可能性のある者は人間でも良い。利用できる者を我等の駒として利用し尽くすのだ」

「了承……しかしガミダーラ様、人間の中で我等と協力する人間など存在するのでしょうか?」

「アイリーンよ、貴様の報告の中にたった一人いたではないか――それも打って付けの人間がな」






「ぬ……ぬぐぐ」

『とおーーーーくかーがやく夜空の星に♪ ぼーーーーくらのねーーがいがとーーどーくときーー♪ ぎーーんーーがれんぽーーはーーるかにこえてーーーひーーかりとともにーーやってくるーーー』

「ぬぬ……ぬぐぐぐ」

「今だっ! 変身! 北斗とみーーなーーみーー♪」

「ぬぬぬ……ぬぐぐぐぐ!」

『たたーかえーーーたたーーかえーーウルトラマーーンエーーーーース! うちゅーーーーのエーーーース』

「ぬがああああああああああぁぁぁぁ! あーーーーーーーもう! 朝っぱらからうるさいわねぇぇ!」

「あ、奏美起きたのね。おはよ! 今日はいつもより早いね」

「おはよ! ってそりゃ悠華が朝早くから特撮見て騒いでれば起きるわよっ!」

 

 チュンチュンと雀が鳴きコケコッコーと鳴きそうな、安穏とした晴天の翌朝に轟く奏美の叫び。

 普段ならば定刻の六時半に起きる習慣であった彼女は、テレビから騒々しい演出のSE音に耐えかねてしまい二段ベッドの上で叫んでしまった。

 時刻は六時、翌朝から騒々しいSE音を流していた犯人は正しく悠華であった。彼女がテレビの前で特撮ドラマを見ていたのだ。しかも桜色の下着姿というはしたない格好で。

 この姿を学生寮の住人が目撃してしまえば、才色兼備と謳われる悠華のイメージが大きく崩壊して失神してしまう者が多数現れるだろう。だがルームメイトである奏美は入寮してから何度も彼女の品位の欠けた行為や容姿を目撃している為、嫌な事ではあるが慣れてしまっている。

 だが迷惑は迷惑だ。奏美は五時から垂れ流しに聞こえる特撮ドラマの会話音とSE音が喧しいのに耐えていたが遂に耐え切れなくなってしまったということだ。

 おかけで二度寝をしてしまい気分がイライラとしていた。

 学生寮の部屋の壁は騒音防止仕様になっているが、ルームメイトの迷惑は未然に防げない。


「ウルトラマンは円谷プロの至宝と言っても過言じゃないわ。昭和シリーズも平成シリーズも愛してこそファンと思わない?」

「そんなこと言われても知らないよ! 私にそんなファンの熱い魂みたいな事語られても困るだけだよ!」

「でもティガは何故か見るよね? 一緒にダイナもメビウスも見るけどアレはどういう風の吹きまわし?」

「うっ!」 


 そう彼女の言う通りである。

 それも最近の出来事ではなく、悠華が特撮ドラマや特撮映画を観賞するのが趣味だと判明した頃からの行為であり、彼女が「ウルトラマンティガ」「ウルトラマンダイナ」「ウルトラマンメビウス」の三作品を見る度に、デスクか或いは真横から一緒に観賞しているのだ。

 ――見るのはいいが、どうせなら「ウルトラマンガイア」も見てほしいのが悠華の勧めだが。


「それは……まぁ主人公のダイゴがカッコイイから? アスカもミライ君も結構なイケメンだし……」

「ふ~~ん、奏美って顔立ちのイイ人ばっかり選んでるわね。器量好みというか面食いなのね、ジャニーズ好きだと思ってたけど」

「べ、別に私が面食いだなんて訳ないじゃない! 人間は顔だけじゃなくて心も必要なんだよ! そう、内面の優しさを反映したイケメンさんが好きなんだから。知ってるでしょ、私が大好きなKon-tonの龍牙君もそんな人なの!」


 スルスルと二段ベッドの階段を滑るように下り、鼻と鼻が触れ合う程に詰め寄って意気込む。背中からは情熱という名のオーラが湧出していた。

 そんな彼女の勢いに圧倒された悠華はすっかり黙ってしまった。


「……何か釈然としないけど奏美がそう言うんならそうなんでしょうよ」


 ――ウルトラマンの主人公だったら南光太郎がカッコイイなぁ。篠田さんの笑顔が最高だし。

 とは親友にどうしても言えない才媛であった。

 すると悠華は打って変わって、ウルトラシリーズの映像を映していたテレビの電源をリモコンで切った後にカーテンを開けた。

 窓から彼女たちを照らしてくる朝日はとてつもなく眩い。

 その行為が何なのかは奏美にとっても知る領域だった。


「奏美、今からアレを出すよ」

「うん、わかってる!」


 これから何が起こるのか予想できないが、二人は期待の眼差しで棚の上に配置されていたジュラルミン製のケースを取り出す。

 そして緩衝材で包まれていた布の包みを窓際のデスクの上に置いて、包みを解き始める。

 すると包みの中から目が眩む程の白光が二人の部屋全体を余すことなく照らした。


「うわぁ……今日も一段と輝かしいね」

「この光……毎日見ても飽きないくらい美しいわ」


 朝日を反射させて白く輝く発光体――それはセレネの魔力回路の核であるジュエルハートだ。

 遡ること二週間前。白の魔女セレネが訴える異変に察知した悠華と奏美が、自称「一介の神父」である永善が着任している教会へと赴いた。

 彼女らを嬉々として迎えた彼は、茶会を開きながらも二人の話を聞いてジュエルハートを持ちだして語ったのだ。

 ――セレネの体内から引き抜いたのだと。

 意図が読めなかった二人をほくそ笑んだ彼は、嫌でも真実を理解させる為に教会の地下へと連れ込み、そこで《セラフ・フォン熾天使ファルチゲルド》と呼ばれる、三対六羽を備える女性の石像と対面させた。

 そこで彼は神田家を除いて本人しか知らないはずの、悠華の出生に纏わる闇を堂々と語り始めたのだ。

 彼女が魔術師ウィザードクリストハルト・ローゼンクロイツの計画によって生まれたこと。

 結果的に悠華は彼の種と神田家の妻の胎によって出生したこと――寝取った男の子だということ。

 永善は彼が編み出したという計画に賛同した人物であり、彼の亡き後の計画の進行具合をずっと見守っていたのだ。

 偶然だと思われていたセレネとの出会いは彼によって操作され、魔法少女になることすらも永善が操作した必然であったということになった。

 親友の奏美にも知られたくなかった事実をあっさりと暴露した神父に憤慨した悠華は、出自を否定したいが為に魔法少女とリリウム・セラフィーとなって彼との対決に持ち込んだ。

 それすらも必然的に操っていた永善は魔力破壊の格闘技で対抗し、彼女を戦闘不能へとと陥れたのだ。

 その時、死の淵に追い込まれた悠華を助けたのは紛うことなく魔女セレネだった。魔女がわずかに残ったジュエルハートで悠華の命を復活させ、自らは犠牲となった。

 その結果として神父は敗北を認めてジュエルハートを渡したが、魔術師ウィザードの亡霊も追い払えず、セレネは現世に留める肉体を失って消滅した。

 しかし得るものよりも失うものが多すぎてしまった結果でも、二人は決して挫くことはなく希望を見出そうと探していた。

 それを照らす道標となる光となったのが、セレネのジュエルハートだ。再び教会に赴いた次の日に悠華が部屋の整理でうっかり鉱石を窓際に置いたところ、陽ざしで見事な輝きを見せたのだ。

 それから一週間、東方に面している自分たちの部屋で翌朝に朝日に照らされたジュエルハートを見るのが、彼女らの習慣として取り込まれている。

 

「すごいのは光だけじゃなくて大きさもなんだよね~。これだけで質量が四千カラットは確実にあるんだからお金に換金すると……」

「コラ! 悠華ったらお金のことなんか持ち出さないでよ! 「金」というキーワードはジュエルハートの前では禁止用語なんだから気をつけてよね……ウヘヘヘヘヘ」

「……寧ろ奏美の方が欲望に塗れて汚くなってるような気もするけど」

「大丈夫だってー。私はジュエルハートを見るだけで幸せな気分だからーーーー。お金なんかで汚くなりませんよーー。この大きさ、何カ月分かな~ウヘヘヘ♪」

「……充分に欲望が剥きだしじゃない」


 宝石としてはあまりにも巨大すぎるジュエルハートの前にして、奏美は思わず垂らしていた涎を拭う。

 ――せめて誰かに奪われないように用心しなければ。

 アテナ、アンジェリーク、アーヴェイン。三人の襲撃者が極東まで至り、自らの命を賭してまで奪おうとしていた、膨大な魔力の塊。

 大きな力は時として悪しき者の願望の器となる。支援のおかげもあって三人の襲撃者を関門せきとから追い払うことに成功したが、事態は何も解決していない。

 ある意味強力な後ろ盾でもあった永善もここにはいない。セレネも消滅した。

 敗北条件として提示した「二度と魔女に関する全ての問題に介入しない」という要求を、襲撃者たちは呑んだはずだが効力があるとは思えないし、いつかは約束を取り消して襲ってくるかもしれない。

 ――その為の魔法少女の力だ。

 彼女を助ける為の契約。安直な理由ではあるがそれでもれっきとした契約だ。


「でも綺麗なのは事実だよね……いつまでも見蕩れてしまうね」

「うん……そうね、悠華」」


 隈なく見渡しても余すところなく輝き続けるジュエルハートに二人はいつまでも観賞していた。

 すると――


(ほぁ~~~~やっぱり光は暖かくて気持ちがいいのです! しかももうすぐで魔力が溜まるのです! このまま朝日に当たってくれると嬉しいのです!)


 ――女の子の声がした。それも小さな女の子の声がジュエルハートの中から。

 悠華は少しだけではあったが謎の女の子の声を聞き逃さなかった。


「んんっ? …………ねぇ奏美、何か言った?」

「? 私は何にも言ってないけどどうかしたの?」

「いや……今、ジュエルハートの中から声がしたのよ。何て言うか……例えるとするなら、モスラの小美人みたいな人の声が」

「アッハッハッハッハー、まっさかぁ~~。いくら何でも存在するわけないでしょ、特撮映画や絵本じゃないんだから」


 悠華の言葉を妄言だと切り捨てる奏美。

 ――魔女や魔法や魔法少女を目の当たりにしてよく言えるね。

 さっきまで見ていたウルトラマンエースの主人公だったら「本当です! 信じてください!」と言っていたかもしれない。


『たるんどる! ぶったるんどるぞ!』


 と、言い返されるのがオチだろうが。

 すると部屋の外からインテリ系の厳格な性格柄の寮監の声が聞こえた。

 七時からは食事の時間帯なので、十分前から未だ寝ている生徒を起こすように忠告するのが寮監の一つの仕事であり、寮生にとってはいつもの日常なのだ。

 遅れたからいって食事抜きになるわけではないが、説教を長々とされるので気分は悪くなる。

 コンコンと部屋の外からノック音が響く。


『伊崎さん、神田さん起きてる~? 起きてるなら食堂まで行きましょ』

「うん、私も悠華も起きてるよ。後で行くから先に行ってて!」

『わかったわ。じゃあ私たちは食堂で待ってるからね~!』

「すぐ行く行く! 悠華、そろそろ食堂に行くわよ。それとジュエルハートをケースの中に保管してね」

「……ええ、ちゃんとケースの中に――」


(うぅ~~~まだ閉めないでくださいなのです! もう少し光を浴びたら魔力と体が手に入るのです! だから開けてくださいなのです~!)


 ――また聞こえた。

 あどげない少女の声が窓際に照らされて光り続ける乳白色の鉱石から再び聞こえたのだ。

 どうやら聞こえるのは悠華だけで奏美には聞こえないらしい。

 ――これはセレネの声なのか?

 疑問符を浮かべてジュエルハートを見つめる悠華は、後は任せたと託した奏美が部屋から出て行ったのを見計らった。

 そしてジュラミンケースの蓋を閉めずに悠華は鉱石の塊を朝日に晒した状態で食堂へと向かったのだった。

 

「…………」


 ――その直後にジュエルハートから小さな影が現れたのを彼女は知る由もない。

 今回は新章ということで最初から新キャラを投入しました。

 勢いだけな気もしますが設定を盛り込むことでもっとストーリーを豊富にしていきたいですね。

 初頭に登場してくる謎の新キャラの名前をどうせならクトゥルフ風にアレンジしていきたかったのですが、完全にオリジナルなので関係はありません。

 あとウルトラマンのネタを使用しましたけど大丈夫かなぁ……多分、かな……多分。

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