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勇者、窮する

 俺は勇者。

 ついに、ラストダンジョンの魔王城までやってきた。

 ラストダンジョンに相応しく、城にはとてつもなく複雑なトラップが待ち受けているに違いない。

 指先は小刻みに震える。もちろん、恐怖ではない。これは武者震いだっ。

 いざ、行かん! ラストダンジョンの攻略!!




 城へ入り、大広間へやってきた。

 そこにはやたら気安い魔王直属の部下の姿が。

 そいつは気怠そうに右手を上げて出迎えてきた。


「勇者~、よく来たな~」

「ああ、来るさ! 全てに決着をつけるために!」

「そっかぁ、気合は十分だね~」


 部下は自身の背後にある、巨大な扉にクイッと親指を向ける。


「魔王様はあの扉の先で待ってるぞ。だけど、そう簡単には通さないぞ~」

「ふっ、お前を倒さなければ、先を行くことは許さないってことだな。よしっ」

 俺は剣の柄に手を置く。

 だが、部下はパタパタと手のひらを左右に振って、思いもよらぬ言葉を出した。


「ちょっと、待ち待ち。こっちは別に戦う気はないって。むしろ僕が死んじゃったら扉が開かなくなっちゃうよ」

「なに?」

「実はね、あの扉には不思議な力が宿っていて、ある条件をクリアしないとぜ~ったいに開かないんだ」

「条件? ふん、どうせ、どっかのボタンを押したり、水路の水の量を調節したり、石像で光を遮ったりといったトラップを解除しないといけないというところだろ?」


「ぶっぶ~、違いま~す。あの扉は、今から出題するなぞなぞに答えられない開きませ~ん」

「何、なぞなぞだって!?」

「では、問題です」

「いきなりかよ!?」



――なぞなぞ


 私には形がありません。目で見ることもできません。でも、感じることができます。

 あなたが誕生してからずっと、あなたのそばを流れてます。

 だけど最後には、あなたは私を感じられなくなります。

 私とはな~に?

(制限時間三十秒)



「はい、勇者。答えて」

「ちょっと待て、いきなりそんな問題出されても」

「あと二十秒」

「おいっ? くそ、えっと、形がなくて目に見えなくて、でも感じられる? ずっと流れて……あ~、わかんねぇ!」

「ざんね~ん、たい~むお~ば~。それでは、出直して来てくださ~い」

「馬鹿を言うなっ、こんな茶番に、なっ!?」


 突然、奇妙な靄が現れ、俺を包む。

「これは?」

「トラップを解除できないと、強制的に近くの町に転送されるんだよ。じゃあね、ばいば~い」

「なに!? ふざけんな! な、靄が身体をっ、動けない! せめて、せめて、答えだけでも教えてくれぇぇぇ!」


 俺は靄に包まれ、魔王城近くの町に転送された。

 もう一度、魔王城に向かわなければ……。




※なぞなぞの答え――時間

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