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推しをいじめる悪役令嬢のメイドに転生したので、めっちゃ足引っ張ってやろうと思っていたのに……  作者: 酒春


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ひとりぼっちのエイダと 3

 ルイ・コンスタンタン。いや、現時点での名前は、確か、ルイ・ドゥレビールだったはずだ。


 ルイは『俺に近づくな……(低音イケボ)』が口癖の寡黙な獣人族のキャラクターだ。不幸体質で、幼少期に二度も親を亡くしている。一度目はルイがほんの子供の頃、魔物に襲われた獣人族の村からたった一人生き延びたルイは、その才能を見抜かれて、ドゥレビール男爵の家に養子に迎えられる。騎士の鑑のような人間であったドゥレビール男爵の下で、騎士道の何たるかを教わったルイは、やがて男爵に心を開き、ドゥレビール男爵に尊敬と憧れを越えた愛情、家族の絆を感じるようになる。


 しかしそんな矢先。ドゥレビール男爵はよりにもよってルイの誕生日に、ルイの目の前で、ルイを守るために魔物の大群と戦って命を落としてしまうのだ。父を、家族をまた失った悲しみから立ち直れずにいたルイは、今度は『王国貴族四大名門』の一つ、コンスタンタン家に養子に取られることになる。そして、コンスタンタン家の長男であり、攻略対象の一人でもあるギルバート・コンスタンタンと血を超えた義兄弟の契りを交わし、生きる希望を再び取り戻すのだ。


 ギルバートのおかげでまた歩き出すことができるようになったルイだったが、心の傷は完全には癒えておらず、サバイバーズ・ギルトと『自分と関わった人間がまた死ぬのでは?』という恐怖に苦しみ続けることになる。その深い傷を癒し、ルイを恐怖の海から救い出すのが主人公なのだが……それはまた別の話。


 余談だが、カスのエイダはルイの目の前でドゥレビール男爵のことを『騎士道騎士道とかっこつけてばかりのくだらん弱者』として嘲笑い、侮辱し、寡黙なルイを激昂させる。そして、なんやかんやでルイと決闘になるのだが、もちろん結果はエイダの圧勝、『やはり騎士道などくだらない』と、嘲笑交じりにルイの頭を踏みつける、超胸糞展開を披露してみせるのだ。だからルイ推しの人はマジでエイダのことが嫌いだ。ルイ推しの友達が言ってたので間違いない。


 これから王国のどこかに現れるという1000体の魔物、これがドゥレビール男爵を殺してルイの心にトラウマを残すきっかけとなった魔物の大群である可能性は極めて高い。時期を考えても矛盾しない。


 ルイは、獣人族という平民の中でも特に差別される人種でありながら、(全くの不本意だったとはいえ)四大名門の貴族にまで成り上がった程の剣の天才だ。レイレガ最強キャラ議論(乙女ゲーの最強キャラ議論……?)にも名前が上がる程の強キャラなのだ。しかも、騎士道を重んじる忠義に厚い性格を持っている。もしエイダがドゥレビール男爵の窮地を颯爽と救うことができれば、ルイのトラウマの芽を摘みつつ、今後エイダのピンチに駆けつけてくれるような、強力な味方を手に入れることができるかもしれない。


「シエル、何か気づいたのでしょう? いいわ、言ってみなさい」


 日付はわかる。ルイの誕生日、確か7月10日だ。友達の推し活に付き合わされたので覚えている。場所もだいたい検討がつく。ドゥレビール男爵はコンスタンタン公爵から土地を預かっている、公爵の傘下の貴族だ。コンスタンタン公爵領のうち、ドゥレビール男爵が預かっている領地の近くで、回想シーンに出てきたような場所となるとかなり絞られるはずだ。


 ……問題はどうやってエイダを説得するかだ。


 シナリオの存在を明かしてしまうのは簡単だ。だが、かつて検討したように、エイダが破滅ルートをそっくりそのままなぞり始める可能性があるし、錯乱したと勘違いされて、逆に話を信用してもらえなくなるかもしれない。そうなれば最悪だ。


 しかし、コンスタンタン公爵領に魔物が現れる理由を、今エイダが知っている情報だけでは説明できない。少なくとも私には。


 エイダの才能に賭けるか? 適当にコンスタンタン公爵領を指したフリをして、後はエイダに任せるのだ。


『はぁ、シエル、あんたもエリザベスと大差ないわね、馬鹿、凡人、コンスタンタン公爵領に魔物が現れるワケ……いや待って、そういえばコンスタンタン公爵領は……!』


 こんな風に、何か見落としていたものに気づいてエイダが勝手に理由を見つけてくれるかも……いやだめだ、それは矛盾している、エイダの才能を信じるのにエイダに見落としを期待するなんて、それは完全に破綻している!


「シエル?」


 エイダの視線が痛い。何か、何か手がかりはないのか……!


 ──その時ふと、地図に描かれたコンスタンタン公爵の紋章が目に留まった。雄々しい馬が描かれた盾の紋章だ。


 私はゆっくりと、コンスタンタン公爵領を指さす。


「お嬢様、コンスタンタン公爵領に参りましょう」

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