表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/14

Episode 9: 海王星人と金星人

「美空は、どっちが勝つと思う?」

訓練スペースを見守っていた朋佳(ともか)が問いかけた。


「普通に考えたら、小林さんたちだと思う。」


小林兄弟は、無敗を誇るコンビだった。

攻撃特化の拓斗(たくと)のギアは、長い槍の形状。扱いが難しい槍を自在に操り、遠距離攻撃も得意とする。一方、大翔(ひろと)のギアは、半透明の五角形パネルを複数組み合わせた盾型。仲間を守る防御の要だ。


【無敵の矛と盾】


訓練生時代には、そんな名前で呼ばれてもいた。


「ただ…佐々木部長が理由もなく、あの三人の惑星人を採用するわけがないと思う…。」


「そうだよね…。」

朋佳(ともか)も同じ考えのようだった。


「何も起こらなきゃいいけど…。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それでは――戦闘、開始!」


ロアの掛け声とともに、拓斗(たくと)がいち早く動き出した。

一直線にルシアへと駆け、獲物を狙う獣のような眼差しで槍を構える。


(まずは金星人を叩く――)


その瞬間だった。


「バーン♪」

カイの軽い声が響いた。

人差し指と親指で作った“銃”の形から、目にも止まらぬ速さで何かが放たれる。


(なっ――!)

拓斗(たくと)は体をのけぞらせ、間一髪で回避。

その一撃は壁へ衝突し、轟音とともに水しぶきを撒き散らした。


「あれって、水…?」


通常、海王星人の能力は水源がなければ発動できないはず。

だがカイは、自らの手から水を “創り出した” のだ。


「さぁ、いくよ~。」

カイの両手が再び前方へ伸びる。


大翔(ひろと)!!」


拓斗(たくと)の叫びと同時に、大翔(ひろと)が盾を展開。

五角形のパネルが弾けるように移動や連結をし、瞬時に水の猛襲を受け止めた。


ドン――!ドドン――!!


衝撃で地面が震え、盾がきしむ音が響く。

まるで高圧洗浄機を何本も同時に浴びせられているようだ。


「…くっそ…!」


拓斗(たくと)は体勢を立て直すため、大翔(ひろと)のもとへ戻る。


「逃がさないよ!!」

カイが追いかけ、滑るような動きで間合いを詰め――


大翔(ひろと)、下!」


「……っ!」

大翔(ひろと)が即座に小型盾を出現させ、カイの蹴りをブロックした。


拓斗(たくと)が反転し、槍を横に払うように振る。

だがカイは軽く体を反らせて回避、逆に右足で反撃に出る。


鋭い蹴りが空を裂き、拓斗(たくと)の表情が歪む。


(こいつ、近接戦もいけるのかよ…!)


大翔(ひろと)は汗が滲み、呼吸が乱れながらも、カイの攻撃を防ぎ続ける。


「あぁぁ!このバリアみたいなの邪魔!」

カイの勢いは止まらないが、次第に雑さが目立ってきた。


(……今だ!)

拓斗(たくと)はカイの腹に槍の柄を突き込んだ。


「ぐっ!」

息を詰まらせるカイ。その瞬間、拓斗(たくと)は脇を駆け抜けた。


――ルシアとの距離、数メートル。


(認めたくはないが、あの海王星人の相手をすれば一気に精神も体力も削られる。

 そこを狙って金星人が仕掛けてきても面倒だ。)


拓斗(たくと)が迫ってきても、ルシアは動かない。


(まず一人目…!)


拓斗(たくと)が槍を振りかぶり、ルシアの首を狙う。


カイはゆっくりと体を起こし、拓斗(たくと)とルシアの方を向いて言った。

「あぁ~…。言ってあげたのに。()()()()()()ってさ。」


今度は大翔(ひろと)の方を向いて、ニヤッと笑う。


(…嫌な予感がする…)


大翔(ひろと)は大声で叫んだ。


拓斗(たくと)!戻れ!!」


同時に、拓斗(たくと)はカイが模擬戦の前に引いていた線を踏み越えた。


「かわいそうだね…。」

ルシアの声が、まるで鐘の音のように、拓斗(たくと)の脳に直接響いた。


――その瞬間、拓斗(たくと)の頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。

視界がぐにゃりと歪む。音が遠ざかる。感覚が崩れていく。


走馬灯のように記憶が流れ、一番忘れたい…思い出したくない記憶が引き出される。

周りの冷ややかな目、声、女性の叫び声、首を吊った男の姿…

ひたすら聞こえてくる、嘘つき、嘘つき、嘘つきという声。


「うぁ”ぁ”ぁぁぁぁぁぁああぁ」


拓斗(たくと)は叫び、うめきながら膝をついて頭を抱える。


「や、めろ……やめろやめろやめろッ!!」


背筋が凍るような絶叫。

目は見開かれ、虚空を見つめたまま恐怖に飲み込まれたようだった。


バリン!

ルシアの魔法制御リングが割れた音がした。

リングが相手に致命傷を与えたと判断したのだ。


――ロアが手を挙げた。拓斗が戦闘不能の合図だった。


ロアが宣言するやいなや、大翔(ひろと)が走り出す。


(くっ…!せめて、一撃…!)

大翔(ひろと)は、近くのカイに向かって盾を飛ばす。


カイはすかさず、水を使って弾き飛ばす。


「弱くなってんじゃない~?」

カイが手をかざすと、空中に広がる無数の水弾が盾を弾き返した。


(最初に使いすぎたか…ギアのエネルギー残量は残り僅かだ。)


大翔は最後の力を振り絞り、身を包むように盾を再構築する。

(このまま攻撃を少しずつすれば、魔力とギアのエネルギー、どちらかの消費勝負にもちこめる)


「今度はこっちの番だよ。」

カイが両手を開き、水を無数の蛇のようにうねらせた。


「…そんなガタガタな守りだと、所々みえちゃうよ――隙間がね。」

カイは両手を前に出したと同時に、大量の水が空中に出現した。


そして、大翔(ひろと)を囲う盾の隙間からその水が大量に入り込んだ。


一瞬のうちに大翔(ひろと)は水の中に拘束されてしまった。

(この水…普通の水じゃない!?)

大翔(ひろと)は全身に燃えるような痛みを感じた。


「あのままだと...制御ブレスレットがあっても間に合わない…危ない!」

私と朋佳(ともか)は、反射的にギアを準備して乗り込もうとした。


「もう十分です。」


ロアが手をあげて、カイの方へ向けた。


「…!」

その瞬間、水は消えて、カイは魔法が使えなくなっていたようだ。


「地球人、両者戦闘不能!!」


ロアの声が響き、訓練場は騒然としていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ