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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
魔導大会五日目

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明かす謀略と脆さ

「国の中枢……? 冗談で言っていい立場ではない事を理解していますか?」


「無論、理解しているつもりです」


 淡々と告げる彼女から冗談ではないという雰囲気がヒシヒシと伝わって来た。


 耳を塞ぎたくなるよな真実、しかし両腕が使いものにならない俺は目線を天井に向ける事しか出来ない。


「お聞きしたい事もあるでしょう。ミリエラさん、マリアさん、彼とふたりで話させてくれませんか?」


 疲弊した俺を気遣い、背後の彼女たちを退室させる。


「これで貴方が気を回す必要はなくなりました。敬語も口調もラクな形で構いません。重要なのは貴方に全てを理解してもらう事ですから」


 この状況で対話から逃げ出すことは難しい話じゃない。


 だが逃げた先にあるのは何も知らぬまま世界に翻弄させるという最悪の結末だ。


「……なら、遠慮なく」


 ここで彼女の謀略を、裏社会の目的を理解し、最悪の結末を書き換えるしかない!


「貴族制廃止を成し遂げたとして、なぜ俺がその役割を担うことになる?」


「それは貴族から能力の高い者が国家を動かす国政を目指しているからです」


「能力の高い者? 高い戦闘能力(おれみたい)なやつを指すのか?」


「はい、その他にも各分野の有識者や成功を収めた方にも国政に関わっていただきたいと考えています」


「そう簡単に上手くいくとは思えねェけどな……」


 現状を打開したいという志しは素晴らしいと思うが、二の舞にならないとは限らない。


「アルム君の心配はもっともです。権力を手にした彼らが私腹を肥やすために使わない、と断言はできません。しかしだからこそ貴方が適任なのです」


「……そうか?」


 自信満々に答える彼女に俺は困惑の表情を浮かべる。


「貴方は実力は勿論、人間性、そして信用などあらゆる面で私が求めていた人間です」


「信用って、俺とあんたじゃ出会って一か月とかそこらだろ」


「信用とは過ごした月日だけで語れるものではありません。事実、アルム君は実力を誇示しようともせず実力を隠し続けていたではありませんか。普通の人ならベレス君のように横柄な態度を取ると思います」


 それは裏社会に悟られないため、そして必要が無かったからだ。


「それにこの五日間も私の『予定』を大きく上回る活躍をしてくれました」


「予定だと? まるでこうなる事が分かっていた風だな」


「ええ、貴方の性格からある程度見立ては付いていました」


 意味深な言い回しに怪訝な表情を浮かべる。


「少し私の話を聞いて頂きましょう。貴族制廃止に伴い、身分の差が取り払われることは決まっていましたが、平民出身の貴方を国家の中枢に席を置くためには大きな実績が必要でした」


 そう言って彼女は話を始め、俺は黙って話に耳を傾けた。


「しかしアルム君の性格上、実力を誇示しようとはしません。ではどうやって貴方の実力を国民の皆さんに衆知して貰おうか、そこで魔導大会という周辺諸国にまで広められる大舞台を選んだのです」


「……まさか⁉」


 俺の思考を完全に読み解く彼女に対して、そんな言葉が口から漏れる。


「そしてアルム君の性格上、周囲の人間に危害が及ぶ可能性があれば隠していた実力も余すことなく披露してくれる。自発的に、しかし無意識のうちに……」


「ッ……⁉」


「私との契約で使命を得て、魔導大会を迎えた貴方は予定以上の活躍を衆目の下で見せてくれました!」


 計画通りに事が進んだお陰か彼女は嬉々とした様子だった。 


「そしてベレス君との戦いで確信したのです、『この人は誰かの為に血を流せる人』なんだと……だから()()()で全てを打ち明けたのです……こ――――」

「この背景を知れば必ず動いてくれると確信したから、だろ……」


 続けて紡ぐ言葉が分かった俺は自らの口で説明を終わらせる。


「心中お察し申し上げます。とても嫌な気持ちでしょう」 


「ああ、絶対に聞き出してやると頑張って俺が馬鹿みたいで不愉快だ……」


 ここでその鬱憤を吐き出しても彼女は受け止めてくれるだろう。


「でも嫌な気持ちの中にもマシなものがあった」


「一体どんな……?」


 俯いていた目線を上げ、紫紺色の彼女の瞳を真っ直ぐに見た。


「あんたがこの国を想ってくれる優しい王女様だってことですよ」


「私が……優しい?」


「ああ、他人が嫌うことを分かった上でやってるのは褒められた事じゃない。でもそれが本人の為、国の為を想った上でやってるんだから責められる事でもない」


「アルム君……」


「それに手の上で踊らされたとしても俺が一位を獲ったら命令を聞いて貰う契約は変わってないからって、何で泣いてんだよ……⁉」


 気づけば彼女の左目から一滴の涙がこぼれる。


「あれっ……⁉ ごめんなさい、見せるつもりなんて、無かったのに……!」


 急いで制服の袖で涙を拭き取る彼女だが先の涙を境にボロボロと溢れてしまった。


「ごめんなさい、本当にごめんなさい……」


 余裕な態度から一転、今の彼女はか弱く見える。まるでただの少女のように。


 俺は手頃な布が見つからず、彼女から視線を外して黙って泣き止むのを待った。

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