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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
魔導大会五日目

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激闘での学び

「【火炎付与エンチャント・フレイム】!」


 ベレスは後天的に習得した火魔法を発動させ、全身に炎を立ち上らせた。


「なに考えてんだアイツ?」「まさか火だるまであの氷花に突っ込む気か⁉」


 観客たちは彼の奇行とも言える打開策に注目を集める。


「そう言えば火魔法も使えるんだったな」


 つい先程ライザに殴り倒されたにもかかわらず隣で観戦するライオス。


「昨日見たばかりでしょ。やっぱ診て貰ったほうが良いんじゃないの?」


 服が破れ、殴打の傷跡が見受けられタリオナは治療室に行くことを勧めた。


「あいつらの戦いが終わったら行くっつーの! それに打撃攻撃に耐性があるのは知っているだろ」


「確かに、でも彼はそうでもないみたいよ」


「えっ?」「――――あっっっちいいいいィィ‼」


 ライオスの反応に合わせて炎を纏う彼は熱に悶える。


「やっぱそうだと思った。私の炎々する槍(フレッド・スピア)を掴んだ時もああやって絶叫していたからね」


「どうゆうこと? 昨日の試合のときは普通に使っているように見えたけどな……」


「私も詳しく知らないけど、『肉体の同化』と言ってもあくまで甲冑(かっちゅう)は外付けの防具で魔力は通しても熱は通さないんじゃない?」


「でも自分の炎で悶える奴なんて聞いた事ないぞ」


「これも詳しく知らないけど、ベレスは普段から火魔法を使っていないから火力調整が慣れてなんじゃない? 実際に使えることを知っている人間はほとんど居なかったみたいだし」


「ええェ……」


 タリオナの考察にライオスは呆れ声を漏らした。


「何するつもりなんだよ……!」


 観客たちの大半は奇行に冷ややかな反応を見せるが、対するテイバンは全く読めない行動に恐怖を懐く。


(いや落ち着くんだテイバン=ビルフォート! 練度が低い火魔法を使った程度で俺の集大成が破られるわけが無い。ビビらず堅実に攻めれば勝てる試合だ!)


「今日こそ勝つ、絶対勝つ!」


 心の中の恐怖を払い、目の前の敵に再び意識を集中させた。


(あっついけど! 優勝するなら自傷の覚悟が最短の道、そうだろアルムっ!)


「名付けて『炎上・捨て身の特攻戦術』、二撃でブチ抜くぜェ‼」


 ベレスは両腕を突き出したまま力いっぱいに握り締め、最大出力の引手を発動。


 凄まじい力が彼の全身が引かれ、風が裂けるような音が走りその場から姿を消す。


「「「消えたっ⁉」」」


(いや追尾は出来てる、はずなのに向きも挙動も変わらず真っ直ぐ……) 


「まじで突っ込んできてるのか⁉」


 体外へ大量に放出された炎が彼の軌跡となって一直線に伸び――――氷花と衝突。


 バシュッ!


 凍てつく冷気と灼熱がぶつかり空間が悲鳴を上げ、白い霧が広がった。


「おぉらああああああああああアアアアアアアァァ――――――――‼」


 四方八方から炎を侵食する氷花。


 しかし一枚、また一枚と氷の花びらを蒸発させながら突き進むベレス。


(止まらない⁉ 波状攻撃でも包囲攻撃でもこいつを止められない! このままじゃ突破され……)


「――――させるかよクソったれえええええええエエエエェェ‼」


 彼は散らせた氷花をベレスの進路に一極集中、そのうえで中距離から氷塊を一心不乱に放ち続ける。


「そのまま押し勝てェ!」「ここが正念場だぞ!」「頑張ってテイバン先輩っ!」


「どうなるのこれ」「いつも通り勝つんじゃね?」「まあ負けても特に問題ないだろ」


 エンドリアス学園の生徒たちは立ち上がり声援を送るのに対し、ベルモンド学園の生徒たちは関心こそ向けるが声援を送ろうとはしない。


(ぶち抜け……お前が負ける訳ねェだろ!)


 エルヴィスも声をこそ上げないが氷花に覆われた炎を凝視し続ける。


 そして僅かにベレスの火力が上回り、氷花の隙間から炎が漏れ出す。


「――――【万凍の冷気(フロスト・オーラ)】!」


 しかしテイバンは最大出力の冷気を放出。

 一極集中の氷花の追い風として背中を押し、再び白い霧が爆ぜるように広がった。


「やったか……」


 戦い行方を見守る観客とテイバン。

 徐々に霧が離散し、どちらが勝利か衆目の下に晒される。


「つ、(つめ)てェ……」


 声を震わせるベレス。

 体から立ち上っていた炎は鎮火され、凍結と凍傷で完全に動きが封じられていた。


『こ、これは――――テイバン選手が押し切ったァ‼』


 サイベルの勝利宣言とともに観客たちは湧き上がる。


「遂に、勝ったんだな……!」「テイバン先輩っ!」

「お前ならやってくれると信じてたぞ!」


 ライザ、マリア、そして彼の同級生たちは彼の勝利に喜びを分かち合った。


「よっしゃ……!」


 テイバンは拳を握り締め、静かに勝利の喜びをかみ締めた。


「――――勝負は決まった! 口は動くだろ、負けを認めろ」


 ベレスの意識は残ったままであり、試合を終わらせようとテイバンは接近した。


「勝負は決まった? 随分と気が早いものだな」


「何を言っている? 降参しないなら……ん?」


 魔法で追撃を試みるがベレスの背後に漂う霧の中に輝きを放つ灯りが目に入る。


 それは拙い魔法制御によって体外へ漏れ出した炎が業火球となって収束していた。


「言ったろ? 『二撃でブチ抜く』ってな」


「……まさか⁉」


 テイバンの理解と同時に背後の業火球が()()()()()()彼らのほうへ一直線に進む。 


不可視の歪み(アンチ・スペル)で炎の軌道を誘導したのか⁉)


「【氷の槍(アイス・スフィア)】!」


 遅れて彼も魔法を放ち、業火球と氷槍でベレスを挟撃。


 しかし僅かに先んじていた豪火球がベレスに激突。


 ドゴォォン!


 膨れ上がった炎が破裂し、灼熱の衝撃が会場全体を揺らす。

 二秒遅れて追撃する氷槍、しかし灼熱の炎に呑み込まれてしまい対象に届いたのかは言うまでもない。


「くっくっく……とりあえず俺の戦術勝ちだな」


 火傷と凍傷で体中を傷めつつも拘束が解かれた彼は豪炎の中を闊歩(かっぽ)する。


氷の(アイス)――――」「そして俺の勝ちだ」


 氷の粒子を集めるテイバン。

 しかし二度目の引手によって瞬きしたときには眼前にベレスが迫り、鋭い拳が頬を貫く勢いで叩き込まれた。


「あ……がァ……⁉」


 凄まじい衝撃に身体が弾丸のように吹き飛ばされ、テイバンは悶絶する。


「勝負は決まった。口は動くだろ、負けを認めろ」


 横たわる彼に跨り、首を握り締めるベレスは同じセリフを吐いた。


「……な、舐めんなよ。俺はまだ戦える」「あっそ、じゃあ寝かすわ」


 闘志を失っていない彼は反抗の意思を見せるとベレスは容赦なく拳を振り上げる。


(まだだ! まだ負けてない! 今は粘ってもう一度体勢を立て直して――――)

「テイバンっ‼」


 エンドリアス学園応援席から悲痛な叫びが響き渡る。


「会長……⁉」


 隣で立ち上がる彼女にミリエラは驚き、ベレスは拳を止め、名を呼ばれた彼は大きく目を見開いた。


(姫様……そうなんですね……俺では駄目なんですね……」


「審判、俺の負けです……」


 潔く負けを宣言するテイバンの言葉を彼は聞き届け、右腕を高く挙げた。


「テイバン選手は戦意喪失っ! ベレス選手の勝利です!」


「まさかの逆転勝利!」「やっぱ最強はベレスでしょ」「俺は勝つって信じてたぜ!」


 審判の勝敗宣言とともに観客たちは更なる湧き上がりを見せる。


『テイバン選手は惜しくも敗れ、決勝戦進出はベレス選手!』


『奇しくも決勝戦は昨年と同じ人間になりましたが今年度は状況が大きく異なります。どちらが勝つのか最後まで分かりませんね』


『そうですねっ! では決勝の舞台現時刻から二時間後の12時に執り行います!』


「ベレスが負けるとは思ってなかったがこうなったか……」


 アルムが療養する病室の中、セロブロは街中の映像から試合を見届けた。


「ライザさんとベレスさん、どっちが勝つんでしょうか?」


 紅茶を飲みながらラビスも時折目を向けていた。


「まあベレスの消耗は相当なものだ。それにライザはヤツとの戦闘経験もあって実力は魔導大会屈指、どちらが勝ってもおかしくはないな」


 セロブロは自身の見解を述べると紅茶を口に含ませる。


「……誰なんだ……」


 アルムは未だ目覚めておらず、か細い寝言を口ずさんだ。

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