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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
魔導大会四日目

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影武者

 アルムが影に潜ってから10秒が経過し――――ベレスの5メートル後方の位置に姿を現す。


 ベレスは背後の存在を察知できず、アルムは人差し指を真っ直ぐに突き立てた。


「「「当たるっ‼」」」


 完全な不意打ち、観客の多くが期待に胸を膨らませてアルムは魔黒閃を放出する――――しかし、命中まで残り僅かという距離で左手が引っ張られるように後ろに向いた。


「はい残念」


「うっそだろ……」


 満面の笑みで左手に黒光線を吸い込むベレス、テイバンはまるで自分の攻撃が防がれたように失意のどん底に落とされた。


「熱い、熱い、お前の反撃は超熱いわ」


 熱線を漏らすことなく消し去ったベレスは冷めた視線を向ける。


「お前の敗因は俺を舐め過ぎたこと。不意を突かれて攻撃を受けるほどマヌケじゃない」


「そうか、そういう事なら全ての魔法が繋がる……」


 対するアルムは大きく目を見開き、衝撃を受けた様子だった。


「何をブツブツと言っている? 防がれたショックでおかしく――――」

「少し黙った方が良いんじゃないのか? お待ちかねの反撃タイムだぞ」


 そう言って彼はベレスに指を差し、再び影の中に足を踏み入れる。


「逃がすと……」「【魔黒閃(ビルスター)】」


 直後、ベレスの背後に人型の黒い物体が人差し指を突き立て、二度目の熱光線を放出した。


 死角からの魔法を見事に守り抜いたベレス、しかし全く同じ攻撃であるにも関わらず、先程の防御を再現できずに呆気なく黒い光に呑み込まれてしまう。


「ぐおおおおおおおおおオオオオオオォォォォ――――――――‼」


 足腰に力を込め、耐え凌ごうとするベレス。

 だが射線上に存在する全てを焼却する魔黒閃の火力を前に抵抗も虚しく、黒棘とともに焼かれ外周を覆う結界に叩きつけられた。


 ***


 劣勢だった俺の反撃が見事に成功し、観客たちが湧き上がる場面なのだが……。


「思ってたより(ひで)ェな……」


 結界に魔黒閃と黒棘が激突し、結晶の破片や熔解物がフィールド中に飛散するという地獄絵図。


 この光景にプラスして魔黒閃を直撃したベレスの生死不明の状況だ。


「これで騒いでたら頭のネジが飛んでいるとしか言えないか」


「ベレス選手の状態を確認するので、追撃を中断してください」


 俺のとき以上に舞っている砂埃の中に審判が駆けて行った。


 ベレスを仕留めるために外周部に張り巡らせた黒棘と一度しか見せていない魔法。


 名を影武者(シャルトリア)、影の世界でのみ形作ることが出来る分身体。

 とは言え殴る蹴るの単純動作や魔法を同時、もしくは数秒単位で後追い(トレース)するだけで複雑な動きは出来ない。

 まあ組み合わせや魔法発動のタイミング次第では決定打になる事も可能だ。


「だから結構期待してんだけど結果はどうかな……」


 結果を示してくれるかのように砂埃から顔を歪めたベレスが姿を見せる。


「お前殺す気かよ……!」


「そんなキレんなよ、欲しがってたのはお前だろ」


 ギラリと睨みつける彼に少しばかり気持ちがスッとなる。


 発動していた五指抹消で収束させたお陰で焼け焦げたのは左半身だけで済んだが、その代わりに内側に展開していた黒棘を消し去る事は出来ず右太腿が貫かれたようだ。


「左は重度の火傷、右は脚から大量出血、その状態じゃもう戦えない。おまけにお前の魔法特性も把握した。潔く負けを認めろ」


 彼の負傷を鑑みて降参を促したがそれに対してベレスは高らかに笑う。


「――――――――はあァ! こんなにも俺に手傷を負わせ、苛立たせ、高揚させたのはお前が初めてだよ。アルム……」


 興奮した様子から一転し、澄んだ瞳で俺を見つめる彼は足元に転がった黒棘の破片を突如として掴み出す。


「お前は俺が出会った人間の誰よりも強い、好敵手と認めてやる」


 そう言って彼は鮮血を垂れ流す傷穴に破片を刺し込む。


「ッ……⁉」


 傷穴はより大きく拡がりベレスは歯を食いしばるが穴は塞がれ、血はピタリと止まった。 


「……この傷はお前を軽んじた罰、そして戒めだ」


 目を血走らせながら口角を上げるベレスに俺を含めた観客たちは彼の執着に思わず唾を飲み込んだ。


「まだやり合うつもりかよ……」


「愚問、前哨戦(ぜんしょうせん)を制した程度で勝った気になるなよ」


 ベレスは右腕を突き出す。


「【人体接続(ディ・ネクト)】」


 白鬼の前腕もどきに刻まれた魔法が発動し、白い魔力を纏わせた。


「……強靭性とか耐久力を上げる構築式が組み込まれてるんだと思った。どんな特性なのさ?」


 先ほどの白い魔力はすぐに離散してしてしまったため黒憑(クロウヴィル)とも異なる。


「戦いの合間に考えると良い、今の俺は瀕死で戦える状態じゃない」


 発言とは裏腹に拳を突き出し戦闘態勢で構え、何処から湧いて来たのか炎も灯していた。


「ここからは俺も全身全霊をもってお前を殺しに行く。死にたくなければこの俺を殺してみせろ」


 確かに今の彼は格闘術や魔法力など反撃前と比べ、大きく劣っている。だけど……


「手負いの獣ほど恐ろしいものは無いな……」


 俺は今まで以上の緊張を走らせた。

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