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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
魔導大会四日目

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135話 反撃の反撃

「「アルムっ⁉」」


「やっぱベレスとは格が違いすぎる……」

「ああ、実力があるとはいえ彼はまだ一年生なのだから」


 ラビスたちは叫び、密かに期待していた観客たちも目を閉じる。


 砂埃が待って分からないが決定的な一撃だったと誰もが予感した。


「アルム選手の状態を確認します。追撃はお控えください」


「野暮なことすんな、まだ終わっちゃいねェよ……」


 審判は臆した様子でお願いするがベレスは依然として勝利を確信してなかった。


「はい――――」


 審判の彼が聞き返すよりも速く、砂埃の中に針状の太い柱が上へ伸びる。


「「「……⁉」」」


「……【黒棘(ブラックパレス)】」


 直後、砂埃を中心に数十、数百という数の黒結晶の柱が立ちのぼる。

 ベレスは後退を余儀なくされ、誰もその侵攻を止めることは叶わない。

 更地だったフィールドが黒棘で満たされ、多くの影を落とさせた。


『周囲の地形ごと改変させたァ! これが、アルム選手の魔法力⁉』


『この四日間で何度も目にしてきましたが、これほどの規模は初めてですね』


 展開の余波が会場全体を揺らし、サイベルとエリアは戦慄を覚えた。


「…………」


「俺は耐えてくれるって信じていたぞ」


 何事も無かったかのように影の中から姿を見せるアルム、ベレスは足場を警戒しながら棘先に両足を置いた。


「アルム……!」


 元気そうな彼の様子に安心するラビス。


「――――おええェェェ! おえええェェ……‼」


 しかし彼の表情は険しさを増していき、ついに膝を屈して口から消化できなかった軽食を吐き出した。


「あ、アルム……」


 無事だと勘違いした自分を責め、ただただ不安を抱えながら見守しかなった。


「さっきの耐えたって意味は意識を失わなかったって意味だ、ゲロっちまうのは仕方ねぇよ」


(うるせ)ェよ、くそォ……気持ちわりィな……!」


 逆流した胃酸と嘔吐物(おうとぶつ)の風味によって脂汗を流す。


「口の中を洗い流すまで待っててやるから早くしろ」


「……覚えておけよ」


 アルムは吐き台詞を残すと水魔法でうがいを始める。


「そう言えば白鬼の前腕(フロム・ガントレット)、の偽物はどこにした? お前の背中に刺さってただろ」


「……さぁ、動いている間に抜けたんじゃね?」


(ホントは黒棘で生じた地割れの中に落としてやったわ、馬鹿がっ!)


 勝手に持ち出した国宝のため所在を確認するが、(すす)ぎ終えた彼はニヤリと笑って誤魔化す。


「まあ、それより続きをしようか」


「こ、国宝を無くした……!」

 

 すぐに切り替えるベレスに対してバリオスは椅子から崩れ落ちた。


「【五指抹消(インディレータ)】」


 回収した右手の甲冑を装着、左手に魔法を展開し飛び掛かるベレス。


「ここから反撃の時間だ!」


 アルムは長剣を両手に持ち、接近戦に持ち込んだ。


「あの一撃を食らってもピンピンしてるとは大した男だ」


「しかし内臓のダメージは相当なはず、激しい動きは避けたほうが良いと思いますが……」


 提案するテイバンを余所にアルムたちは拳と剣術を交えた肉弾戦を繰り広げる。


「あの男がそれ程の猶予を与えるとは考えられない。うがいの時間が精いっぱいの譲歩だろうな」

 

「今更言うのも何ですが、これまでの試合で手の内の多くは知られてしまいました。ここから巻き返す策があるのでしょうか?」


(……やはり止めるべきだった)


 心配した面持ちで問いかけるマリアにカルティアは僅かに俯く。


「彼があのまま負けるような人ではありません。テイバン先輩もそう思いますよね?」


「……そうだな、明日に倒す相手があの程度で終わるはずが無い!」


 ミリエラに尋ねられ、戦闘経験のあるテイバンははっきりと断言すると黙って試合を見守った。


「【黒憑(クロウヴィル)】!」


 肉体だけでなく刀身にも魔力を纏わせ、切れ味と強度を向上させるが白鬼の前腕の硬度を超えることはできず、アルムの剣戟は全て弾かれてしまう。


(まじで硬すぎるだろっ⁉ これが偽造品とかどんだけ(すげ)ェんだベルモンド王国!)


「【引手(スナッチ)】」


 攻撃が緩んだ一瞬の隙を突いてベレスは拳を握り、アルムの背後から結晶の塊が引き寄せられる。

 彼はベレスから視線を外さずに左手で結晶に触れ、ものの一瞬で砂状まで分解した。


「魔法の効力を消失させたか! だがその程度でっ!」


 ベレスは左手で長剣を消滅させ、歯牙に覆われた拳をアルムの顔に突き立てる。


「くっ……!」


 辛うじて右腕を盾にするが受け止められず殴り飛ばされた。


『先程の一撃を受けてもなお立ち上がったアルム選手だが防戦一方! ここから逆転する策はあるのだろうかァ!』


攪乱(かくらん)で使うつもりだったか知らねェけど、結晶を展開するのは悪手だったんじゃないか⁉」


「あの手袋を奪い取ったんだ、無駄ではないと思うけど……」


「だからって敵に自分の魔法を利用させたら元も子もないだろ!」


 黒棘をフィールド全体に展開し、観客たちは再起を期待させたが現実はそう上手くいかない。


黒棘(ブラックパレス)が使われる以上に大きな利点があったから展開したんだろうが……)


「しっかりしろよ、アルム」


 テイバンと同様にこのままでは終わらないとセロブロも予感していた。


「見てお姉ちゃん! 黒いチクチクが輪っかみたいになってる!」


「本当だ、よく気付いたね!」


 立ち上がってフィールドの外周を指差すマイン。


(確かに外周だけは内側に針先の向きが揃ってる、偶然なのかな……)


 ラビスはふとした疑問が浮かび上がるもアルムの戦況に目が行き、疑問はすぐに忘れ去られた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


「おいアルム、お前が何か仕掛けようとしてんのは分かってる。俺を焦らして隙を突こうとしているのも悪くない。だがタイミングばかり求めて何もできずにくたばるのは許さねェぞ」


 息を切らすアルムに対し、ベレスは余裕な様子だった。


「はぁ――――あんまがっつくなよ、反撃の時間だって言ったろ」


 呼吸を整えたアルムは足元の影の中に潜り込む。


『ここでアルム選手! 遮蔽物で作られた影に隠れ行方をくらましたァ!』


『影からの強襲は有効な手段ですが、ベレス選手を相手にどこまでダメージを与えられるか……』


「「決めるなら最初の攻撃だ!」」


 アルムの勝利を諦めていく観客が続出する中、テイバンとセロブロは一層釘付けになった。


(アルム、追い込まれたお前の思考は手に取るように分かるぜ! 影の中じゃあらゆる魔法の干渉が出来ない以上、転移魔法で俺の死角を突こうとしてんだろっ!)


「その浅はかで早計な反撃はお前もろとも沈めてやる!」


 ベレスは自然体のまま左手に手中抹消を発動させ、気配を察知する音に努めた。

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