表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
55/82

5羽 お願いマイフレンド

 「うーん、いないのかな……」


 そう言いながらドアを開いた。ダメだろ。普通に不法侵入だろ。自分も無免許運転してた身だからあまり強く言えないが。


 「……しょうがない。鏡だけ置いて出ていくか」

 「え? それでいいのかよ?」

 「うん、この人は多分無事だから」


随分な信頼だな。それなら別にそれでもいいけど。家から出ていこうとした瞬間、背後から凍てつくような気配を感じた。


 「あなた達誰? 銀子ちゃんの家に何の用?」


やばい、怖くて振り返れない。女性の声、だよな? か細く透き通った声だが腹の底に響いてくるようなとんでもない迫力がある。しかし玄雄は怯むどころか嬉しそうに振り返る。


 「波里さん! やっぱりここだったんですね!」


何だ、玄雄の知り合いだったのか。それなら安心……うわ、めっちゃ険しい顔してる。


 「あなた何で私のこと知ってるの?」


知り合いじゃねえのかよ! 俺の安心を返せ!


 「その感じやっぱり波里さんだ」


お前はへらへらしてんじゃねえよ! この空気をどうにかしてくれ。全身が凍りついちまいそうなんだけど!?


 「翠ちゃん? 来てるの?」


銀色の長い髪が不安そうに揺れる。それを見て玄雄と波里って人の顔がパッと輝いた。


 「銀子さん! 無事だったんですね!」


銀子さん? じゃあこの人は筆坂銀子さん。ん? ちょっと待てよ、「翠ちゃん、来てるの」?


 「銀子ちゃん、なんか変な人たち来てるから隠れてて」


言い返す言葉もない。男二人が女性の家に不法侵入、どう考えてもただの変質者だ。いやいや、そうじゃない。そうだけどそうじゃない。


 「いや、あんたも勝手に上がってんじゃねえか!」


ちゃんとことわってたら「来てるの?」なんて聞かれないだろ! 口ぶりからして日常的に不法侵入してるってことじゃねえか!?


 「うるさいわね……私は銀子ちゃんを守るために来てるの!」

 「分かってますよ、俺達と一緒です!」

 「お前はちょっと黙ってろ!」

 「…………何これ」



 背の低い円卓の上に麦茶の入ったコップが4つ置かれた。銀子さんが用意してくれたと思うじゃん? 波里さん、教えてもらってるわけでもないのになぜか知ってたんだよ。銀子さんもさすがにちょっと引いてた。その波里さんは俺達をにらみつけているが、玄雄は相変わらずへらへらしている。


 「お二人は相変わらず仲良しなんですね~」

 「あなた銀子ちゃんと私の何を知ってるわけ?」


今にもつかみかからんばかりの勢いである。銀子さんになだめられて仕方なく引っ込む、あ、俺この人苦手だわ。


 「なあ、玄雄、さっさと鏡渡して帰ろうぜ」

 「ん? ああ、そうだな。銀子さん、これ持っててください」


しかし玄雄が渡そうとした鏡は銀子さんの手に届く前に横からかすめ取られてしまう。


 「何よこれ? 何で鏡なんか銀子ちゃんに渡すわけ?」

 「それさえ持ってれば24時間いつでもお助けに参れるんですよ! 隼人が!」

 「俺かよ!」

 「何それ? あなた達のことなんか信用して大丈夫なわけ?」


実にまっとうな意見である。しかし俺の脳裏には「お前が言うな」の7文字が浮かび上がってきていた。いかん、いかん、穏便に済ませないと。玄雄、どうやって信頼を勝ち取るつもりだ?


 「大丈夫ですよ、波里さんの分もありますから!」


……そうじゃねえだろ! 見ろよ、あの冷めた瞳! もう怒りすら沸かないって顔だぞ!


 「ふざけてるの?」

 「大真面目ですよ! 大丈夫です、隼人は強いですから!」

 「……ちっ」


舌打ちされた!? ああ、もう黙っててくれ。ていうかさっきから銀子さんが置いてけぼりじゃねえか。ほら、ずっと波里さんの髪の毛触ってるよ。


 「あの……銀子さん……」

 「翠ちゃん、私信じるよ。それ貸して?」


え。そんなあっさり? 波里さんから鏡を奪い取ると蛍光灯に透かして観察し始めた。……多分あの顔は何も考えないで見てるだけだな。


 「ちょっと、いいの?」

 「うん、ちょうど鏡欲しかった……」


何だ、その理由。まあ、別にいいか……これで一応ここでやることは終わった、のか?


 「なあ、玄雄……」

 「お出ましか」

 「え? お出まし?」


へらへらしていた玄雄が突然険しい顔になる。何だよ? 波里さんも窓の外をにらみつけている。俺と銀子さんだけが間抜けな顔をしていた。


 「隼人」

 「あ?」


 「行って……来ぉい!!」

 「うおおおおおおおおおおおお!?」



いきなり窓の外に突き落とされた。何考えてんだよ!? すぐに鳥獣化を……


 「何なんだよ、一体……」


ふざけやがってこの野郎……あ……アイツは……



 「俺を呼ぶなら、白牢の使者、とでも呼んでもらおうか」

 「ビャクローの使者だと?」

 「運命の執行人さ。八田玄雄はここで死ぬべき運命だった」



……二年前に玄雄を殺しやがった奴じゃねえか!!


 「てめえ……」

 「……お前の相手なら俺が出るまでもないか」

 「おい、また逃げんのか!?」

 「行け、白蝋守天」


白牢の使者が姿を消すのと同時に、二体の白蝋守天が姿を現した。少し遅れて玄雄もゆっくり舞い降りてくる。……生身で。


 「隼人!」

 「おい、玄雄。何考えてんだお前!」

 「これがお前の仕事だろ?」


俺の仕事? ……ああ、そうか。そうだったな。こいつらから鳳雛の家の仲間を守るんだ。……だからって突き落とすことねえだろ!


 「やっぱりこいつらだったのね」


カワセミが翼を翡翠色にきらめかせながら舞い降りてくる。その声は波里さん? えっ、この人もバードロイド? まあ、なんにせよ助太刀はありがたい。


 「波里さん、邪魔しないでください」


玄雄の口から驚くほど冷たい言葉が響く。その言葉とともに波里さんは空中に張り付けられたような状態になる。


 「あなた……どういうつもり……?」

 「隼人の強さ信じてないみたいだったので。そこで黙って見てて下さい」


俺一人で戦えってか? だとしても……こいつは本当に何なんだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ