鏡像のホワイトクリスマス
玄雄へのクリスマスプレゼント。
「♪ふふふーん、ふふふーん、ふふふんふふん♪」
「玄雄、ご機嫌だな」
「そりゃそうだよ。だって明日はクリスマス! サンタさん来るかなー」
「サンタさんって……うん、来るといいな」
「きっと来るよ、だって俺、頑張ってるもん!」
「おっ、そうなのか?」
「うん! おっと、早く寝ないとサンタさんが来ちゃう! お休み、父さん!」
「ああ、おやすみ」
「……あなた」
「うん、何て言ってやればいいんだろうな……」
「白夜が死んでからずっとあの調子だものね……」
―――――――――――――――――――――――
外は雪が降っている。世間はクリスマスだなんだと言って浮かれているが、俺にはクリスマスの予定などないし、サンタさんのプレゼントを楽しみにするような年齢でもない。構わないさ、家族4……いや、3人か、家族3人の団欒の時間なのだ。それで十分だろ? 十分なんだよ。それにしても今年は兄貴がいないからな~まったくあの兄貴は。まあ勝手にすればいいさ、今夜は豪華な夕食が待っている!
「母さん、これもう運んで大丈夫?」
「ああ、うん、お願い」
いい匂いだ。兄貴はこれが食べられないなんてかわいそうだなー。
「あれ?」
テーブルに料理を運ぶと、なぜかそこには兄貴がいた。おかしい、ここにいるはずはないのに。
「兄貴、何で……ああ、そうか、とうとうフラれたか」
「違わい! これはだな……ああ、ちょうど来た」
インターホンが鳴った。兄貴のお客さん……?兄貴に自宅に招くような友人はいないはずだが……
「入って、入って! 寒かったでしょ?」
「外雪降ってたよ! お邪魔しまーす!」
玄関からは元気のいい女性の声が聞こえてきた。あー、そういうことかぁ。
「お邪魔します! すみません、今日はお呼ばれしちゃって!」
「いいのよ、昇瀬ちゃん。大したもの出せないけど」
あの女の人は天道昇瀬さんだ。兄貴と現在交際している。家で一緒にクリスマスを過ごすとはな。
「おっ、玄雄くん! お久し振り!」
「どうも。兄貴が家にいるからフラれちゃったのかと」
「まさか! クリスマスは家族で過ごすものだからね!」
それは実質プロポーズなのでは? しかし兄貴は平然と微笑んでいる。多分、平然とこういうこと言えちゃう人なんだろうな。
「そ、それは白夜のお嫁さんになってくれるということかい!?」
一方父さんは過剰に反応している。こんな素敵な女性が兄貴みたいな変人と付き合ってくれてるなんて奇跡だもんな。でもその反応はちょっとうざいぞ。
「お父さん、あんまり昇瀬ちゃんを困らせないの」
「あ、ああ、そうだな! うん!」
「……白夜くんさえ良ければ私は」
え。
それってつまり、それってつまり、つまっちゃうところのつまりつまるところの……父さんと母さんと顔を見合わせる。兄貴! 兄貴! バシッと! バシッと決めてやっちゃって!
「……ごめん」
は? 今ごめんって言った? ごめんって何? 一般的にはお断りのお返事ですよ? お兄様、分かっていらっしゃるのですか? こんないい人とお付き合いできるチャンス、多分一生ありませんのよ? 心中で兄貴を責め立てる、恐らく両親も全く同じ気持ちであろう。続けて兄貴が口を開いた。
「今の僕は学生の身分だから。でも、卒業したら必ず! ……えっと」
そこで口ごもるなよぉ。その一言いえばお終いだろ! ほれ早よ早よ! 昇瀬さんも待ってるよ!
「えっと……その……結婚、しよう!」
言ったああああああああああ!!!! 昇瀬さんもコクリと頷い……たあああああああああ!!!! 兄貴め、幸せそうな顔しやがって! そんな顔初めて見たぞ!今夜はメリークリスマスだぁ!
兄貴、おめでとう。本当におめでとう。頑張ってきてよかった……
―――――――――――――――――――――――
「…………寒」
足元の凍てつくような感覚とともに目が覚めた。枕元のデジタル時計の液晶には「12/25」と表示されていた。窓の外に目をやるが雪は降っていないみたいだ、ただ冷たいだけの青空が広がっていた。
「……サンタさん、素敵なプレゼントをありがとう」
浸ってる場合じゃないってことか。現実なら良かったのにな。……さて、旅を続けるか。




