第70話 いつかまた、舞台に上るために
『それでは最後の予選を始めます! 残りの選手は闘技場までお越しください!』
「いよいよですわね……!」
司会の声が聞こえると同時に、控室を出て広場へと向かう。
この予選ではどうやら“場所取り”なるものが存在するらしい。ならば、より有利な場所を確保しなくては。
「イロハさん達も無事突破したようですし……というか、暴れたようですし。わたくしがここで足踏みする訳にはいきませんわ」
控室にまで聞こえてきた司会の声。それによると、“少女剣士”と“少女魔術師”が大層大暴れしたらしい。
確認するまでも無く、イロハさん達だと解かった。……解からいでか。
「正直、あの2人……特にイロハさんの強さは常軌を逸していると思うのですが……。いつかあの強さの秘密を暴いてみたいですわね」
そんなことを口にして、くすりと笑みを浮かべる。その事実に、少し驚いた。
「……案外、笑えるものなのですわね」
祖国、ガルシャークの状況は相変わらず不明瞭であり、状況は一切好転していない。むしろ時を経た分だけ悪化しているかもしれない。
それでもなお、自分は笑みを浮かべる事が出来た。
「……“あなたみたいな世間知らずが出て行って、何か出来るとも思えない”」
それを、あえて口に出して言ってみる。イロハさん達と始めて逢った時に言われた言葉。
本当、辛辣だ。その言葉によって、わたくしを主役とした“悲劇の王女”という演目は強制的に終幕させられた。それはもう、文句も出ないほど。
「おかげで、わたくしは“アリア”に戻れましたわ」
焦りが無いわけではない。王女としての責務を忘れたわけでもない。
けれど、おかげでわたくしは舞台から降り、観客として文字通り客観的に状況を見れるようになった。
(お兄様は聡明で慎重な人。あの行動がどんな意味であれ、短慮などではない。ならば、まずは足場を固めるはず。直ぐにどうこうという事はないですわ)
あくまで憶測ではあるが、生まれてからずっと兄の背を見てきた。そう外れているとも思えない。
兄の背中しか見ていなかった、見ようとしなかった今のわたくしにあの行動の真意は解からない。けれど、いつか“王女”として舞台に再び上る決心がついたら、その時は……
「その時は、今度は正面から逢いに行きますわ。お兄様」
願わくは、その時に新しい……初めてのお友達を紹介出来ますように。
『さあ! 予選もこれにて終幕! 既にこれまで数多の番狂わせや激戦が繰り広げられましたが、この最終戦も期待に反しないものである予感をひしひしと感じております!』
頭上から声が響く。いつの間にやら広場に着いていたらしい。
頭を振って思考を切り替えながら適当な場所を選ぶ。とは言っても、不利な場所でなければどこでもいい。
適度に周囲を見渡せる場所に立ち、開始の合図を待つ。その間にも、集中を高めていく。
『これで全ての選手が出揃いました! 今回も老若男女、様々な実力者たちが集います! 彼らは次に何を見せてくれるのでしょうかっ!』
降り注ぐ歓声。これほど大勢の前に出るのは初めてのことだ。体が震える。王女としては失格だろうか。
(ここを乗り切れば、少しは王女らしくなれますかしらね)
失格でも構わない。今は、未だ。
強くなるために、ここに来た。背中を押してくれた友がいた。
その友は一足先に次の舞台へと歩を進めた。次は、自分の番だ。
「待っていてくださいまし、イロハさん、セリナさん…………お兄様」
胸に手を当てて決意を改める。
『それでは、予選最終戦……』
(いつか、胸を張ってお兄様に向き合うために。あの日の真実を問いただす勇気を得るために)
腰の剣に手をかける。
『――開始ッ!!』
(ここで負けては王女が廃るッ!)
開始の声と同時に、覚悟と剣を抜き放った。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
最近、旧ドラえもんの映画にハマっております。やっぱ名作多いです。
ぜひ皆様も機会が在れば見ることをお勧めしたいですね。年齢関係なく、です^^




