第69話 火加減はしておいた(ドヤァ)
敵は3人。皆一様に私を狙っている。
まぁあれだけやれば当然だろう。ここで私を倒さなければ次に燃やされるのは自分達なのだから。
「一応聞いとくが、棄権する気は?」
3人のうち、先頭にいる優男がそんなことを聞いてくる。答えなんて一つだ。
「……愚問」
「そうかよっ!」
私の返答を聞き、すぐさま斬りかかってくる。
その剣筋は鋭い。流石にあれだけの火球を越えてここまで来ただけあって実力者ぞろいだ。けど……
「ぐほっ!?」
剣を避け、カウンター気味の杖撃を腹部に叩き込む。剣士は直ぐに後退し、意外そうな目でこちらを見た。
その眼を見れば、私を見た目で侮っていたことは明らかだ。
「……遠慮は要らない」
「大した嬢ちゃんだ……!」
横合いから別の剣士が迫る。
先ほどのやり取りを見てか、その剣閃と気迫には一切の迷いがない。完全に対等以上の相手に向けるそれだ。
その事実に満足しつつ、迫る剣撃を杖で受け流す。
「……っ!」
衝撃を受け流したにも拘わらず、手に僅かな痺れが奔る。近接戦でこの体格差はやはり致命的だ。
だが状況は怯むことすら許してくれそうにはない。
「むんっ!!」
「ちっ……!」
背後から3人目が重鎚を振り下ろす。こちらは体勢的に受けるのは無理だ。
致し方なく地面を蹴り、難を逃れる。だが体勢が悪かったこともあり、無様に地面を転がった。
すぐさま体勢を立て直してみれば、重鎚の一撃を受けた地面が大きく陥没していた。……殺す気かと。
頬を冷や汗が伝う。あんなもの、受けるとか受け流すとかの次元じゃない。
(……ほんとに容赦ない。3人相手は流石に厳しいか)
私は杖術にもそれなりの自信があった。鬼師匠に鍛えられたこともそうだし、経験も人に劣っているとは思わない。
ついでに最近はアリアと一緒に馬鹿みたいに強いのを相手に稽古している。それが稽古になるかは置いておいて。
だが現実は非情と言うべきか。杖術で3人を相手にするのはまだ早かったようだ。
「俺達の一斉攻撃をいなすとは……末恐ろしいな」
「だが、動きは読めた。次で終わりだ」
「…………」
3人が勝ち誇ったようなことを言う。
鼻息の荒いことだ。ともあれ、事実ではある。
「……そうね。貴方達3人の相手は厳しかったみたい」
「そうだな。ならば……!」
ならば、なんだろうか。また棄権でも勧めるつもりだったのだろうか。
だが、その先は続かなかった。おそらく、私が笑みを浮かべていることに気付いたからだろう。
「……杖術では、ね。忘れないで、私は……魔術師よ。――斬り咲け……」
「っ!」
3人が再び一斉に飛びかかってくる。
何を勝った気になって油断していたのか。近接用の魔法が無いなんて、私は一言も言っていない。
私が距離を置いた後も、間髪入れず、3人で攻め続けるべきだった。そうすれば私に魔法を練る余裕も無かっただろう。
判断ミスの代償は大きい。身を以て、火を以て知ると良い。
「――レッドウィング」
杖の先から炎が燃え上がる。それはまるで炎の剣の様に。
私は迫る3人を前に杖を……炎剣を、横一閃に薙ぎ払った。
「ぐあああっ!?」
「あっあぢいっ!」
「……っ! っっ!!」
当然の帰結、と言えるだろうか。3人は盾や鎧、それらとまとめて炎に包まれた。
炎剣とは言っても、実体はないし、勿論切れ味も無い。ただただ触れた相手を燃やすだけだ。
だがその炎は杖に追従し、まるで剣の様に振るえる。イロハとの特訓で得た魔法の状態を維持する技術、その応用だ。
「急げっ!」
決着とみた救護員達が慌てて集まり、次々に水魔法と治癒魔法を掛けていく。
まぁ大丈夫だ。命に別状はないだろう。
「……火加減はしておいた」
それだけを言い捨て、杖をさっと振る。そうすれば炎剣は嘘のようにその姿を消した。
もうここに用はないと、出口に向けて踵を返す。
『あ……圧倒的ぃいー! 少女剣士に続いて少女魔術師、圧倒的な力を見せつけました! そしてまさかの2位以下同時敗北! 1度の予選からの本線出場者がたった1人という前代未聞の結果となりました!』
ああ、そう言えば残った2人が本選出場出来るんだったと思い出す。彼らには少し悪いことをしたかもしれない。
まあどちらにせよ。この程度で敗ける様では本選に出場しても大して意味はない。……と思って諦めて貰おう。
「……ふあぁ。……寝足りない。次の出番まで寝てよう」
欠伸を噛み殺す。ここ最近、特訓で夜更かしが過ぎたかもしれない。
「……良いこと思い付いた。イロハを見つけて膝枕してもらおう」
私は背中に歓声を浴びながら、闘技場を後にした。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます
解かる人にしか解かりませんが、遊戯王OCG界(なんぞそれ)は4月からの新ルールで揺れております
これで遊戯王が廃れなけりゃいいんだけど…




