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転生古龍の遊者道  作者: 茜雲
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第66話 予選第1回戦終了



「は、恥ずかしい……」


 何言ってんの私……あんな説教染みたこと言ったりして……。


 いや、口から出まかせを言ったつもりは無い。あの言葉は全部、私が信じている言葉だし、体験談にも嘘偽りはない。


 だがそれとは関係なく、ただただ恥ずかしい。いつから私は他人様に説教出来るまで偉くなったんだろう。


「絶対先生の影響だよ……あの通り魔説教師め」


 責任転嫁はよくないが、実際あの人の影響であることは確かだろう。


 あの人はよくそこらの人達の悩みを聞いて説教を垂れていた。それを煩わしいと無碍に扱った人もいれば、その言葉に騙さ……救われて、なし崩し的に先生の道場に引っ張って来られる人もいた。


 ……ええ、私ですが何か。


 まぁとにかく、あの人はそんな感じで犬猫でも拾うかのように門下生を洗脳、もとい増やしてきた。その結果できたのが、私の通っていた合気道の道場。


 そんな成り立ちで大きくなっていった道場だから、居心地は悪くなかった。合気道が得意でも得意でなくても、だ。


「もう……懐かしく思えるよ。……先生」


 そんな私の呟きは風に流れ、消えていく。


 風が止むと、目の前には見知った人が立っていた。


「……傷心中かしら?」


「いえ、少し懐かしんでいただけですよ」


 言いながら目を擦る。少し濡れていたような気もするけど気のせいだろう。


「その顔で言っても説得力無いわよ?」


 言いながら、ライムさんは剣を構える。


 情け容赦は要らない。今は予選の真っ最中で、こうなるのは必然。声を掛けてくれたのはライムさんの優しさだ。


「ほんとに傷心なんてしてないですよ。今はほんとに楽しいですから。傷心する理由なんて、これっぽっちもないです」


 これは心の底からの本音。この世界に生まれて、ミシェルに、セリナに、アリアに出会えて。この暮らしは本当に楽しい。


(だから、心地よいあの想い出に溺れること無く、ただ浸れるんだ)


 こちらも剣を抜き、構える。


 目の前の女性はさっきの剣士さん2人とは格が違う。堂々とした自信に溢れ、その源が剣技にあることは疑うべくもない。


 想い出に浸るのはもう終わり。私が生きているのは今、この世界なのだ。よそ見なんてしてたら失礼だ。


 風が2人を撫でる。お互いに心構えは出来た。後は何か一つきっかけがあれば、それが合図となる。


 この緊張感は私だけのモノ。私達だけのモノ。


 そしてどのくらいの時間が経ったか。数瞬、数秒、或いは数分。合図(それ)は唐突に訪れた。




『そこまでぇーーっ! 予選第1回戦は終了です!!』


「「…………は?」」


 私とライナさんの声が重なる。


 いやようやく始まると思いきや……拍子抜けもいいとこだよ?


 疑問を浮かべながら周囲を見ると、右手を挙げて降参の意を示しているのが数人……。


「「…………」」


「ひぃっ!? い、いやだってあんな戦い(もん)見せられたら無理っすよ!? どっちが残っても僕らに勝ち目ないですっ!」


 私とライムさんの“空気読めやゴルァ……!”的な視線を浴びせられた1人はあっさりとゲロる。


 いや本線出場者は2人なんだからまだあんたらにも出場の目はあるでしょうに。


 とにかく、どうやらこれまでの私達の戦いを見ていたらしい彼らは無駄な阿吽の呼吸で一斉に降参したらしい。……なんじゃそら。


「なんか……凄い納得いかないんですけど……」


 せっかく楽しめてきたところなのに。この上がってきたテンションをどうしろと言うのか。


「……まあ、ルールだし仕方ないわね。あなたとは本選で戦えることを願ってるわ」


 ライムさんはそう言って複雑な笑みを浮かべた後、闘技場の出口に向けて歩いて行く。クールな人だ。


「……私も、楽しみにしてます」


 それだけ応え、私はライムさんに続いた。


『予選第1回戦からの本線出場者はまさかの女性2人となりました! 過去の記録を見ても非常に珍しい結果です! では、開幕から今大会の盛り上がりを演出した彼女たちに盛大な拍手を!』


 割れんばかりの拍手を受けながら、私達は闘技場を後にした。




「こちらでお待ちください」


 出口に待機していた係員さんに案内されたのは本線出場者用の個室だった。


 窓の無い小さい個室だけど軽い食べ物や飲み物なんかは用意されていて、一応くつろげるようにはなっている。


「あの、外に出たら駄目なんですか?」


「あちらの手洗い場以外へはご遠慮願います。基本的に出場選手は予選を観戦することは出来ません。これは公平を期すためですのでどうかご理解を」


 ああ、他の参加者は私達の戦いを見られなかった訳だし、出来るだけ条件は同じにしようということね。別に良いけど。


「りょーかいです」


「ご理解感謝します。では、ごゆっくり」


 そう言って係員さんは去って行った。


 透過魔法でも使えばバレずに観戦できるだろうけど、公平にと言われたら従うしかない。


「……とは分かってはいても……暇だなぁ」


 私は暇と欠伸を噛みしめながらセリナとアリアの健闘を祈ることにした。




ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


永かった。1か月ぐらい戦っていたんじゃないかと。

いや途中サボっててマジですいません…

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