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転生古龍の遊者道  作者: 茜雲
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第51話 お人好し



「……お見苦しいところをお見せしましたわ」


「いいよ、気にしなくて。それから、自己紹介が遅くなったけど、私はイロハ。よろしくね」


「私はミシェルよ」


「……セリナ」


 放っておくと王女様がずっと気を遣ってしまいそうなのでさっさと話題を変える。どのみち、自己紹介は必要だし。


「名乗るのが遅れて申し訳ございません。わたくしはアリア・エル・ガルシャークと申します。我が父、ガルシャーク国王マグナゲル・エル・ガルシャークの第三子にして第二王女。以後、お見知りおきを」


 そう、王女様、もといアリアが恭しく自己紹介する。


 ふむ、今初めて王女様らしく見えたよ。


「ん、よろしく。アリア。その……どうするの? これから……」


 アリアに問いかける。


 一瞬、慰めをいれようかと悩んだ。大変だったね、とか、辛かったね、とか。けど言わないでおく。やっぱり、無関係な私じゃ言葉が軽いし、アリアも頑張ってその事実を受け止めてる真っ最中だろうから。


「ええ……やはり、国の……ガルシャークの今の状況を知りたいですわ。ここまで来たのと同じように、ガルシャークへ行ける馬車か何かがあれば……」


「ダメだよ」


 アリアの望みは至極当然のものだ。だけど、私はそれを一言で否定する。


「ダメ、絶対に。今、何も解かっていない状態で戻るのは捕まりに行くようなものだよ」


 もちろん、その確証はない。そもそも、アリアの兄の行動の真意も解かっていないのだ。


 極端なことを言うと、暴挙に走ろうとした先王を、義憤に駆られた王子が暗殺という手法で止めただけなのかもしれないし。それも褒められたことではないけれど、その場合、アリアが危険に晒される可能性は低い。


 だけど、もし、その王子が王権の簒奪(さんだつ)を目的として先王の暗殺を敢行したのだとすれば、それを目撃したアリアは当人にとってさぞかし邪魔者だろう。最悪、向こうの国に着いた途端に捕えられ、そのまま失踪(・・)でもさせれられる可能性もある。


「ですが……このままでは……」


 なおも言い募ろうとするアリアの瞳は、納得いかない、と訴えている。


 だが彼女だって危険は認識しているはずだ。何せ実際に追われたのだし。


 それでも彼女を突き動かすのは王女としての責任感か、もしくは不安で判断力を失っているのか。いずれにせよ、何もせずにはいられないといった風だ。


 だけど……


「仮に、あなたみたいな世間知らずが出て行って、何か出来るとも思えない」


「っ……!」


 アリアは歯噛みするが、自覚しているのか反論はしない。


 厳しいことを言うようだけれど、まぎれもない事実だ。ここで変に優しい言葉を掛けても、誰の為にもなりはしない。


「今は冷静になって。幸か不幸か、ここはガルシャークの敵対国だから、追手の心配はないと思う。まずはここで、情報を集めることから始めよう? ……まあ乗りかかった船だし、私達も出来るだけ手助けはするからさ」


 そう、諭すように語りかける。


 難しい問題だけど、今はこれが最善だと思う。何より、アリアには心を落ち着かせる時間が必要だ。


 こんな超絶厄介事に進んで関わろうとするなんて、我ながらお人好し過ぎるだろうか。


 でも、仕方ない。好きに生きると決めたんだから。ここで逃げるのは私(・)じゃない。


「……ありがとう、ございます。イロハさん、ミシェルさん、セリナさん」


「どういたしまして♪」


「気にしないで、イロハのせいでこういうのには慣れてるから」


 トラブル吸引体質ですいません……。


 ミシェルの言葉を乾いた笑みで聞き流していると、すぐ近くからきゅるる~とネズミの鳴き声のような音が聞こえてくる。


 音の方に視線を向けると、そこにはお腹を抑えたセリナが……


「…………お腹空いた」


 とりあえず空気読めそこの外見詐欺幼女。


「まぁ、もうすぐお昼だしね。ご飯にでもしよっか」


「……じゃあなんで私は殴られたの?」


 セリナが頭頂部で自己主張しているタンコブを抑えながら不満そうな声を上げる。無論、スルーだ。


「そうね。王女様も少しは落ち着くかもしれないし。その分だと、逃げだしてから大したもの食べてないんじゃない?」


「昨晩、馬車の荷から少し果物を戴いたのが最後ですわね……」


 言いながらお腹を抑える。意識して空腹感が沸いたのか、アリアのお腹も軽く自己主張を始めた。


 ……相当恥ずかしかったのだろう、真っ赤に顔を染めている。気付かないフリしといてあげようか。


「……王女が盗み食いってどうなの」


「しっ……仕方ないではありませんの……丸一日、何も口にしていなかったのですから。それに、代わりに私の首飾りを置いてきましたから盗み食いではないですわ」


「王女様が着けているような首飾りを代わりにって……その馬車の持ち主さん、びっくりして腰抜かしたんじゃ……」


 ミシェル、セリナ、アリアの三人が楽しそうに歓談する。早くも打ち解けたみたいだね。


「お昼ご飯か……セリナ、自由市(じゆういち)って、食べ物もあるのかな?」


「……ある。ただ、少し割高」


 まぁ、出店とか屋台とかの食べ物ってだいたい割高だよね。


(宿を1月分取ったせいでお金はそこまで余裕ないんだけど……また稼げばいいか)


 そんな行き当たりばったりな予定を頭の中で組み立てつつ、私達はセリナに案内をしてもらい市場へと向かった。





ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


ですわ口調って思いのほか難しい…。

誤字などあればご指摘いただけると助かりますです。

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