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転生古龍の遊者道  作者: 茜雲
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第50話 ポンコツプリンセス



「お姫様ときたかー……」


 あまりにも馬鹿馬鹿しい反応だが、ここまで露骨だと逆に裏はないと信用できる。


「……な、なんのことですの? わたくしがガルシャークの王女だとでも? そそそんな訳ないではないですかぁ?」


「ガルシャークとは言ってないし、口調もおかしいわよ?」


「うぐっ……」


 なんだろうこのお馬鹿さんは。こんなポンコツが王女とか大丈夫かガルシャーク。


「……はぁ。別に、私達はあなたがガルシャークの王女様でも何もしないよ。ただ親切心で言うと……バレバレだからね?」


 私の言葉を肯定するように、セリナがうんうんと頷く。ミシェルはもう苦笑いしかしていない。


「う……なぜバレたんですの……? 演技は完璧だったはず……」


「その格好、その腕輪、明らかに良家の出だと解かる容姿! その常識の無さ! その全てがアウト!」


 というか演技らしい演技もしてないでしょうに。


 私にその全てを否定されたポンコツプリンセスはその場にへたり込む。


「お父様がお城の外は人外魔境だから気を付けろとおっしゃっていたのはこのことですのね……」


 むしろあんたの頭の中が人外魔境だよ。


 まぁそれは言わないでおこう。私としてはさっさと厄介事からは離れたい。


「じゃ、そういうことで私達はこれで……」


「お、お待ちになってぇっ! そうですわよ! わたくしはガルシャークの王女ですわ! それを見抜いた貴方方の洞察力を見込んでお願いがありますのっ!」


「ええい! そういうことを大声で言わないの! あんた立場の自覚あるのっ!?」


 王女が敵国で盛大に名乗りを上げるんじゃないっての。下手すりゃ衛兵さんが飛んでくるよ。


「話を聞いてくれるまでこの手を離しませんわ!」


「それが人にものを頼む態度かッ!」


 いやある意味伝統的な頼み込み方だけどさ。それはともかく、どうしたものか。首を突っ込んでしまった以上、捨て置くのも憚られると言えばそうだけど……。


 ちらりと後ろの2人を見る。ミシェルは苦笑している。セリナは……興味無さそうに欠伸してるね。


 まぁ、2人とも、私に任せるということだろう。


「ああもう……分かったからこの手を放して。話なら聞くから」


「本当ですの? 嘘つきません?」


 凄い涙目で訴えられた。なんというか、小さい娘をあやしてる気分だ。


「はいはい、私嘘つかない」


「ありがとう……ございますっ!」


 適当に返すが、それでも喜びを前面に出して王女様は満面の笑みを浮かべた。


 やっぱり子供というか、素直というか、純真というか……。この娘をを裏切るのはちょっと、難しそうだ。


「……実は、わたくしは思うところあってガルシャークの都を抜け出したのです。そして、追手の手を逃れる為に適当に忍び込んだ馬車が、偶然この国に……。王城を出たこともあまりなく、どうすればいいのかすら解かっていなかった上に、気付けばいつの間にか他国の中……。わたくし……どうすれば……」


「無計画過ぎない?」


「…………うりゅ」


「ああ!? ご、ごめん言い過ぎた! だから泣かないでッ!」


 ふと思ったことを口にしただけで王女様の目に涙が浮かぶ。この王女様ガラスのハート過ぎない?


 後ろからミシェル達の視線を感じる。別にいじめてる訳じゃないからやめて欲しい。


「こほん……。それで? 王城を抜け出した理由はなに?」


「それは……」


 話を切り替えて問い詰めるが、王女様は言い淀む。まぁ、一国の王女が逃亡を図るほどのことだ。そうそう他人に話せる内容ではないだろう。


「実は……お兄様がお父様の暗殺を――」


「言っちゃうのッ!?」


 大丈夫!? それ超絶スキャンダルじゃない!? って言うかそれを知っちゃったら私達も全力で巻き込まれる気がするんだけどッ!?


「貴方が話してと言ったんじゃありませんの」


「そうだけどさ……ああもう、分かったから続きを話して」


 こめかみを押さえながら、続きを促す。


 王女様は一つ咳払いをいれてから話を再開した。


「お兄様がお父様を暗殺したのを、その瞬間を見てしまいましたの。咄嗟に逃げ出したのですけど、お兄様に気付かれ……無我夢中でしたので、そこからはあまり覚えておりませんわ。わたくしは元々人見知りで、城内に無条件で信頼できる者もおらず……」


 なるほど。城内はお兄さんの手の内という可能性が高いから市街に出たのか。


 それは良い判断だろう。そんな大それたことをやらかすということは、城内に協力者が多数いると思った方が良い。


「そこからは、先ほど話した通りですわ。馬車に紛れ込んで、この街に……」


 そういった王女様の目尻には涙が貯まっていた。


 よくある権力争いの結果だろうけど、肉親が殺し合うというのは心を削るには十分過ぎる。ましてやまだ10代の少女だ、それでも喚き散らさないのは王女としての矜持だろうか。


 適当な慰めは逆効果になりかねない。どうしようかと考えているとミシェルに先を越された。


「――頑張ったね……」


「え……?」


 ミシェルが王女様を抱き寄せ、耳元で囁く。王女様はきょとんとしている。


「大丈夫。ここには貴方の敵はいないから……」


「……ふぇ」


 そこまでが限界だった。一旦決壊した涙は止まることを知らず、流れ続ける。


 ミシェルは胸が濡れるのも厭わず、ただただ抱きしめ続けた。




申し訳ありません。諸事情でしばらく更新できませんでした。

今日から復帰しますが、これから仕事もラストスパートに入るので、更新頻度は前ほどまでは戻らないと思います。


ご迷惑をおかけしますが、今後も拙作をよろしくお願いいたします。

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