第46話 貸し一つ
ギルドマスターの部屋を出た私は、ギルドのメインロビーに戻ってきていた。
すると、一足先に戻っていたバラスさんが何やら麻袋を持って近づいてくる。
「そらよ、護衛クエストの報酬だ」
そう言ってダランさんはどさっとした麻袋を手渡してきた。
それを受け取り、違和感に眉を顰めながら中身を見る。中には多くの金貨や銀貨。護衛クエスト1回分とは思えない量だ。
「……随分多くない? もしかして……」
「ああ。出発の時にライラの傷を治してもらった分と、あの時庇ってくれた分の礼だ」
ああ、やっぱりそうか。律儀というか真面目というか……馬鹿というか。
私は軽くため息を吐きながら、麻袋から適当に一掴みの貨幣を自分たちの金貨袋に入れ、残りを突っ返した。
「今回は共同クエストだったんだから助けるのは当たり前でしょ? 対価なんていらないですよ」
「そうは言ってもだな……」
「こう見えても、イロハちゃんには本当に感謝してるのよ? だから受け取って欲しいのだけれど」
素っ気なく突っぱねてもごねるバラスさんとライラさん。
感謝してくれるのは嬉しいのだけれど、それとこれとは別じゃないかなぁと思う。
「それに、ティラネルを出る時に金欠だって言ってたでしょ? ライラさんをちゃんとした宿に泊めてあげないと甲斐性無しって呼びますよ!」
「ぐぬ……」
お。流石に甲斐性無し扱いは効いたか。もうひと押しだ。
「それにぶっちゃけ、今お金に困ってないんだよね」
ティラネルでセリナと一緒にクエスト受けまくったからねぇ。
おかげでギルドの人達には感謝され、冒険者仲間には、ちょっとは俺らの獲物残しとけやゴラァ! 見たいな目で見られたのはいい思い出だ。
「という訳で、金貨は要らない。納得できないなら貸し一つってことで、今度私達が困った時に助けてください。ギルドマスターとも繋がりがあるみたいだし?」
にやっと笑みを浮かべながら提案してみる。
まぁ私としても、お金よりコネの方がありがたい。今のとこ頼る予定はないけど。まぁ、どうせ? 私は何かに巻き込まれるだろうし?
内心で自虐しながら返事を待つ。少し考えた様子のバラスさんは、あきらめたように金貨の入った麻袋を受け取った。
「……ったく、随分でかい貸しになりそうだな。……ありがとよ」
バラスさんは苦笑しながら私の提案を受け入れた。ライラさんも似たような表情だ。
「私としては、そんな貸しに頼ることなく、平々凡々と安寧の日々を送りたいとこなんですけどね」
「「それは無理だな(ね)」」
2人とも即答ですか。そんなにトラブルメーカーに見えるのかよちくしょう……。
否定できないっていうのが嘆かわしい。まぁ、今更だけどね。
「……まぁそれはさておいて、闘技大会の受付はどこか知しらないです?」
話を打ち切り、王都に来た本来の目的を果たすことにする。
私の問いかけに、バラスさんは得心したように頷いた。
「闘技大会? ああなるほどな、嬢ちゃん達はそれが目的か」
「そうね、イロハちゃんならいいとこまで行けそう。そうしたらランクアップもすぐね」
「だといいんですけどね。ま、気楽にやりますよ」
私の軽い言い分に2人は苦笑する。
「気楽に、か。あれはそんなに軽いもんでもないが、まぁ嬢ちゃんなら問題はないだろ。出場手続きなら、ギルドの受付で出来るぜ。ギルド主催の大会だからな」
「なるほど、ありがとうございます」
「まぁなんだ。期待してるぜ」
「またね、イロハちゃん」
私がお礼を言うと、2人は軽く挨拶をしてギルドを出て行った。
頼る時はギルドの受付に言伝を頼め、だそうだ。頼ることがないことを祈ろう。
「さってと、私達もぱぱっと受付済ませて宿を探そっか」
「……ん。色々と疲れた」
「そうだね……。久々にお風呂入りたいよ」
私が声を掛けると先ほどから空気と化していた2人が反応する。
早く宿で落ち着きたいのは私も同じだ。さっさと受付済ましちゃおう。
そして2人を引き連れ、受付に向かった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
世間では日曜は休みだというのに……ちくせう。




