第37話 護衛任務
「護衛依頼?」
ミシェルが首を傾げ、聞き返す。
「うん。ただ歩いて向かうのもなんだし、ついでに王都に行く商隊の護衛任務も兼ねちゃおうって話になってね」
「……馬車での移動になるから、効率的」
私の説明をセリナが補足してくれる。
「なるほどね。でも、よくこのタイミングでその依頼あったね」
「……元々ティラネルには立ち寄るだけの予定だったらしいけど、ここまでの道中で護衛の一人が負傷したから人数増やしたいらしい。……都合が良すぎて警戒せざるを得ない」
「……なんで私を見ながら言うのかな?」
ミシェルも察したような顔をしないでくれないかな!
いや言いたいことは解かるけど……安心と信頼の実績もあるけどッ!
「……まぁとにかく、ちょうど護衛依頼も見つかったからその人達と一緒に行く」
「ふぅん。それで、その人達は?」
「……町の入口で待ち合わせ」
セリナがそう言うと同時に町の入口に着いた。
周囲を見渡せば、明らかに誰かを待っている様な馬車の一団が目に入ったので声をかけた。
「お待たせしました。護衛依頼を発注したイカルト商隊さんですか?」
「そうだけど……え、君たちが護衛? Dランク以上って指定したはずだけど……」
「……私がCランク」
その馬車隊の前で屯している人たちに話しかけるが、早速訝しげな眼で見られる。まぁ、若い(幼い)女の子の集団だし、無理もないけど。
そしてセリナの言葉を聞いて彼らは驚き、確認でセリナの資格札を見るとさらに驚く。
……この流れ飽きてきたなぁ。
「ま、まぁ人は見た目に寄らないと言うし……。ごほん。改めて、俺はこのイカルト商隊を率いるエルナーだ。よろしく」
「俺はここまで護衛してきたパーティ“黒鬼”のリーダー、バラスだ」
「同じく“黒鬼”のライラよ。ちょっと怪我しちゃったせいであんまり戦えないけど、許してね」
優男という印象の商隊長さん。それから間違いなくパーティ名の元ネタになったであろう見た目のバラスさん。そしてそれとは正反対に、美人という評価がよく合うライラさんの3人が順に挨拶する。
どうやら負傷した護衛というのはライラさんの様だ。
「よろしくお願いします。私はイロハです」
「……セリナ」
「私はミシェルです」
未だ少し疑ってそうなエルナーさんは、品定めするように私達を見る。
「君たちも冒険者なのか?」
「はい、私は一応そうです」
「私は違います。ですが彼女らと共に同行しても構いませんか? もちろん食糧なんかは自分達で賄います」
そう懇願するようにミシェルが言う。ここで断られたら依頼も断るけどね。
「いや、1人くらい構わないさ。さて、そろそろ出発したいんだが構わないか?」
「大丈夫です。あ、いや、少し待ってください」
そう言って、黒鬼のライラさんの方に近付く。
「なに? どうしたの?」
「ちょっと失礼します。――癒しの光よ、ヒーリング」
訝しげなライラさんを制し、彼女の右足に手を添える。そして呪文を唱えれば、癒しの光がライラさんの右足に灯った。
必死に顔には出さないようにしていたけど、時々不自然に右足を庇っているような仕草をしていた。多分、相当痛かったんだと思う。
だからといって治してあげる義理は無いと言えば無いんだけど、一時的とはいえ仲間同士だしね。
「――痛く、ない……。治ったわ!」
「おいおいマジか。回復魔法……しかもかなり高レベルじゃねぇか……」
黒鬼の2人は目を見開く。
セリナに聞いた話だけど、この世界では回復魔法はそれなりに難易度の高い魔法らしい。
それも、魔法を使った感じ、ライラさんの怪我は結構重症みたいだった。それをあっさり治すのは確かに私の年齢にそぐわない技術ではある。驚くのも無理はない。
「やれるだけやりましたが、完治はしてないと思います。王都に着いたら一応お医者さんに診て貰ってください」
「ええ、ありがとう……!」
一応のフォローを入れてみたものの、規格外なのは確かだ。あまり目立ちたくないところなのだけど……。
「……すまんな。いつか礼はする」
「へ? いや、いいですよ。そんなつもりでやった訳じゃないし……」
「いや、けじめみたいなもんだ。させてくれ。つっても、今は手持ちがなくてな……」
パーティ名の割に意外と真面目だねバラスさん……。
とにかく、そう言われたらこちらとしても断れない。
「分かりました。でも無理をしないでくださいね。それで怪我でもされたら、それこそ治した甲斐がないです」
「ああ、わーったよ」
バラスが苦笑しながら了承する。
ほんと、どうしてそんなパーティ名にしたのかってくらい良い人だね。
「お待たせしました。行きましょうか」
「あ、ああ。凄いね、その歳で回復魔法か……。Cランクの彼女といい、驚かされるね」
そう言いながらエルナーさんは馬車に乗り込み、私もそれに追従……しようとして後ろを掴まれた。
「まぁ待て、配置決めるぞ。さっきのは感謝してるが、この共同クエストでは俺がリーダーだ。異論はあるか?」
首を横に振る。
このクエストを受注した時点でDランク以上なのは確かだ。なら、年齢、経験を鑑みてバラスさん以外に適任はいないだろう。
横でセリナが不満そうな雰囲気を醸し出しているが放っておこう。
そして、護衛組で配置を決めた。
3台ある馬車の内、先頭の馬車に黒鬼の2人。2台目に後衛職のセリナとミシェル。3台目に私が乗り込むことになった。
前後のどっちから襲われてもいいように、前後に前衛職、中央に支援の後衛職を置くのは当然なのだけど……。
正直、寂しいです!
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
冒頭1万字前後とプロットだけを書いた小説ネタが溜まってきた…
遊者道と隔日で書いてやろうか…。
いや、3作同時連載は破綻する未来しか見えないな--;




