第35話 決心
「お疲れ様でした。こちらが今回の報酬になります」
「ありがとうございます」
そう言って受付の奥から差し出される金貨や銀貨を受け取り、金額を確かめて麻袋に入れる。もう慣れたものだ。
「このところご活躍ですね。この間イロハさん達が助けた冒険者の方もお礼を言ってましたよ」
「いやぁ、偶然通りかかっただけですよぉ」
「……あれくらい余裕」
「セリナはずっと例の特訓してただけでしょうが」
冒険者に登録して、早10日。もうだいぶ慣れてきたし、ギルドの受付お姉さん、もといイルファさんとも随分親しくなれた。
受付で、後ろに誰も並んでいない時なんかはよくこうして3人で談笑している。
「この分だと、Fへのランクアップも直ぐだと思いますよ。あ、それで思い出しましたけど、イロハさんとセリナさん、闘技大会はどうされるんですか?」
イルファさんに言われて思い出す。
そう言えばそんな話もあったね。
「ああ、そっか。出場るならそろそろ……」
「……まあ、イロハさんならここに居続けてもランクアップは直ぐだと思いますけどね」
イルファさんは私達がミシェルと仲がいいことも知っている。よくフィレット商会に買い物に来られるので。
そして、知っているからこその言葉だろう。私も、考えないといけない。
気付けば、何人かの冒険者が受付に並ぼうとしていた。談笑の時間はおしまいだ。
「考えておきます。では」
「……ばいびー」
どこで覚えたその言葉……。
そうしてギルドを後にして、私達は家へと向かう。
「……どうするの? 闘技大会」
「うん……どうしよっか」
空を眺めながら呟く。
せっかく家族が出来たのに、また、そこから飛び出すのかと。
若干の寂しさと罪悪感が胸を満たす。
「……出場たいの? 出場たくないの?」
セリナの言葉でハッとする。
私はこの世界を見て回りたくて、楽しみたくて洞穴から出て来たんだ。なら、迷うことはない。
なんなら、いつでも帰って来れるしね。
内心でくすりと笑い、決めたことをセリナに告げる。
「――出場たい。出発は、5日後かな」
「……ん、そう」
セリナはそれだけ呟く。なんとなく気になって、訊ねてみた。
「セリナはどうするの?」
「……もちろんついて行く。言うまでもない」
「言うまでもないかぁ~」
口調は呆れ口調で、表情は抑えきれない喜びを携えて答える。
まぁ、セリナならそう言うと思ってたけど。
「ミシェル達にも、言わなきゃね」
「……早い方がいい」
「そうだね。今晩、晩御飯のあとかな」
そう呟くと腹の虫が哭いた。
セリナと顔を見合わせてお互いに乾いた笑みを浮かべ、家路を急いだ。
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