第33話 初報酬の使い道
「はい、これでクエストは完了です。こちらが報酬金になります」
「ありがとうございます」
受付のお姉さんから報奨金を受け取る。ゴーストスパイダーの討伐報酬だ。
「それから、イロハさんの資格札が出来ましたので、お渡ししておきます」
「え?」
言われて、差し出されたものを見る。
そこには私の名前やランクなんかが印字されていた。私はそれをおそるおそる受け取る。
「これで、私も正真正銘の冒険者?」
「ええ、そうですよ。おめでとうございます」
冒険者……! そっか、これで私もあの冒険者になれたんだ!
「うへへ……」
自分でも奇妙だと思う声を漏らしながら資格札を眺める。
そこに書いてあるのは私の名前。正真正銘、私のだ。
「か、感動していただいているところ申し訳ないのですが、仮資格札の返却をお願いしてもいいでしょうか?」
「え? ああ、はいっ!」
お姉さんに言われて仮資格札のことを思い出し、返却する。これで見習いは卒業だ。
「はい、確かに。ではイロハさん、これからのご活躍をお祈りします」
「ハイッ!」
無駄に気合を入れて答える。
少し冷静になると周囲の冒険者達が微笑ましそうにこちらを見る視線に気づき、今更ながら恥ずかしくなってきた。
「くすくす……。あ、それとひとつ連絡しておきます。近頃この近辺にガルガトスというAランクの危険種が目撃されています。先日討伐クエストが発注されたのですが、何故か対象を発見できず、討伐されておりません。もし目撃した場合、速やかに撤退してご連絡ください。間違っても、交戦したりはしないように……!」
「あ……ハ、ハイ、ワカリマシタ」
顔を引き攣らせながら答える。討伐隊の皆様には申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
あれは状況的に仕方なかったけど。
なんとなく居心地が悪くなり、私達はそそくさとギルドを後にした。
「ふぅ。……でも、冒険者か。ふふ……」
「……イロハ、嬉しそう」
「そりゃあね。ちょっと憧れてたところもあったから」
漫画の世界に、だけどね。
「……それなら、イロハを誘った甲斐もある」
セリナはそう笑みを浮かべた後、報奨金を入れた袋を覗き見る。
「……ふむ、ちょっとした稼ぎにはなった」
セリナが呟いた通り、ゴーストスパイダーはDランク以上向けのクエストだったこともあり、それなりに高額な報酬だった。これだけで1週間の生活費くらいにはなるだろう。
「ま、最初の使い道は決まってるけどね」
「……使い道?」
セリナが首を傾げる。
「うん。と言ってもセリナが受けた依頼の報酬だからセリナが良ければ、だけど」
「……詳しく」
興味津々なセリナに、ちょっと照れくさくなりながらも答える。
「ミシェル達に、ミシェルとアリアスさんとバーナードさんに、お礼をしたいなって……」
「……バーナードさん?」
何故疑問形? いやまさか……
「……バーナードさんはミシェルのお父さんだよ? 忘れてないよね?」
「………………ああ。……うん、忘れてない」
嘘吐けぇっ!
確かに私も最近あの人の姿見てない気もするけどっ! けどいるから! いつも一緒にご飯食べてるはずだからっ!
「……それで、お礼ってなにするの?」
「まぁ、それは買い物しながらね」
そう言って私達は初めての稼ぎを手に、町へと繰り出した。
「と、言う訳で! 今日は私達が夕ご飯を作りますっ!」
「……作ります」
机の上に買い込んだ食材を広げながら宣言する。
そして机を挟んで反対側には目を丸くするフィレット家の面々。
「そんな、気にしなくてもいいのに」
「気にしてるからとか、そんなんじゃないよ。私がお礼したいからするの♪」
ミシェルが遠慮しようとするのを遮る。
日本では社会人になって初任給で家族をご飯に連れて行くと言う風習がある。……まあ実際にやってる人はあんまりいないかもだけど。
それに倣った形だけど、あいにく美味しい料理店を私は知らない。そこで、私が腕を振るうことにした。
正直、胸を張って料理が得意とは言えないけど、そこは前世での知識とかでカバー出来ると思う。
「なるほど、それは楽しみだな」
「手伝いは要らないかしら?」
「ありがとうバーナードさん、アリアスさん。でも大丈夫だよ、セリナもいるし」
「……余裕」
「……そ、わかった。じゃあ楽しみに待ってる」
そう言ってミシェルは腰を降ろす。ちょっと複雑そうな表情だけど。
「ま、そーゆー訳だから。みんなはのんびり待っててね♪」
そう言ってセリナの手を引き、キッチンへと引っ込んだ。
「さて、セリナ。始めようか」
「……任せて。炎の扱いなら誰にも負けない」
……だ、大丈夫だよね。すごく嫌な予感するけど……。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
もう秋アニメが始まりますねぇ。
タイで見れないの辛いなぁ…。




