2-26 会議
都市中央部の真ん中に一際高い建物がある。平屋と二階建ての建物がほとんどを占めるこの年輪都市で唯一の5階建ての塔のような建物。
年輪都市の家は地下室を供えている家が多い。しかし地上階はほぼ平屋か2階建てとなっている。年輪都市では平屋の建築物はレンガであろうが異法士が固めた土であろうが木材でも構わない。
しかし2階建築物はかならず木材で作ることが義務付けられており、3階以上の建築物は鉱石採取目的の衛星都市から得られた鉄材による鉄筋の建物にすることと決められている。
だが3階以上の建物は中央の都市機能の建物ばかりでどんな富裕層であっても鉄筋の建物は自らは建てない。単純に衛星都市からもたらされる鉄材が少ないためで武器や工具などの必須の材料として使うのならいいが、建築用として使うには贅沢として使う用途によって金額が高く設定されてるためである。そこまで見栄を張りたいなら自分で立てるよりも鉄筋で出来た都市上級職用の官舎に入るほうが現実的なのである。
そんな塔の最上階で都市の地区の代表者、衛星都市の代表者、そして都市運営実務の実質的な最高機関の都市運営課の上級職員たちが議案を話し合っていた。都市の上級職員は都市にあるそれぞれの課の長が職を兼ねていたり、過去の課長や有益な実績を上げた者が名を連ねている。
「では、本日の議題は狩人の称号について、これまでの出た意見を参考に採用として良いか決を採る。」
「賛成のものは起立を!反対のものは着席を!」
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「よろしい。では賛成多数により、この件は古老の方々に上申しておく。」
「次に塩についてだが。衛星都市の岩塩の貯蔵量が底が見えてきているようだ。これについて意見があるものは?」
「無くなっても良いのではないか?蒼海都市とはあちらが必須の穀物との交易で関係は良好だ。塩を回してもらえば問題はないだろう?」
「その通り、新たに岩塩が採れる地区を探して危険を冒すよりも現実的だ。」
その意見に賛成する意見がほとんどを占めて議題は終わろうとしていたところ上級職員カムカが意見を述べる。
「しかしこれからも蒼海都市と関係が良好であるといえますかな?確かに穀物は我々の重要な交易品だがそれを売りにしている都市は他にもあるのでは? それを理由に不当に塩を高く買わされる可能性もある。一応はこちらからも塩を調達する術は探っておくべきではないか?」
「もっともではあるが今の岩塩採掘地区は探索中に巨鳥の来襲でずいぶんと死者が出た。同じように死を覚悟で探すべきと?」
「そうですな。ですが蒼海都市のように海があれば異法で塩を分離できます。」
「海、か。確かにな。だがもっとも海に近いとされている南は段差が激しく行軍は難しくそもそも近いと「されている」だけで本当なのか分からない。どうやって海まで行くのだ?」
「西は未だに遠方へ行ったものはおりません。ですが少なくとも東はアレを超えれば海があると分かっているのでは?」
「東か、アレとの協定はどうする?互いに不可侵ぞ。」
「確かに。ですが我らが用があるのは更にその先の海のみ。東へ流れる川をそのまま使えば彼らの領域は通過できるのでは?」
「どうであろうかな?そもそも東に抜ける川に我らは触れてはならんとされている。見つからぬとは限らんぞ?」
「しかし角付きを同行させて歪門を設置させればそこで帰るのもそこから探索を始めるのも容易いでしょう。見つかりそうなら帰ればよいのでは?」
「だがアレらと事を構えることになったらどうする?」
「では塩は?それに海に歪門をつなげれば市民の娯楽にもなるでしょうな?我らの都市は広く手狭ではありません。しかし政策上、他の友好都市同士のように旅行というものが出来ませぬな。はるか先を見越せば海への門が開くことができれば市民の気晴らしもできるようになるのではないか?」
「ふむ、じゃがいずれにしても早急に決めることでもないだろう。この件については各人で考えておいてもらいたい。」
「では次の……」
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不定期に招集される年輪都市の意思決定会議を終えて、席を立つカムカ。すると同じ上級職員の老人が声を掛けてきた。
「カムカ殿、相変わらずのご慧眼ですな。狩人の称号をつけることでの能力の把握と依頼のマッチング。さらに狩人の退職後を見越しての事とは。しかしアレの領域を超えて塩を求めるとは可能ですかな? かなり危険と思われますが?」
会議が終わってカムカに声を掛けてきた老人に対して答える。
「アケーシさん。自分で言っておいてなんですが実現するかは怪しいですな。ですが単に都市に無ければ外から買えばいいという姿勢ではこの都市では不利になりかねません。選べる選択肢は増やしておくべきかと。」
「そうですな。ワシのような先が短いものは積み上げた財産で賄えばよいが若いものはそうはいきませんな。」
「そういえばアケーシさんの娘さんは狩人をされているとか?」
「ええ、都市の職員としては娘には良き相手を見つけたら早々に嫁い欲しいと願うべきなのでしょうが上の息子達がことごとく病に倒れましてな。遅くにできた娘しか残っておりません。唯一残った娘を自由にさせておったのですが珍奇な行動をするようになって困っております。
先が見えたこの年になると様々な欲よりも自分が生きた証を残したいと思うようになりましてな。ワシの財産(金、不動産)を継ぐのはアレだけ。それで食べていけるでしょうが自身で依って立つものが欲しいと狩人は続けるようです。」
「なるほど、不肖の息子にもそのような理由があればよいのですが。」
「聞いておりますぞ?1級巨獣のゾウを撃退した狩人の一人とか、それほどの力があればそうそう命を落とすこともありますまい。羨ましいですな。」
「そういえば最近出回り始めた宝石の原石の件なのですが……」
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俺は今、実際に食べたきのこのデータと標本の突合せのため薬屋メイシンの2階にいる。
「師匠、これが最近食べてみたメモです。」
こっちの太い芯でできた筆記用で書けるように大き目の紙を使って纏められた資料を見てもらう。
「思ったよりも種類がないな。時期によって出る出ないのキノコがあるから仕方が無いか。」
ぺらぺらと10種ほどのキノコの味や形状のメモを見てチェックした後
「うむ。ワシらが食べたキノコの感想と大きな違いもないな。ところで最初にやったアレは使ったか?」
アレとは娼館にいったら使ってみろといわれた興奮作用があるキノコのことだ。
「いやー、そういう店に行くことがないもんで。」
「何を抜かしとる。お前くらいなら溜まって溜まって仕方がない年だろうが!娼館の遊びもいいが『無駄打ち』しとらんで相手を見つけてさっさと『当て』て来い。ワシが若い頃なんざ翌朝の太陽が黄色く見えるくらいまで、」
「はいはい、師匠の武勇伝は後で聞きますんで。サンタシさんに呼ばれてるんでしょ?」
そうなのだ。根の無い薬草をキノコを食用として調べているとコウサがサンタシに言ったところ、流通されるほどの量が持ち込まれるか分からないがいざとなった時に困るので買い取り資料として欲しいとして呼ばれたそうなのだ。で実際に食べて調べている俺にも同行するようにと俺もコウサから呼ばれた。
「そうだったな。ではお前のメモと対応する見本を持って中央買取課に行くか。」
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「え?カイルさん?」
コウサさんのことを教えたのは自分なのに何を驚いてんだこの人。
「おう、お前がコイツにワシのことを紹介したそうじゃないか?若いくせにかなり物知りでこっちも勉強になったんでな。ワシの知識もコイツに教えてるんだ。そもそも「根の無い薬草」の中で普通の食用出来るものを「キノコ」として広めようとしてるのはコイツだからな。」
するとサンタシは呆れたように
「カイルさん、『石』の件もあるのにもう別のことに手を出してるんですか? それに輝虫の件もあるのに。」
「『石』は毎日小出しにしてもかなり持ちますよ。それまでに床が抜けないかが心配ですし。アレは枝を差して様子見ですしね。」
そういってしばらく雑談した後、ほかの買取課の窓口職員も交えて「食用根無し薬草」ことキノコについて説明。もし都市内からの流通希望が出ても窓口職員が確実に判別できるものしか買い取らないように指示。 そこの女性窓口職員、話を聞きながら潤んだ目で誘わないでください。
話を終えた後 サンタシから別室に通されてカードの表示が変更されると聞いた。研修期間が終わって正式に職に就いたものはカードに職業名が表示されるのだが狩人については過去半年の実績から~狩人などと表示されるらしい。
「なんか意味があるんですか?」
「カードを利用した過去売買の実績でその狩人がどういう巨獣に対して強いのかを分かるようにするためらしいですよ?そうすることで特定の素材や特定の肉を求める依頼者からその狩人に直接依頼をしたりするのに便利ではないか?ってことらしいです。いわゆるマッチングですね。あとこの称号を得たものは狩人をやめても新人狩人の指導員として都市が雇う基準になるそうです。」
「あれ?俺は一般人だから詳しく知らないけど自由研修期間中に通うのがあるんじゃなかったっけ?」
「そうです。狩人の養成機関の教員やその後に新人として活動中にサポートするまで仕事の幅を広げるそうですね。この年輪都市は穀物を栽培してますが他の都市にないものといえば巨獣由来の肉や素材でしょ?それをもっと広げるためには狩人がもっと必要ってことらしいんで新人の死亡率を下げて、ゆくゆくは狩人の人数をもっと増やすってことらしいです。」
「新人じゃなくても狩人は死んでるけどね。全体の死亡率5%ちょっとだったかな?」
20人に一人は死ぬ計算だがそれほど身の周りで死者が出ているように感じないのは撤退に失敗した時に狩人は全滅するため一気に死亡者がでるためだ。
「問題があれば考え直すでしょうが狩人の称号が表示されるだけですから問題はないでしょう。それからこの食用としてのキノコは新種登録してますけどコウサさんとカイルさんの連名にしておきます?」
「いや、この資料を纏めたのはコイツだからな連名でなくていい。」
「では、カイルさんのカードを拝借していいですか?」
俺は源力から物質化してカードを渡す。奥に行って持ち帰ってきたサンタシはカードを渡しながら
「カイルさん、生き急ぎでは?多忙にしてると倒れちゃいますよ?」
「その分しっかり食ってるさ。で、もう表示されてるんだな。」
カードには
職業-狩人(仮)
巨獣狩人(3)、巨竜狩人(3)、巨鳥狩人(3)、キノコ狩人、宝石狩人
撃退者(1)
と出た。
「なんでまだ売ってもないのにキノコ狩人なんて出てるんだ?」
「それは新種登録で一気に10種も登録したせいでしょう。」
「この()の数字は?」
「巨獣の等級と聞いていますよ?」
なんか撃退者ってついてる。あ、ゾウか。
それにしてもカードに宝石狩人なんて出たら人に見られたら持ち込んでることが分かりますやんか……
あまりカードは実体化させないほうがいいと思いながらコウサと買取課を後にした。
神崎郡神河町をもじってカムカ ニミヤの父 上級職
明石市をもじってアケーシ ダーナの父 上級職




