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4-18 日常 3

-だからね、体が疲れてないのに睡眠が必要となるのは脳が休みを求めてるってことじゃないかと思うの。


 ある日の夜、本当に久しぶりとなるチャットでKさんと情報を交換していた。

確か彼女は年輪都市あっちでは一般人だということだった。それを信じるなら前と同じカイルという名前で書き込んでも都市中央買取課などに知り合いがいない限り狩人の名前なんて知らないだろうとそのままにしている。


-やっぱり あっちとこっちでの生活をしてることは負担ってことですかね?


-負担といえば負担でしょうね。 こっちでもあっちでも双方の記憶があるってことは少なくともその記憶や経験をそれぞれの世界の脳が2つの世界での経験や記憶を処理してるってことになりますよね?

つまり同じ24時間で過ごしていながら睡眠時に脳は休んでいるようでその間に私達はあっちの経験や記憶を処理してるのかもしれません

それは両方の世界の脳にもいえるでしょうから眠くなるなら時に長い睡眠や昼寝なんかもいいのではないでしょうか?


-Kさんもそうなんですか?


-私は数週間のうちになりました。

数ヶ月も経ってからは自覚できる程の眠気は起きてなかった気がします。

ひょっとするとカイルさんはあっちと人生の長さがほぼ同じであることが関係してるかもしれませんし、あっちで緊張が続く仕事をしてるのか逆にこちらで解決しない悩みや緊張が続いているならそれが関係してるのかもしれませんけれど。


-そういえば私のように両方の世界で年が近いのは珍しい方でしたっけ


-人生が短い方の世界の方が長く生きている人生の情報を処理・整理をするのに時間がかかるとしたら両方の世界で負担が掛かっても更に短い方の人生の方に負担が掛かりそう。

でもカイルさんの場合は両方で同じように睡眠を欲するようになるかもしれませんね。


-Kさんは今は疲れとかは眠気とか出てます? 


-私はあっちと繋がって3年になるけれど最初に混乱してた時期に経験してからはないですね。 最初は混乱からの疲れだと思ってましたし。

カイルさんには最近起きたのかもしれませんけれどいずれにしても長く続かないんじゃないかと思います。 いくら忙しくても体は休息を取ってるわけですし慣れてくるんじゃないかと…… 所詮私の予想でしかありませんので気休めにしかなりませんが。



 そうか。他の人にも起こってたのかな。今のところKさんしかあっちの世界と繋がった人の経験談が聞けないから一人のサンプルでは参考にしかならないかもしれないけれど無いよりはましかな。


 そのあとしばし共同の話題となるあちらの話題を続けたがこっちの話での話はしなかった。最初に話したときは年が近かったことがわかったけれどこっちの個人情報は互いに触れない方がいいだろうから敢えて振らなかった。

でも年輪都市以外の人でもいいのであっちの世界と繋がった人と会ってみたいな。 こっちの専門職や技術者があっちと繋がってればもっとこちらに近い技術があっちで広まってるはずだと思うんだけれど。思った以上に繋がっている人は少ないんだろうか。


 今日はもう入浴も済ませている。寝るには早いがノートパソコンを閉じてベッドに寝転がる。これからまたあっちか。

あっちの生活は充実はしてるし極端な肉体の疲労は感じないけど早く狩りが終えれた日は少し横になるようにした方がいいか。こっちのTVで見たように15時までに数十分の睡眠を取るのは難しそうだけどいずれはKさんの経験じゃ慣れてくるらしいし、眠たくなったら無理せずに眠ればいい。



-*-



 今日は狩りを終えて獲物を売った後、中央買取課奥に入り、白球のサンプルを提出する。発見個数などは狩人活動の場所が同じなら意味がないので発見した場所などの報告だけにしている。


 白球というのはオニフスベのような外観をしていた特殊な蛇の卵である。

呼称は見たまんまで白球しろだまとしたらしい。

白球に含まれるヒトに対する誘因物質成分や量産が可能かの研究は都市の専門の課に任せ、自分は都市の依頼によって決まった個数を持ち込んだり、発見した状況の報告、できれば野生での親の捕獲も依頼されている。


 親そのものは俺たちと『偏食』が狩ってきた2級の巨獣の口を縛って持ち帰ればまだ胃の中にいるものが捕獲出来たそうで今のところは数種の2級巨竜から得られているそうだ。そしてホストの巨竜の大きさにより潜んでいる蛇の大きさもことなっていることから広さの環境に合わせて成長も違うのであろうことが分かってきている。

そして白球の表面にあるキノコ状のものはどうやら蛇の卵そのものでなく、卵の外殻に外から付くか育ったもののようで卵として産み落とされるのは白球の中の硬い部分のようだということとキノコ状の部分はホスト巨獣の胃酸では溶けないとのこと、おそらくはあの状態で留まることで胃より下に降りないまま中の蛇が孵化するまでは保護してるんだろう。

 しかしそうだとすると草原ではかなり発見は困難だ。なんせ産み落とされたばかりの卵は小さくて草を分けないと見えないってことになる。 俺が見つけるのは発見が可能なほど白い部分が大きくなったものだけってことで実際にはもっと多い可能性もある。

 この辺は巨竜から得られた蛇が卵を産んでくれればはっきりするだろう。


 アンジェがたこ焼き板を使っての作業をしてみたいようだったので白球内部にある液体を薄めた希釈調味料を貰おうとしたのだがまだ研究用にストックが足りてない状態でこっちには回せないとのこと、代わりに以前に0番地区から持ち帰っていたあるものを取扱許可が出たとのことでもって帰っていた。

 葉はすっかりしなびた上に乾燥しているが根茎が無事なら使えるだろう。


-*-


 日本あっちではまだ日中は暑く、体育祭の練習中に熱中症で倒れる生徒がいたなんてニュースが流れるくらいなのだが早くもコンビニのおでんと肉まんコーナーがお目見えしている。

 子供の頃に冬しかない肉まんを頬ばりながらどうしてこんな美味しいのに夏にも売らないんだろうと思ったもんだ。


 こっちではカレーパンが予想以上に売れているが味もそうなのだがパンの中に何か具を詰めて食べるという発想がないらしい。

パンそのものを切って間に具を間に挟むサンドイッチは普通にあるのに最初から中に入れ込んだパンが存在しない。 それもあってカレーパンが物珍しいそうだ。しかも焼いて食べるパンを揚げていることも拍車をかけてる。

 そのぶんカロリーは高いんであんまり食べ過ぎると困りそうだがこっちの人は歪門があったところでよく歩くのでそれほど問題にならないみたいだ。


 個人的に肉まんにあるようなふかふかの蒸しパンを食べて見たいのだが作り方がネットで見たところでベーキングパウダーなんてものがこの世界にないので諦めた。「ベーキングパウダー」って名前のわけはないだろうから異なる名前で存在してる可能性はあるが。

なので食感は全然違うがおやきを作ってみることにした。

 関西住みの自分にとって「おやき」って聞いても何それ?ってほどに普段接点がない食べ物なのだがTVで知った時に見た目だけは肉まんに似てるなあと思ったので覚えていた。作り方も小麦粉と塩と油があれば作れそうなんで暗記してきた。 最初は皮が出来たら具を包んで焼けばいいと思っていたのだが(TVでは囲炉裏に差して焼いていた。) どうやらそのあと蒸しても美味しいらしい。


 いつもの如く狩りを終えて帰ったあと赤髪亭の夜の営業時間前を利用して試作する。

問題は具なのだが料理済みの肉料理のほか野菜、そして許可が下りた0番地区採取の根茎を擦り下ろし、その味が予想通りだったことに満足して具に入れ込んでみた。

 肉と野菜、そして一つだけ他とは違った具を詰めてそれぞれ目印を付けて区別できるようにして調理を進める。今回は蒸さずに焼くだけにしてみた。

夜の仕込みをしていたマリアさんは俺が根茎を擦り下ろした時に調味料であろうと気が付いていたようだが完成までは聞いて来なかった。


 しばし後、出来あがったのは日本あっちの肉まんよりもやや小ぶりなおやき。

アンジェは氷の提供に中央に行ったまま帰らず、コーリンは今日はシクさんに呼び出されて不在。厨房にいるのはマリアさんだけでヴェガは夜の営業を手伝うならその時に部屋から出てくることが多く、仕込みの手伝いはあまり参加しない。

 だが今日の特別な一個はこの前に一撃を食らったお返しに作ったものだ是が非でも食べてもらおう。


「ヴェガ~、この前の試作ぼったこでお前の分は無かったから今日の試作はお前から食べいいぞ~。」


 2階に向かって声を掛けたあとに手を洗っているとヴェガが降りてきた。

相変わらずの無口だが昼寝をしていたのか寝癖が付いている。

見ているがいい、その眠気を吹き飛ばしてくれるわ。

三人分の果汁水を用意して席に着く。

見分けがつくように表面に傷を3本付けておいたものが、中身に野菜と摩り下ろした根茎をた~~~ぷりと詰めたものだ。


「これは調味料として使える奴なんですけどちょっと味が刺激的なんで付けるのはちょっとだけにした方がいいですよ。」


 そうマリアさんに声を掛ける。


 肉まんには醤油とかウスターソースとかしょうが醤油とか地域や家庭で様々なものが付けられるが俺は辛子だ。

こっちにも唐辛子があるようにそれをつかった辛みがある調味料があるのだが辛子やわさびは無かった。その風味をわずかに持つ野菜はあったが取りだして調味料として利用されていないという感じだ。 なので塩による塩辛さ、トウガラシによるホットな辛さ、それ以外にからし、わさびのように鼻に抜けるキクーっという辛さをもらたすものがこっちにも無いかと探してた。


 ちなみに大根おろしの辛さも含めこれら大根、わさび、カラシナはいずれもアブラナ科の植物だ。


 前々から刺激物を好むヴェガにその辛さを体験させてやろうと思っていたのだが期待していた0番地区の岩場近くを流れていた小さな川にはわさびはなかった。だが代わりになるものはないかとあっちのネットで探したものが山ワサビ。いわゆるホースラディッシュ(西洋わさび)である。

 日本あっちじゃ北海道みたいな寒いところで野生化しているらしいのでこっちの世界にあっとしても大森林にあるのか疑問だったがアブラナ科、モンシロチョウの幼虫が付いてる葉っぱ、のイメージがあるのでそれらしいのを引っこ抜いて持ち帰ったのがこれだ。

 正直ここまで同じ形態の植物で同じような味がするものがあると思わなかったのだが人間がここまで似てるし動物だってそんなにあっちに比べて異形じゃない、そう思って納得することにした。

後にこれはあっちの世界とは違って根茎部分よりも葉っぱそのもの方が辛みが強く、言ってみればわさびがなるカラシナという存在だったのだがそれが分かるのは後の話。


 マリアさんには肉詰めのおやきを推して自分は野菜を炒めたものを入れたおやきを、そしてヴェガにはお好みの刺激物たっぷりの特別製を置いて試食にかかる。

 擦り下ろした山ワサビを少しつけてほおばる。ワサビとはいってもあっちのチューブワサビのような緑色でなく、擦った生姜のような色をしている。

若干ざらついているが擦り下ろす金具の棘が大きいので仕方ないだろう。

辛子の代替としてはこれでも十分イケる。鼻から抜ける辛さに涙が出そうになる。それはマリアさんも同じのようで付け過ぎたのか目をつぶって堪えているように見える。


さーてヴェガの反応はどうかと思ったら。


「ん~~~~~~~~~~~っ!!」


と声が上がった。

見ると鼻を押さえて悶絶した後にコップの果汁水を一気に飲んでいる。


 どうやら刺激的と説明したのでかえってたっぷりと付けたようだ。彼女の前の小皿に置いた山ワサビが全部無くなっている。そりゃいくら濃い味とか辛いのが好きだからって無茶だ。


「大丈夫なの?」


 マリアさんがヴェガに声を掛けた後にこちらを向くが問題はない。それほど長く続く刺激ではないからすぐに収まるだろう。

自業自得とはいえこの刺激に対してこっちにまた報復が来るかもしれないので一応身構えてはおこう。

 そう思っているとヴェガは辛みの刺激で目と鼻を赤くしたままで山ワサビてんこ盛りのおやきを口に含む。そしてまた天を仰いで眉間にしわを寄せている。それを3回ほど繰り返して特製おやきは無くなった。


 マリアさんはヴェガが引き続き食べている様子を見て自身も試食を再開したが人を選ぶ調味料との感想だった。そりゃそうか日本あっちでも子供向けはサビ抜きの寿司とか普通だもんな。


 作ったおやきは肉入り3、野菜2、ヴェガ用1だ。もっと作ってもよかったが失敗して不味かったら無駄になるだけなので赤髪亭の人数分のみ。

生地はまだ余ってるので別のものを詰めてみるか焼いた後に蒸してみるかと立ち上がるとヴェガから手を引っ張られて厨房に入った。


「もっと、辛いの!」


 だそうだ。


「もっと辛くして欲しい」のかと思ったら「辛いおやきをもっと欲しい」ってことらしい。

許可用として都市に持ち込んだ山ワサビはサンプルとして抜かれた以外は返却して貰ったものの数は多くない。それを擦っていると横で全部の山ワサビを摩り下ろそうとしている。


「こらこら、ヴェガ。使ってもいいが一気に使うとここにある分しか在庫がないからもう食べられなくなるぞ?」


 そう言って注意したのだが聞く耳を持たず、結局全部摩り下ろして肉と野菜の具に山ワサビを一杯混ぜたヴェガ専用のおやきが出来あがった。

次は蒸そうと思っていたのだが焼き終わると我慢できないようでそのまま両手で抱えて脱兎の如く飛び出してしまった。

 

 「よっぽどヴェガには合う味だったのねえ。でも使うにしてもほんのちょっとでいいと思うんだけど。」


 やれやれ、まぁこの山ワサビならそれほど奥にいかなくても0番地区じゃみかけたから依頼を出せば小遣い稼ぎとして持って帰ってくる新人狩人もいるかな? 根茎だから日持ちもするし。



-*-



 集団共同墓地を兼ねた中央公園はほぼ円形をしている。

上から見ると中央に巨大な墓石を兼ねたドーム状の建物があり、その地下には死者の遺灰が巻かれている

公園は緑が多く、建物に向かって放射状に伸びる道といくつかの層のように環状に配された道がある。中央に向かう放射状の直線道路から環状道路に入って散歩すると同じような道の配置となる上、視界は公園の木々によって都市内の建物を見られないために目印に出来ず、迷ってしまうものが多い。

 年輪都市全地区の墓地であるので宗教的な参拝日がないとはいえ、思い思いに死者を偲んで訪れる者は数多く、相手の生前時を思い返しながらそぞろ歩くと迷子になる。 

 そんな人々を相手にするために地理案内を兼ねた屋台販売が行なわれており、果汁水やその場で軽く煮焼きする軽食が提供されている。そして中央にある建物の近くには飲食の屋台はないが献花目的に花売りの屋台がある。 

 年輪都市の再興からいる者たちには献花をする余裕がなかったのでその習慣はなく、他都市からの移民やその子孫が献花をしている程度のため花売りの屋台はそれほど大きくはなく、売り切れるか夕方前で店じまいとなる。

 

 父であるニーオンのいた都市では献花の習慣があり、共に訪れた時に寄ったこの屋台はその時に他の店舗を構えているところよりは安いことを知ったナージは献花とは関係なしで時折訪れる。

 優遇されている角付きは要望を出せば花も差し入れられるが実際に目で見て選ぶ方が楽しい。 都市から角付きに支給されているピプはこうして外で買い物をしない限り、不自由がないコミュニティでは使うことがないのでちょうどいい。


 夕方が近くなっていたがこの日はまだ花が残っており、薄い桃色と赤紫の花、白い花弁を下に垂らした花を束ねてもらって中央ドームを後にする。

この日も細めの藁で編まれた柔らかい麦藁帽子を帽子を被っていたが風が出てきたので脱いでみた。

 日が傾いて緑の多いこの公園とはいえ、西日の暑さで帽子の下は汗ばんでいたが帽子で押さえつけられていた髪が風でなびいて汗を冷やし、気持ちがいい。

 

 花の屋台が開いてるならこちらもまだ開いてるかと思っていくつかの角を曲がり、別の屋台による。

 そこでナージは黒っぽい色をした果汁水を頼む。 あまり食欲を沸かさせる色ではない、色が濃い某有名清涼飲料水みたいなものだ

 本来これは街中でなく、朝、大森林へ向かう狩人に好まれる果汁水で眠気を取るのとわずかな興奮を起こす成分がある。言ってみればカフェインに近いものだ。

 人口が少なかった頃はいわゆる覚せい作用のような成分を含み、ひっきりなりにやってくる巨獣に対抗するために疲労感じないようにさせる目的で飲まれたものもあったが今は習慣性と依存性により禁止されている。

 甘さが少なく酸味が強いその果汁水を時折飲みにくるのはコミュニティでの食卓ではでない果汁であることと何故か口に合う味だったせいだ。


 カップは使い捨てではないので飲んだら店に返却する。抱えた花を置いてゆっくり飲もうと近くにある公園のベンチに座ろうとすると隣のベンチに女性が座っていた。

 座ってるので背の高さは分からないがキーロよりも年上に見える。自分と同じショートだが自分のようなボブカットではなく、センターで分けてサイドは後ろに流している。だがなぜか後ろの髪だけを伸ばしてるのか束ねられて左の肩にのっている。

だが目を引くのは金髪のその髪は白っぽいように見える。そんな色かと思ったのだがどうやら光の反射のせいでそう見えるようだ。香油でも髪につけてるんだろうか? そしてこの場所に来てるくらいなので亡くなった家族を偲んでいるのか目が赤く、鼻を押さえている。


「大丈夫ですか?」


 余計なことかとは思ったがナージは声を掛けてみた。

するとその女性は初めてこちらに気付いたのかバツが悪そうにした後、大丈夫だと返してきた。

ナージは深く問うことはしない方がいいだろうと隣に座って果汁水を口に含む。 隣の彼女は横に置いたパンを口に含んだと思ったら目を瞑って咀嚼している。 かと思ったら果汁水をカブのみしたと思ったら口に笑みが浮かんでいる。なんなんだろうか?

 人の食事を注目するのは悪いと思いつつ、美女と呼べる女性の割には変わった所作をする人だなと思って盗み見ていた。

3つあった白いパンのようなものを2つ食べきった後、コップの果汁水は無くなったようだ。立ちあがって屋台に向かって歩いていく。

 やや身長は高め、この都市にしてはきっちりしたパンツスーツという感じ。だが彼女は新たに果汁水を注いでくるのではなく、コップを返却しただけのようだ。そのまま立ち去るのかと思うとこっちに向かって歩いてきた。


「心配してくれてありがとう。どうぞ。」


彼女はそう言って最後の一つのパン?を差し出してくる。先ほどの赤かった目も鼻も普通に戻ってるようで表情も硬い感じだ。


「いえ、構いませんよ?」


ナージは断ろうとしたが彼女は続いて彼女はこう言った。


「美味しいわよ? 貴女のお兄さんが作った料理。」


 ナージは彼女がお兄さんと言ったことに驚き、その間に彼女が差しだした小麦粉を練ったものらしいものを受け取った。

目線を特別製のおやきから彼女に戻したらもう彼女はいなかった。 明らかにおかしい。立ち去る足音も視界からこんなに早く消え去ることもあり得ない。屋台の主人に聞いたが確かに果汁水をナージの前に売った女性客はいたがすぐに立ち去ったという。

 

 疑念が浮かぶが彼女から受け取った兄が作った料理という物体は手のうちにある。

ニーオンから兄がいることは聞いてるが名を知らず、会ったこともない。おそらくは父か母の姓を名乗っているだろうということくらいだ。あの無骨な父ですら私と再会した際に会いに来なかったことを詫びていた。兄にも何か事情があるのだろうと思って尋ねたことはない。

 学校で一番仲が良いカコより渡された黒い宝石のネックレス。「キニダック」と言う人が作ったそうだ。それが名なのか姓なのか尋ねていないが年輪都市で姓を名乗るのは移民してきた住民かその子供くらいだ。

 カコに直接頼んだらはっきりするかもしれないがもしそれが兄だったとしてどうすればいいのかわからない。


嘘か真かは判断できないが兄が作った料理かと思い口に含んでみた。

結果は咽て果汁水をお代わりすることとなった。 


 


予想以上に4月からのゴタゴタで忙しいので前話と同様あとで追記すると思います


日常に入ってから食べ物ネタばっかりになってますがもうちょっと続きます




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