第1話 ぽん太くんの朝
はじめまして。『ぽん太くんは、がんばっています』をご覧いただき、ありがとうございます。
この物語は、小学三年生のぽん太くんが、家族や友達、先生たちと過ごす一年間を描いたお話です。
特別な冒険はありませんが、学校や家での何気ない毎日の中には、小さな発見や優しさ、笑顔がたくさんあります。
ぽん太くんと一緒に、季節の移り変わりを感じながら、一年間を楽しんでいただけたらうれしいです。
春川家の朝は早い。
「朝食の準備ができていますよ」
エプロン姿のリョウ子が声をかけた。
「はーい!」
ぽん太は二階から元気よく駆け下りてきた。
食卓には、父の惣太郎、母の祐子、姉の千春が待っていた。
「いただきます!」
朝ごはんは、焼き魚とみそ汁だった。
ぽん太はおいしそうに食べ始めた。
「よくかんで食べてくださいね」
リョウ子が言った。
「はーい!」
リョウ子は、春川家で家事を担当しているAIロボットだ。
人間そっくりの見た目で、料理や掃除、家族の健康管理までこなしている。
食事を済ませると、子どもたちはランドセルを背負い、学校へ向かう準備を始めた。
「忘れ物はありませんか?」
玄関でハル子が確認した。
ハル子は、春川家の執事を務めるAIロボットだ。
美しく落ち着いた雰囲気で、家族みんなから頼りにされている。
「今日は大丈夫!」
ぽん太が胸を張った。
「昨日は筆箱、一昨日は連絡帳、その前は上履きを忘れています」
「細かいこと覚えてるなあ」
「記録していますから」
春川家では、こんなやり取りも日常だった。
「いってきま〜す!」
小学五年生の千春がランドセルを背負って元気よく玄関を飛び出した。
「いってきま〜す!」
その後ろを、ランドセルが少し大きく見えるぽん太がついていった。
春川凡太。
みんなからは、ぽん太と呼ばれている。
小学三年生。
春川家で暮らす、ちょっと不思議な男の子だった。
「走ると転びますよ」
玄関でハル子が声をかけた。
「大丈夫!」
ぽん太は元気よく答えた。
三秒後。
玄関の段差につまずいた。
「あっ!」
ガタン!
「大丈夫ですか?」
「大丈夫!」
ぽん太は立ち上がった。
少しだけ膝をこすりながら。
「だからハル子さんが言ったのに……」
千春が振り返って笑った。
「今日は転ばない予定だったんだよ」
「予定って何よ」
二人とも笑った。
「いってらっしゃ〜い」
惣太郎が子どもたちを見送った。
「いってきま〜す!」
二人の声が重なった。
惣太郎は笑顔で手を振った。
「今日も元気だな」
続いて祐子が玄関に現れた。
「じゃあ、私も行ってくるわ」
祐子は警察署で働いている。
千春が生まれてから、捜査一課から総務課へ異動していた。
「いってらっしゃい」
惣太郎が笑顔で送り出した。
三人が出かけると、家の中は急に静かになった。
惣太郎は仕事用の上着を手に取った。
学校へ向かう道。
ぽん太は楽しそうに歩いていた。
その時だった。
ふいに立ち止まった。
「どうしたの?」
千春が聞いた。
ぽん太は道の向こうをじっと見つめていた。
「……あれ?」
「何かあった?」
「うーん」
ぽん太は少し考えた。
「なんでもない」
そう言うと、また歩き始めた。
でも、どこか気になるような顔をしている。
千春は首をかしげた。
「また『なんとなく』?」
「うん」
ぽん太は笑った。
「今日も、何かいいことがありそう!」
そう言うと、元気よく駆け出した。
「待ってよ!」
千春が追いかけた。
二人の笑い声が、朝の通学路に響いた。
今日も元気いっぱいに、新しい一日を始めた、ぽん太くんでした。
今回は、ぽん太くんや春川家のみんなとの最初の出会いでした。
ちょっとおっちょこちょいだけれど、まっすぐで優しいぽん太くん。
そんなぽん太くんが、これから学校や家族、友達との毎日を通して少しずつ成長していきます。




