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無色永劫~異端なる貴方へ贈る異世界生活~  作者: 餅宮 モッチー
第2章 『船と海とせせらぎと』
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第2章 #22 『探求と食欲』


「美しい悲鳴をあげてくれる」


「ァァ…」


恍惚とした瞳、満足気な笑みを浮かべ"食材"を切り刻む男。厨房にてシェフは1人大きな鉈を片手に自身よりも大きいまな板の上に乗った"食材"を捌いていた


「美食。美食。美食。この世万物は食に値するものであり、美しく盛り付けられるべき対象」


「あなたの流す涙も…あぁ完成した料理を宝石のごとく輝かせる」


 "食材"は命尽きるその瞬間まで絶望し、そして潰えた。見た光景は正に狂気


「あぁ、冷たくなっていく。仕上げていかないと行けませんね」


 男は名残惜しそうに指先で“食材”の頬をなぞる。


 その指は、まるで恋人に触れるかのように優しく――だが次の瞬間には、迷いなく肉を抉り取った。


「温度は命。冷めてしまえば、それはただの“死骸”だ」


 滴る血を指で掬い、舌で味わう。


 ぞくり、と背筋が震えるほどの恍惚が男の表情を歪めた。


「……やはり、恐怖が足りませんでしたね」


 ぽつりと呟く。


 足元に転がる"食材"を見下ろしながら、どこか不満げに首を傾ける


「もっと叫んでくれてもよかった。もっと壊れてくれてもよかった」

 

 鉈に付着した血を拭き取り、その輝きを取り戻した刃の側面を見つめ溜息をつく


「絶望は、最高のスパイスだというのに」


 静寂。


 血の滴る音だけが、やけに大きく響く。


 やがて男は立ち上がり、ゆっくりと振り返った。


「さて……次は、どなたにしましょうか」


 その視線は、次の“食材”を捉えていた。


 逃げ場はない。


 まるで最初から――次の“料理”は決まっていたかのように。


「安心してください」


 にたり、と歪む笑み。


「あなたは……もっときっと美しく仕上げて差し上げてみせますので」


《フレイム・ヘイト》!!



 炎の柱が男を包み込む。


「さぁて、お前さんたちさっさと逃げてしまいな!」


「あ……ありがとうございます!」


 囚われていた人たちは次々と逃げる



「せっかくの食材を…なんてことしてくれるんだい?」


「悪魔かてめぇは。人間を食いもんにすんじゃねぇよ」


「人間を食い物にしては行けない?なぜ?生きるために食べる。この世の生き物はそうやって命を奪う」


「あ?」


「それは人間も同じくしてそう。生きるために食べなければならない。だが!人間は感情を持つが故にその生きるために食べる命に価値を持ち、美化し、追究する!どれだけ美味しく食べられるのか…どれだけ満足できるのか!」


「………悪いな。俺ぁ食にこだわりがねぇもんで…」


「嘘は良くない。嘘はよぉくない!こだわりがぁなぁい?人間を食べ物にすることを否定的に見ている分際でなぁにほざいているのですかぁ?」



「あ?人間は食いもんじゃねぇぞ?馬鹿か?」


 そんな男の呆れ顔に淡々と答える


「馬鹿は君だよ。あぁ君ですよ。豚や牛…その他畜生は食べ物として命を奪うのに、同じ人間は食べ物として見ない。おかしいでしょう?私たち人間もまた同じ命。肉の塊では無いですかぁ?なぜ食物連鎖の頂点にたった気になって自分達を高く見る!そんなのかだから自分たちを食べるという発想に至らない!至れない!いいですか?この世万物は全てが食料!糧!美しく彩られるべきものなのです!そして私はそれら万物を平等に美味しく!調理するもの…」


恍惚とした表情。狂気。その男の服装は調理する者。そうシュフそのものであり、だが、返り血でその白い制服は赤く染め上がっていた。


「話長ぇよ。半分以上聞いてなかったわ。悪ぃな」


「マナーも悪いと来ましたか」


「馬鹿は要約できねぇから話が長い…とりあえずてめぇがクソ野郎なのは分かったから今からてめぇを心置き無く殺せる」


「命を奪うそして食らうことに対しては否定的なのに、武器を持つものは人の命を奪うことに対してはは抵抗が薄い。矛盾とは面白いものですね。そうですね。あなたを調理し矛盾をテーマに彩ることにしましょう」


「俺はなぁ、てめぇのような倫理観のねぇやろうが大嫌いなんだよ…」


「この剣にかけて、てめぇは殺すぜ?船上都市クラシン都市長直属護衛部隊副隊長『血狂い』グリル。いざ――」





 ぱくん




「――全く。私の周りにはマナーがなってない者が多すぎます。まだ調理前なのですよ?」


 溜息をつきながら、その胴を失い頭と下半身だけとなった肉塊が地を血で染めあげるものを見つめる。それは数秒前までグリルであった物だ



「遅いんだよ。いつもいつも…形にこだわりやがって……今日なんて晩飯に4時間かかってるからなぁ」


 ボサボサの長髪。片目は開かれてはいるが眼球がなく、痛々しい。服装は体に布を巻いただけのような風貌


「食は美しく、そして彩られたものであるべきなんですよ。お子さんには分からないでしょうが」


「僕がお子さんならあんたなんなんだよ」


「そういえば……グリルさんでしたっけ。私も名乗らねばなりませんね。」



「私の名前……いいえ、私たちの名前は『暴食』の咎人。大鉈の調理人のゼフ・ベルル」


「…………同じく『暴食』…アジ・ハエナ」





「死後もお見知り置きを――――」


 


 

 


 

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