↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Baseballスター☆ガールズ!  作者: ぽじでぃー
第七章 2回戦 ~vs河咲女子高~
PR
90/150

89話 これが全力!

 4回の表、2番の二宮から始まる打順。

 華園から投じられたジャイロボールは、二宮が繰り出したバットの根っこに当たった。


「いっ……!」


 ビリビリと手に痺れが残ったが、おかげで打球はうまい具合に三塁線へコロコロと転がっていく。

 ピッチャーの華園とサードがボールを追いかけてきたが。


「見送って!」


 キャッチャーの胡蝶が二宮の脚力を見てそう叫ぶ。

 そしてボールが止まったのは……白線の内側だった。


「へっへ、らっきぃー」

「ナイスバントですニノ先輩!」

「いや、ずっきー、普通に打ったんだけどねぇ」

「え? す、すいません、ピッチャーしか見てませんでした……」

「……」


 二宮がジト目でコーチャーの小鳥遊を見ると、小鳥遊は少し目を瞑り、息を吸い込んで。


「ナイスランですニノ先輩!」

「いや、やり直さなくていいからさぁ」


 続くのは、3番の一ノ瀬。


 先ほどの投山にわざとヒットを許したのとは違い、今回は想定外の事態らしい。

 ノーアウトのランナーをクリーンアップ前に出すのは、流石に問題だった。


 華園は帽子を深くかぶり直し、目つきを変える。

 一ノ瀬への初球。


 今までとは違う。

 いや、3回の表の最後、小鳥遊に投じた球に近い。


 ドン!

 というキャッチャーミットの音が一ノ瀬の腹に響く。


(これが……、全力ですのね。クイックですから120km/hは出ていませんけど)


 2球目はチェンジアップ。


 ボールが止まると先の打席で表現したが、先ほどよりもその感覚が増した。

 バットを出してから初めて、まだ球が全然来ていないことに気が付く。

 当然、フルスイングのバットが止まるわけもなく、空振りを喫する。


 そして3球目はライズボール。


 一ノ瀬のバットは球の下を擦り、外野フライに倒れた。


 ランナーの二宮にしても、フライでは動けない。

 そして、盗塁もできる気がしなかった。


(ゆっきー、頼むよ)


 一塁ベース上から二宮は目線で友希に思いを伝える。

 それに気が付いた友希も小さく頷く。


 友希に対する1球目も、120km/h近い球から入ったが。

 友希はそれに物怖じすることなく球を真芯で捉える。


 カキィン! と、快音が響いたが、振り遅れたためか一塁ベンチに強烈な打球が飛んで行った。


「うわぁ!」


 一塁ベンチで跳ね回る打球に対し、投山は横に飛んで躱す。


「危ないぞ友希! フェアゾーンは向こうなのだ!」

「そ、それくらい分かってるって!」


 もちろん狙ったわけではない友希は、投山の野次に対し恥ずかしながらも、口調を強めて返す。


「……桜、お主の席もここではないぞ」

「うわぁ! なんで紅葉が我に抱き着いているのだ!」

「お主が球を避けて抱き着いてきたんじゃろうが!」

「……あんたら、いい加減にしなさいよ」


 ネクストバッターズサークルで真中が眉を顰めながら小さく呟く。


 だが、面白くないのは真中だけではなく、相手投手の華園も同様だった。

 セットポジションではあるが、友希にとっては初めて見るはずの全力投球を、振り遅れたとはいえ真芯で捉えられたのだから。


「さすが。4番、だね」


 華園は胡蝶に対してサインを送る。

 球種やコースの指示ではない。

 ただ、これからは全力だと。


 今までランナーが出たときは、ストレートだけ本気で投げてはいた。

 だがライズボールもジャイロボールも、これからは全力で行くことを告げる、2人だけの秘密のサイン。


 だが粘られ、5球目のライズボール。

 友希はフルスイングし、球がバットに当たる。


「レフト!」


 キャッチャーの胡蝶が叫ぶ。

 一見すれば浅いレフトフライか、深めのショーツフライ。


 だが、華園には打たれた瞬間分かった。

 これは落ちる、と。


 その直感通り、打球はレフトとショートの中間にポトリと落ちた。

 ハーフウェイで打球の行末を見ていた二宮は二塁でストップしたが、再びチャンスが巡る。


「いえーい!」


 一塁ベース上でピースサインをベンチに送る友希とは対照的に、真中は厳かに打席に入る。


「……来たね。真中、さん」


 中学時代を知っている華園は、打席に入る真中を見て不敵にほほ笑む。

 友希にも見せた全力のサインを胡蝶に送る。


 もう、盗塁を気にすることもない。

 全力中の全力で、真っ向から対峙する。


 胡蝶がこくりと頷いて、華園はロージンバックをマウンドの後ろに投げ落とした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。