異国の地、星空の下で『ひまわり』のようなあなたを想う
条件:「ひ」「び」「ぴ」「ま」「わ」「り」を使用してはならない。
あら、こんばんは。素敵な夜ね。
ええ、ここには初めて来たの。よければ、おすすめのお酒を出してもらえる? 子どもには少し早いだろう? あははは、おじさんったら、冗談上手ね。あたし、童顔なだけなの。結構いい年齢だから安心して。うん、故郷は東国でね。いやさすがに国民全員が不老不死なんかじゃないと思うよ、たぶん。
それにしても、今日はずいぶんと賑やかね。へえ、豊穣の神へ感謝を捧げているの? ああ、ちょうど冬至だものね。あたしの古里では、ゆず湯に入って、南瓜を食べるんだけど。あ、おじさん、そこのお酒、もう一杯ちょうだい。違うって、あたしからの捧げものだってば。よその家に来といて、挨拶なしはヤバいもん。
こんなイベントがあるって知っていたら、親友も一緒に連れてくればよかったな。誘えばよかったのに? やだ、そんなの無駄よ。だって、親友は新婚さんだもの。こんな遠くに連れ出したら、旦那さんに怒られちゃう。
食べながら何を書いているのかって?
その土地ならではの名物を見つけたら、親友への手紙で教えることにしてるのよ。あたしはずっと根無し草なんだけど、あの子は深窓のお嬢さんだからさ。
おじさん、ここ最高ね。ご飯もお酒も美味しくて、ついつい住み着きたくなっちゃう。そんな、永住大歓迎とか言っちゃう? テキトーなんだから、もう。大好きだからこそ、一緒にはいられない。そんな運命だってこの世には存在するのよ。
うん、なんか背筋がぞくぞくする?
あちゃあ、もう時間切れか。ごめんね、そろそろあたしは退散するから。じきに良くなるよ、心配しないで。はい、美味しいご飯のお礼に、親友特製のお札をあげるね。お店に飾っておくといいことあるかも。
って、なに。ちょっと、その手を離してくれる? せっかくいい気分で帰ろうとしてるのに、見知らぬ男の相手をする気はないんだけど。やれやれ、みっともないよ。ナンパした女に相手にされなかったからって、ぎゃあぎゃあ叫ぶのは。
はあ、仕方がないか。なに、ぽかんとしてるの。ここじゃなんだから、あたしがあんたの家に行ってあげるって言ってるの。おじさん、警らとか呼ばなくても大丈夫よ。あたし、特殊体質だからさ。
ふん、好きなだけ鼻の下を伸ばしていればいいのよ。後で泣きべそをかいても知らないんだからね。
あたしは窮鬼。
親友をぞんざいに扱った公爵家は特大の災厄を食らっていたけれど、さあてこの男の身には何が起きるのかしら。楽しみね。
こちらの作品は、短編「屋根裏に追いやられた居候令嬢は、笑顔で屋敷を後にする。わたくしがいなくなってから没落したと聞きましたけれど当然でしょ。だってわたくし、そもそも座敷わらしなんですもの。」(https://ncode.syosetu.com/n6258hy/)の貧乏神視点です。単品でも楽しめますが、先にあちらを読むとより楽しんでもらえるかと思います。
※窮鬼とは、貧乏神のこと。




