↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リポグラム短編集〜『あい』を失った女〜  作者: 石河 翠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/74

『プロポーズ』は突然に

条件:「ふ」「ぶ」「ぷ」「ろ」「ほ」「ぼ」「ぽ」「お」「ぉ」「す」「ず」を使用してはならない。

 りんごん、りんごんと鐘(かね)が鳴(な)る。歌劇(かげき)ならめでたし、めでたしの場面(ばめん)。そんな結婚式(けっこんしき)を物陰(ものかげ)から見(み)ている奴(やつ)が私(わたし)だ。明(あき)らかに怪(あや)しいのはわかっている。でも、どうしても見(み)たかったのだ。


「どうしてここに!」

「ちっ」


 面倒(めんどう)なのに見(み)つかった。まあこんな場所(ばしょ)でこそこそしていたら、悪目立(わるめだち)ちしても仕方(しかた)がないか。


 何(なに)やらまくしたててくる友人(ゆうじん)――元友人(もとゆうじん)か?――をそのままに、家路(いえじ)につこうとして失敗(しっぱい)した。その手(て)を離(はな)せ。私(わたし)なんかが来(き)ていることがバレ(ばれ)たら、せっかくの式(しき)にけちがつくじゃないか。


「あいつに会(あ)っていかなくていいのか」

「なあに、せっかくの結婚式(けっこんしき)を台無(だいな)しにしたいの?」

「あんな自己犠牲(じこぎせい)に満(み)ちた作戦(さくせん)を取(と)った君(きみ)が? 結婚式(けっこんしき)を台無(だいな)しに? 冗談(じょうだん)はよしてくれ」

「自己犠牲(じこぎせい)だなんて、ただの偶然(ぐうぜん)よ」

「偶然(ぐうぜん)で、政治的(せいじてき)な癒着(ゆちゃく)と膿(うみ)が一掃(いっそう)され、君(きみ)だけが悪名(あくみょう)をはせることになると?」


 まったく、忌々(いまいま)しい。今(いま)さら蒸(む)し返(かえ)してくるなんて。


「目(め)に物見(ものみ)せてやりたかっただけだから」

「あいつの嫁(よめ)さんも、礼(れい)を言(い)いたがっていたぞ」

「勘弁(かんべん)してよ。勝者(しょうしゃ)の余裕(よゆう)とか趣味(しゅみ)が悪(わる)いわ」

「まったくひねくれてるな、君(きみ)は」

「けっ」


 どんなにあがいても、大切(たいせつ)なひとの隣(となり)に立(た)つことは叶(かな)わない。ならば、せめてまともな女性(じょせい)と結婚(けっこん)していただきたいではないか。性悪(しょうわる)なうちの妹(いもうと)など話(はなし)にならない。


 だから、家族(かぞく)への嫌(いや)がらせついでにちょっと頑張(がんば)った。ただそれだけのことだ。


「君(きみ)のそういう意固地(いこじ)さが可愛(かわい)らしいよ」

「あっそ。じゃあ、哀(あわ)れな平民(へいみん)にちょっとばかり恵(めぐ)んでくれる? ここに来(く)るための足代(あしだい)で、今月(こんげつ)の生活費(せいかつひ)が消(き)えちゃったわ」

「足代(あしだい)だけでいいのか。食事(しょくじ)も部屋(へや)も、アクセサリー(あくせさりい)だって靴(くつ)だって用意(ようい)してやるさ。一生(いっしょう)な」

「はいはい、どうもありがとうね」


 なんだ一生(いっしょう)って。できもしない約束(やくそく)なんかして。馬鹿(ばか)にしているのか。


「そんなこと言(い)っていると、財産(ざいさん)を食(く)らいつくしてやるわよ」

「よし、言質(げんち)は取(と)ったぞ」

「ちょっと、この指輪(ゆびわ)はなに? 勝手(かって)に他人(たにん)に魔道具(まどうぐ)をつけるとか、警察(けいさつ)を呼(よ)」

「もう他人(たにん)じゃない。君(きみ)は今(いま)から、わたしの妻(つま)だ」

「かわいそうに。あんた、こ(・)こ(・)の病気(びょうき)だったのね」

「今(いま)さら気(き)がついたのか。昔(むかし)からわたしは君(きみ)に狂(くる)ってるのに」


 初恋相手(はつこいあいて)の結婚(けっこん)を祝(いわ)いに来(き)たつもりが、腐(くさ)れ縁(えん)の友人(ゆうじん)に娶(めと)られてしまった。その強引(ごういん)さを許(ゆる)せる程度《ていど》には、友人(ゆうじん)のことを好(この)ましく感(かん)じていたのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。