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愚策者に銃声を


木島「…お前、飛べるのか?」

海「ん?ああ…。先行っててくれ、チャージにちょっと掛かる」

二人は疑問符を浮かべながらも、その言葉に従い飛び立った。

………

木島「なぁ、転送装置の周り、どうなってると思う?」

a「…どうでしょう。誰か、力を持った人が邪魔な人を殺し回ってたりするんでしょうか」

木島「まっさか。この辺りはまじで強えのいねぇからな。んなやつはいないと思うぞ。武器だって出せねぇし」

なんてことを話すこと一分、速度は中々出ている為、もう一分程で着くだろう。という時に

海「ぉぉぉぉぉ」

後方から海の声がした。減速し、その声に振り返ろうとした丁度その時

海「お先いいいいいいいいい!!!」

一瞬、視界を何かが通り過ぎて行った。…それは、吹き飛ばされているようにも見える海の姿だった。

海はギュン!とaと木島を追い越して行くと、ぃぃぃぃぃ……。と、悲鳴のようなものを残しながら飛び去って行き、やがて完全に見えなくなった。

木島「な、なんだったんだ…?」

a「さ、さぁ…?」

海が消えて行った後を見つめている木島を、チラリと伺う。…木島はあまりのことに、アングリと口を開けた間抜け面を晒していた。

a「ぷっ…」

木島「な、なんだよ」

笑い声を聞き取り、木島が不審そうに向き直る。

a「いえ。…凄い、なんといいますか…面白い顔をしていたので」

くくく…。と笑いながらそう言ったaに、恥ずかしくなったのか木島がコートの袖で口元を隠す。

木島「な…。はぁ…。早く行くぞ」

呆れたように溜息をつき、なんとか落ち着いた木島は、先程までよりも早く、再び飛び出した。…それが照れを隠すためのように見えて、更に笑いが込み上げてきたが、なんとか堪える。

a「あ、ちょっと、、待ってくださいよ!」

木島を追うようにaも翼を一度大きく広げ、一気に加速した。


忘れていたのかもしれない。どうやって笑っていたのか。

思いの外呆気なく、凝り固まった表情筋にヒビが入った。…だが、その石のように固まった心は…まだ完全には崩れ去らない。いや……もしかしたら、崩れることなく終わってしまうのかもしれない。


ふわり、と転送装置の改札?を見渡せる、大きな屋敷の屋根に着地する。

転送装置がある空間へは、駅の改札すぐ隣にある魔法陣から入ることが出来る。その魔法陣に入ることは1人ずつしか出来ず、誰かが入っている時には魔法陣は反応を示さない。

混雑回避の為、その空間に入ってから五分経過すると弾き出されはするが、手続きに3分ほど掛かる。

各駅にあるため、数もそこそこあり、そこまで不便ではないのだが、運が悪いと並ぶ羽目になる為、普段の使用者はそこまで多くない。


海「っふぅ…。ここにいたのか」

海が、転送装置側からは影になっている位置から水柱に乗って現れた。

木島「…なんでボロボロなんだお前」

海はというと、枝やら草やら、所々制服が切れてたりとボロボロになっていた。

海「ああ…。上手く減速できなくて、そこの木に突っ込んだ」

海が指差したのは屋敷にある、一本の大きな大樹だった。そしてその大樹に、人1人分ぐらいの、どこか不自然な穴が開いていたことにも木島は気付いた。


さて…。と、2人が視線を改札に移す。高さは少し此方の方が高い程度であり、改札全体が見渡せた。

そこには1人の、警官であろう格好をした男が立っていた。

警官「もうこれ以上出せる奴はいねぇのか!?」

一般的な警官が持っているようなハンドガンを右手に携えた警官が、怯える被害者達に対して青筋を立てながら、一発天井に向けて発砲した。中には顔が膨れ上がり、血を流している者もいる。警官に殴られたのだろうか。

ひっ!と震える被害者達、隕石の恐怖も相まって、どうしたらいいのかと混乱しているのだろう。


木島「…ふーん。なるほどなるほど」

うんうん、そういう奴もいるよな。と納得しているように頷く木島、特に何かを感じたわけではないようだ。


a「…警官が、1人?他の警官はどうしたんでしょう」

遅れてやってきたaが着地し、2人に同じく改札を眺める。

木島「さぁ?避難の呼び掛けだとか、他の駅に行ってるやら、色々あるんじゃないか?」

海「…それよりも、助けるのか?」

口元に手を当てて考え出したaを、海は見つめる。まるで見定めているようだ、と木島は2人を眺めていた。

a「…もう少ししたら、ですかね。この後、状況打破のために何かしらするのかも気になりますし。あと、武川さんはこの駅から、向こうの世界に逃げてもいいんですよ?」

海「…いや、俺も興味あるし。どうせa、あの隕石止めるんじゃないか?」

自信満々、心配事なんてない。といった様子でそう言い切った海に、ふふっ、と笑みを返す。

a「どうでしょうね?いざとなれば私は遠くに逃げちゃえばいいだけですし」

それぞれの考えを胸に、三人は再び視線を改札へと移した。


警官「よし、じゃあお前、早く寄越せ」

男性a「は、はい…」

座り込んでいる20人ぐらいと、血に沈んだ一人の男、服装から見て、この男と同じ、警官なのだろう。

男性aと、1人の小さな…小学2年生ぐらいの少女、恐らく男性aの娘であろう、が一歩前に出て、男性aがメニューから現金の束を出現させ、男に渡した。


海「うわすげぇ量、あれ幾らぐらいあんだろうな」

木島「…5千万はあるな」

はぁ〜すげぇ、とまるで他人事のように木島は見つめていた。

…大体どういう状況なのかは解った。

警官二人組みが混雑してるであろう改札の整理に来た。

恐らく取っ組み合いの争いになっていたのだろう、実力のない者同士が集まっている為、魔法も無ければスキルも無い。なら銃を持つ自分が一番強い、となり、混乱に乗じて金稼ぎ、と、言ったところだろう。…あくまで推測だが。

少女a「お父さん…」

男性a「向こうへの手続きの仕方は解るね?早く行きなさい。他の人も待ってるから」

少女が、改札には雰囲気が合わない、少し異端な光る床の上に乗る。するとメニューウィンドウが現れ、それに触れると、少女が消えた。床の光の色が、使用中を表す赤色になるのを確認すると、男性aはほっと胸を撫で下ろした。

警官a「んじゃあ次、こん中で今すぐ1000万出せる奴〜」

お互いに顔を見合うだけで、手を挙げる者はいない。

警官「はぁ…?てめぇら、誤魔化してんじゃねぇだろうな?」

ちっ!と警官が舌打ちをした所で……一人の男子高校生が、スッと自然に立ち上がった。

警官「おいてめぇ!誰が動いていいっつった!」

何考えてやがる…と訝しげに睨み、その生意気な子供の態度に、殺意を剥き出しにしていた。

生徒a「ここにいても、俺は助からないだろ、金ねぇんだし。じゃあ精々最期を楽しもうと思った」

良いだろ?金出す気ねぇ奴は見逃してくれよ。笑いながらそう、チャラい、調子に乗った笑みを浮かべた生徒a、彼はいつだかライにホームランを浴びせた生徒なのだが…そのことを知る者が居るわけはないし、今この時、それはどうでも良いことだ。

警官aが舌打ちをもう一度しながら、銃口を生徒aに向けた。

生徒a「ぉいおい、まさか撃つのか?そしたらみんな逃げ出すぞ。お前に殺す気があるって思うんだから。…んじゃな」

警官aに背を向け、ポケットに手を入れながら歩き出した生徒a。

彼の精一杯の知恵が詰まったその策に、拍手代わりの銃声が改札に響き渡った。

そして、その拍手(じゅうせい)を受けた彼の頭部から、赤い鮮血が溢れ出し、改札に二つ目の池を作り出した。



お待たせしました。そういえば、α、をaと書いていることに対してなにも追記していませんでした。

aの方がすぐ書けるから、というだけで特に意味はありません。勘違いさせてしまっていたら申し訳ありません。

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