彼女が生まれた理由
「、、、何から話そうかな」
話そうと決めたはいいが、より納得してもらえるよう、順序を考えなきゃな
「そうだね、、、自分達がいた世界の人の姿ってね、ここの世界の人程綺麗な人があまり多くなかったんだ」
リアルでの、クラスの女の顔を思い出し、溜息をつきながらもそう話し出す
「でもね、そんな中でも可愛い子もいた、、、けど、ロクな人がいなかったのね」
少なくとも自分の周りは、ね、と夢を余り壊さない様に付け加え、フィアは話を続けていく
「自分の可愛さに気づいて酔いしれている子、男を取っ替え引っ替えして遊ぶ子、可愛くない子を虐める子、香水を着けてる臭い奴、、、ロクな世界、人じゃなかった」
鼻がいいから、ちょっとでも結構敏感なんだよね、とフィアは苦笑いを浮かべる
「、、、正直言うと、あんまり人を好きになれないんだ」
「もし仮に自分が好きになるような人が居たとしたとしても、、、その人はもう婚約者がいるだろうしね」
自分でさえ好きになれる様な人を、、、そこらへんのイケメンが、みすみす泳がせておくだろうか
なんてことまで言うのは二人には刺激、ショックが強いかもしれないから言わないけど
「この人こんなこと言ってるけど、本当はこう思ってるんじゃないか?なんて、考え出したらキリがないようなことまで考えちゃう」
人間不信ってやつかな、最近は割と収まってきてるけど
先程から苦笑いしか浮かべないフィアを見て、二人は何を感じたのだろう、先程から抱きついたままのティアの横から、シアもフィアに、、、そっと抱きつく
シア「、、、ごめんなさい、なんて言葉を掛ければいいのか、、、解りません」
そう言いつつも抱きしめてきたシアに、僅かに感動を覚えたのは言うまでもあるまい
「いいや、ありがと、、、まぁそういう訳だから、、、ごめん、騙してて」
ティア「ううん、、、あ!じゃあ私ね!フィアお兄ちゃんが私のこと好きになれるように頑張るからね!」
素直な、曇りの無いティアの言葉
ティアの予想外の言葉に、フィアは思わず二人をキツく抱きしめていた
ティア「そういえばフィアお兄ちゃん、、、お姉ちゃんって呼んだ方がいいの?」
フィアがティアの髪を洗ってあげていると、ティアが唐突に尋ねてきた
「ん〜、そうだね、お兄ちゃん、って呼んでほしいけど、世間的にはお姉ちゃんの方が自然だからね、お姉ちゃん、でお願いするよ」
因みにシアも風呂に誘ったが、無論断られてしまった
風呂を上がり、のんびりとしていると、例の少女が起きたとのことなので、三人は見に行く
ライは子供が苦手だから、クロは怖がらせる可能性がある為、置いていく
7歳ぐらいだろうか、、、これぐらいの子供は、すぐ泣いてしまいそうで、多少緊張する
「おはよう、、、えっと、言葉、解る?」
宇宙からの使者、、、なんてものだったら、コミュニケーションを取るのさえも困難だろう
??「、、、私は、、、誰?」
なんて、テンプレ的な台詞を言う少女に、二人は驚愕の表情を浮かべる
「、、、まぁ、空から落ちてきたんだから、ショックとかで記憶が抜け落ちたのかもしれないね、、、シア、この子の記憶が蘇るまで、、、この宿に住まわせてくれないか?」
ある程度予想出来ていたのか、二つ返事でシアが了承してくれた
「えっと、名前、、、解らない?」
フィアの問いに暫く少女は頑張って思い出している様子を見せていたが、残念そうに小さく首を振る
「じゃあ、何か覚えていること、ない?」
続く質問にも暫く少女は考え
少女「、、、星を、、、見ようとして、、、それで、、、」
星を、、、見ようとして、、、落ちて来た?
何かを思い出しそうだったが、少女が突然頭を押さえる
「ご、ごめん、無理に思い出すのは良くないから、ゆっくりでいいよ」
はい、と痛みを堪えながら小さく呟くように言う少女が落ち着くのを待った
痛みが収まって来たのか、ふぅ、少女が息をついた所で、ティアがふぁ、、、と欠伸をした
「今日はもう遅いから、、、ゆっくり休んでね、おやすみ」
はい、と少女の返事を聞き、三人は部屋を後にした
メア「成る程ね、、、だからそんな格好なのね」
初めて会った日から、メアはちょくちょく夢に出てくる為、夢の中の奇妙な感覚にも、フィアはすっかり慣れてしまっていた
「聞いてたのか、、、まぁそういうこと」
恐らく性別の話を聞いていたのだろう、てっきりとっくに知っているのかとも思ったが
メア「まぁ私は別に貴方が男だろうと女だろうと構わないんだけど、、、」
プイっとフィアから背を向け、腕を組む
、、、優しいな
メア「べ、別に優しくなんかないわよ」
やはり、とフィアはメアが心を読んだことに驚きもしなかった
恐らく夢の中であるこの空間の中では、やはり自由が効きにくいというかなんというか、、、思ったことは、無意識のうちに話してしまっているのかどうなったのか、メアに全て伝わってしまう
メア「取り敢えず、あの子どうするの?」
メアが露骨に話題を変える
「まぁ、、、助けたいとは思うけど」
メア「ふぅん、、、それは、ゲームだから?見返りを期待してるから?」
見返りを期待してるから、、、ねぇ
この手の季節限定イベントの報酬っていうのは、あまり期待してない。
使えるとしても、ユニークスキルとかみたいになるだろうし
それよりも
「、、、リアルでは、こういったイベントに出会えたことなんてないからさ、、、ただひたすらに、のうのうと人生を貪っていたんだ」
でも、この世界に来て、、、俺は沢山の、リアルのままじゃ想像出来ないようなことをやってきた
「それが、無性に嬉しかった
生きてる、って感じた」
、、、単純な表現だな
メア「、、、単純な表現ね、、、だけど、、、嫌いじゃないわ」
心を読んだのだろう、メアがそう言った
「だから、楽しい?って言い方は失礼かもしれないけど、、、色々なことをやりたい、だから、、、助けたい」
メアはフィアの返答を聞き、予想外、驚いた、といった表情とは真逆な、やはりそうくるか、と言うような笑みを浮かべた
メア「そう、、、気が向けば手伝ってあげるわ」
プイっと顔をメアが照れくさそうに顔を背ける
、、、やっぱりいい子だ
メア「だから、違うって言ってるでしょ!」
 




