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『手作りハンバーグ』

あらすじ

北海道ロケの出発を翌日に控え、サランはシウのために夕飯の和風ハンバーグを作り始めます。亡き母を理想の女性像とするサランは、シウに買ってもらった高級包丁でドラマー気分で玉ねぎを刻み、即興の歌を歌いながら、口で「パチパチ」と音を立ててリズミカルに肉の空気を抜くなど、お茶目で健気な姿を見せます。

いよいよ

『冬の海と窓際のジウ』のロケへの出発が明日にせまった頃。

サランはそれらの事を考えながら、猫のおもちゃで『マシロ』と『でんすけ』と遊んでいた。

二匹で遠慮しあい、協力したりして、毛皮を追いかける姿が愛おしい。

サランはシウの為に夕飯の準備をしようとキッチンに向かった。

サランは甲斐甲斐しい女性を演じている訳ではなく、

母親が良妻賢母であったのだ。

幼い記憶から理想の女性はいつも中村綾であり、

理想の女優は舞台女優の涼風小鳥である。

いつかの日記にシウが

洗濯物を畳むサランが好きだと書き残していたが、

サランには当たり前のことであった。

そんな理由から、同年代の女性は爪を伸ばしていたり、付け爪をしているが、

サランは深爪女子である。

ストレスが多い思春期だったので、爪を噛みたくなる癖を防ぐ意味もある。

マニキュアはクリアのみ。

エプロンを締めると、使い捨ての手袋を装着した。

「今日は手ごねの和風ハンバーグを作るよ!」

足元に来たマシロに声かけた。


「ハンバーグ~ハンバーグ~♪」

即席のハンバーグの歌である。歌詞はハンバーグ100%であった。

玉ねぎの皮むきから始める。

そして包丁を取り出し得意の微塵切りに突入する。

シウに良い包丁セットを買ってもらったのである。

堺一文字光秀のハイダマスカス鋼のフルセットである。

両手に持って剣舞の舞をするが、ソン・インナの前でやると叱られるので、

2丁踊り切りだけで押さえている。

気分は伝説のロックバンドのカリスマドラマーな気分で微塵切は絶好調である。

少々細かく成り過ぎたが、シウは優しいので許してくれる。

フライパンで微塵切りを炒めて、パン粉、牛乳、卵、だし入り味噌を用意した。

冷蔵庫から取り出した合挽き肉をボウルの中に肉を落とす。

だし入り味噌を小さじ一杯入れて、まずは肉だけでこねる。

炒めた玉ねぎの微塵切り、パン粉、牛乳、卵、酒小さじ1杯

「これでお肉が、ふっくらフワフワの天使になるのです」

サランが再びこね上げ、まとまったタネを両手で丸める。

「ここからが大事。手のひらにパチパチと叩きつけるようにして、中の空気を抜くんだ。空気が残っていると、焼いたときに割れて肉汁が全部逃げてしまうからね」

マシロが不思議そうに、サランを見上げている。

「パチ、パチ、パチ、パチ!」

リズミカルな音が響く。

肉を叩く音もしているが、口でもパチパチ言っている。

意味や効果は無い。

シウが居る時はいつもテーブルからこちらを眺めているが、まだ帰って来ていない。

成形したタネの真ん中を、サランは親指で「きゅっ」と凹ませた。

冷蔵庫から、ブロッコリー、ニンジン、アスパラと先ほどの玉ねぎの残りを、取り出す。

鍋に水を入れ、残りの煮詰めた出し汁を投入した。

切った野菜を順次、入れていく。

御飯が炊き上がったお知らせが鳴った。

「今日。お酒飲もうかな?適当なお酒」

上善水如があったので冷蔵庫に入れた。

ベーコンを出して小さめにカットして、添え物の野菜は茹で上がったので取り出した。

煮汁は一度、フィルターに通してもう一度鍋に。

ベーコンと茹でた玉ねぎ、チキンキューブを1つとコショウを少し。

「お肉をフライパンへ。最初は中火で、綺麗な焼き色をつけるんです」

ジュウウウウ、と小気味よい音がキッチンを満たし、

肉の焼ける香ばしい匂いが漂い始める。

焼き色がついたらひっくり返し、シウがすかさずフライパンに少量の酒を回し入れた。

そのタイミングで、シウが帰ってきた。

「ただいまー。わあ。美味しそうな匂いだね」

「お帰りなさい。」

「着替えてくる」

「はーい」

換気扇を忘れていたけどご愛敬。今着けた。

「ここで蓋をして弱火にする。蒸し焼きにして、中にじっくり火を通すんだ」

ガラス蓋の向こうで、ふっくらと膨らんでいくハンバーグ。

「今日は和風。醤油、みりん、酒、そして少しの砂糖を合わせた特製タレを、ハンバーグを取り出した後のフライパンで煮詰める。肉汁が溶け込んだ最高のソースになるよ。おいしくなぁれ!」

焼き上がったハンバーグを皿に盛り付け、その上にこれでもかと山盛りの大根おろしを乗せる。

仕上げに刻んだエゴマの葉を散らし、とろみのついた和風タレを上からたっぷりと回しかけた。

「マシロできたよ。手ごね和風おろしハンバーグ」

テーブルにどんどんセッティングする。

シウはなぜか急いで降りてきた。

「お酒冷やして置いたの。冷蔵庫に入ってる。グラスは冷凍庫に」

「了解。グラスだすよ」

箸を入れると、肉の表面から溢れんばかりの透明な肉汁がじゅわっと溢れ出し、

大根おろしを優しく濡らした。

口に運んだシウは、一瞬だけ目を見開いた後、幸せそうに頬を緩めた。

「んん〜〜っ! 肉がとってもジューシーで、いくらでも食べれる!」

「3つ焼いたから、おかわりあるよ!」

サランは優しく微笑みながら、シウのの美味しそうに食べる姿を見つめる。

その横では、匂いに釣られたマシロとでんすけが、足元で小さく「にゃあ」と鳴いていた。

「ああ。ごめん、ごめん。にゃんズもごはんだね」


今後、記載する表現に関して、常識に基づいて気をつけて参りますが、

もしもを考慮して15歳未満閲覧非推奨を設定させて頂きます。

こちらに何か落ち度がございましたら、お知らせ願います。


※作中のメインキャラクターは日本語も韓国語も話せる設定となっておりますが、読む側を考慮して日本語表記にしております。キャラクター達は場面に応じて言語を使い分けているとご理解願います。


参考データ

※ユン・シウ…小説家25歳

※カン・サラン…女優志望のアルバイト20歳

※ソン・カナン...女優。カン・サランの芸名。ソン・インナに名付けられた。

※ソン・インナ…女優、シウの母親

※ユン・ジュンソ...シウの父。総合映像制作会社S.S.Iの会長

※ユン・ヒョヌ...シウの異母兄。ソヒョン・チョヨンの恋人。S.S.Iの後継者

※イ・ソジュン...シウの親友。Juringエンター専務。子犬の幼顔と低音ボイス

※イ・ウジン...映画監督。『残酷な美しさ』『私にキスできますか?』

※パク・ドユン...映画監督。シウの親友。Juringエンタ常務。映像制作部部長。

※イ・ダイン...『私にキスできますか?』ヒロイン

※キム・ソヒョン...シウの元恋人『Love Hunt』プロデューサー。

※キム・ソンミン...キャサリン。薔薇組第二夫人。数千万ウォンの身体を誇る

※ハン・チョヨン...女優『私にキスできますか?』イ・ダイン役

※ハン・ジヨン...女流写真家。奇跡の1枚を撮る「アメイジングメーカー」

※ナ・ジウ...薔薇組音響アシスタント。通称小枝。


※虹の薔薇組...ドユンのハーレム軍団。精鋭撮影チーム。

※佐藤直樹...ユン・シウの祖父。伝説の投資家。

※佐藤志乃...ソン・インナの本名。

※天翔樹林...ソン・インナのシルフィード歌劇団時代の芸名。

※涼風小鳥...中村綾。サランの母親。

※中村綾...サランの母親

※トリニティG...韓国最大の財閥グループ

※S.S.I...総合映像制作会社

※Juringエンタ...芸能事務所兼資産管理会社。会長インナ。社長シウ。

※アトリエ・ノア...中堅芸能事務所。サランことカナンが所属していた。

※『Love Hunt』…ネット配信の恋愛リアリティ番組

※『私にキス出来ますか?』…シウ作の小説

※『ずっと僕は君を』…シウ作の小説

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