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第2話 消える鼓動に口付けを

俺は、どこからか微かに聴こえる泣き声で目を覚ます。


「誰が泣いてるんだ…?」


気になった俺は寝返りを打つフリをして、泣き声がする方向へ向いてみる。

そして恐る恐る目を開けると………そこには、衝撃の光景が広がっていたんだ。


なんと、例の遺書もどきをアリアにばっちりと読まれていた。

この出来事を地獄と言わずして、なんと言おう。


(あっ!やべぇ…隠すの忘れてた…やばいどうしよう…)


焦っていると、泣いていたアリアが遺書を持って部屋を出て行った。


蚊の飛ぶような、か細い声で何かを呟いていたが、気にしてる余裕はねぇ。


……あの時、片付けていれば。


だが、今更悔やんでいても仕方がない。

過去に起こったことを変えるのは不可能さ。今やれることをやるしかない!


「何するんだ…?まあいいや。逃げるんなら今のうちだろ…」


俺はベッドから急いで起き上がり、服を着替える。


下では皿が落ちて割れる時の甲高い音や、何かを漁る大きな音が連続して響く。


(うっさいな…もう少し静かにしろよ…)

何をしているのかは知らないけど、少なくとも良い物を探してる様子ではない。


俺はベッドから(いしゆみ)にでも弾かれたかのように飛び起きて、クローゼットから服を出す。


「やばいやばい…早くここから脱出しねぇと!」

その思いが、今の俺を動かすエネルギーと化していた。


着替えが終わって、次は財布やスマホなどの大切なものを鞄に入れる。


少なくとも、通帳と財布、スマホとカード類を置いて行くことは不可能であった。

準備が終わり、予備の靴を履いて窓に手をかける。


「えーっと…大体10mぐらい、か?まぁ高いな…」


窓から下を見下ろすが、改めて見ると、断崖絶壁から飛び降りるような思いだね。

高所恐怖症じゃなくて本当に良かった……。


冬特有の冷たい外気が頬を撫で、思わず身震いした。

下を見ると、暗黒に包まれた空間のような幻覚が見える。ついに俺も末期か。


その瞬間、背後で部屋の扉が開く音が耳に飛び込んできた。

ビクッとして一瞬固まる。冷や汗が滝のように背中をつたっていった。


恐る恐る後ろを振り向くと、アリアが立っていた。

「ひっ…!」


びっくりして悲鳴を上げる。幸運なことにアリアは反応してこなかった。

しかし、雰囲気が尋常ではないんだ。


この世に存在してはいけない、地獄から来た亡者のような雰囲気を出している。

更に、俺を見ているのか上を見ているのか知らないが、焦点があっていなかった。

ああ怖い怖い。


ここだけでも十二分に怖いけど、もっと戦慄するのはここからよ。

日本語とは似つかないよく分からん言葉を、念仏のように延々と呟いていたんさ。


手はだらんと垂れ下がり、血がついた出刃包丁が握られている。

顔は無表情で、まるで幽霊にでも取り憑かれたような状態さ。


上の空で、何かすごい物でも見てるような感じ。

こりゃ笑い事じゃないね。


初めてみる光景に、恐怖を覚えた俺は一歩後退る。

その瞬間。突然、アリアが包丁を振り翳して突進してきたんよ。


過去一びっくりした俺は、思わず飛び上がった。

しかし、窓枠に乗ってた俺は足を滑らせて、そのまま落下してしちまったよ。


「あっ…やべ!助けて!うわぁぁぁぁぁ!!」

思い切って手を伸ばすが、何も掴めずに空を切るばかり。

そのまま頭から落ちていく間に、どんどん地面が見えていく。


死に際に流れるという走馬灯とやらが、流れることはない。

そして、落ちている時間はやけに長く感じていたね。


咄嗟に体を丸めて、衝撃を和らげようとした。

しかし、その行為も無駄だと知るのはすぐさ。


頭を強く地面に打ちつける。

俺の視界は一瞬の内に暗転して、意識は闇へと沈んでいった。

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