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狐と狸のばかしあい

キューピーと海丸くんたちの学校での話.


ここではあえて、小学校か、中学校か、高校かということは述べない.

私立か、公立かということも言わない.


なぜなら、それは、実在の学校であった場合、ファンが押し寄せて、大変なことになるかもという心配からである.


この物語は全体にそうである.ファンの襲撃に備えて、場所を明かさない・・・


だか本当は違う.物語はこの世の中での出来事とは別の空間、時間の中で起こっていること、かも知れないからだ.


ドクトルには見えることが、あなた方に見えるとは限らない.

そして多くの人には、実際に神々と、彼らに関わる人々との数々の事件、出来事は、見聞きすることすらできないのだ.


考えても見なさい.

別館は、かつての出雲の大社おおやしろと言いながら、東京近辺にあるかのような書き方である.


東京の中のどこに、320m四方の田圃が庭の中にあり、門から玄関まで、歩いて10分もかかる大邸宅があるというのだ.皇居くらいだろう.その皇居より広い、邸宅、上空から、見渡しても、どこにもない.


そお、別館やら、海丸くんやらキューピーが学んでいる学校やら、ドクトルやはるなが働いている、病院やら、それは、現実の世界からどこか特別な門か入り口を通って、行かないとダメな「異世界」にあるのかもしれない.

だからこれから語る話も、異世界の話、なのかもしれない


改めまして、キューピーと海丸くんの学校の話・・・・


今日は新任の先生の紹介である.


「家庭科、宇加野美珠うかのみたま先生!」

「おおー」と生徒たちからどよめきが起こる


「かわいい!」

「なんか、ファイターズガールにいそうだ・・・」

「おお、騙されてみたい・・・」

「僕だけお仕置きしてください、体罰歓迎!」


(おいおい、今時の先生、生徒に体罰なんかしたら大変なことになるのだぞ・・

おっと、また脱線してしまいそうだ.その先生、観察してみましょうか.)


色白で、細身の顔、そして少し、ツンとした感じ.

細い眉毛と、ややつり目の一重瞼があやしげで、

赤い口紅がその妖艶さを際立たせた.

その口は、男女の仲がなんなのかも知らぬ、

少年少女たちの魂を、ガッチリと咥え込んだ.


真っ白い、冬の平原、

耳を澄ませて、一瞬立ち止まり、

その後、ジャンプして、鼻先から雪の中にダイブして

ネズミを捕らえ、

そして、丸呑みをした後、

何事もなかったかのような、その白い口元


(うーん、例えがいまひとつかも・・・)


「続いて、社会科の新任の先生です・・・」

教頭先生は紹介を続ける.


「特に経済とか、政治、金融について、詳しい先生で、新潟県の佐渡が島の出身とのことです」


若いらしいのだが、無駄に貫禄十分、お腹がちょっとでっぱった先生である.

立派なスーツ、チャラチャラと指輪やら、首飾りやらを、覗かせている.


「にい・・」と笑って歯を出すと、なんと金歯が並んでいる.


「田貫団三郎先生です」


「えー、なんか、悪徳の金貸しみたい・・・」

「成金趣味」

「今どき、金歯・・・・」

「今時のセレブは太ってたら失格だよね・・・」

「俺おじいちゃん新潟に住んでるけど、あんな奴いないよ・・・」


大体において越後の人々は、寡黙、質実、実直、働き者で、しかし富を誇示せず、成金・金貸しのイメージはあまりないかもしれない.


そもそも律令制以降、

越後国と佐渡国は別の国で、それぞれに「国府」があったらしい.

ほんのわずかの期間だけ、佐渡が越後に合併されたことがあったらしいが.


佐渡島の人の気質は一体はどうなんだろうか.


佐渡ヶ島、順徳天皇が承久の変で流されて以来、

高貴な方々の流刑地になっている.

他には?

日蓮上人

世阿弥


住民の多くはそのことを誇りに思い、島には雅な京言葉を話される人が多いらしい.


あ、そうそう、ところで、タヌキ先生の印象は?


女の子たちは皆、

「えー、パス・・・」

「雅さのかけらも感じない」

「なんか下品」

「金持ちなのにケチそう・・・」

と反応と評判は今ひとつであった.


たぬき先生は、ミタマ先生に、「ちゅっ」という口の形をして、ウインクした.

そして、にいと笑って、金歯を見せびらかした.


ミタマ先生は、少し吊目をさらに吊り上げて、少し、牙を剥いたように見えた.


ただし、それに気がついたのは、海丸くんとキューピーだけであった.


彼らは、ハッとして互いに目配せで合図した.


「二人の間に何か因縁が・・・・」


ウカノミタマは、父母共に、イザナミ、イザナギの血を引く、神話界のセレブである.

この家は数千年以上の歴史があると言われる日本の皇室の祖先が、天から降りてくるよりもさらに古くから日本の地上の支配者層を形成していた.

いわば名家である.

そして日本中に「稲荷神社」は数知れず.


一方、佐渡ヶ島の団三郎たぬき.


わずかに数百年前、

江戸の初期、幕府が、大久保長安を重く用いて、各地の金山、銀山を開発を開始してからというもの、佐渡の金山には、一攫千金を狙って、全国から、欲望に目をぎらつかせたクセのある男たちが集まってきた.


佐渡ヶ島の「ゴールドラッシュ」である.


(もちろん、幕府の厳しい監視のもと、採れた金を着服したりしたら、死罪になったのだろう.

何らかの手当はもらえたのだろうか?まさか、タダ働きではあるまい.

以下の記述はそんなことあったのでは、と言う想像の話である.)


文字通り、「一攫千金」を果たした、魑魅魍魎たち、

国に戻り、少し広めの家を建てて、安穏な余生を過ごしたものもいれば、

大量の金を元手に、金貸し業を営んで、大阪、江戸で、ブイブイ言わせたもの、

蓄えた財を、根こそぎ盗賊に奪われた上に一家皆殺しに遭ったもの・・・・


さまざまな思い、というか、欲望とか野心とか怨念が渦巻いて、佐渡島には一つの妖怪が生まれた.


団三郎たぬきである.


妖怪狸の能力

 変身ができる.若い美しい娘に化けて、旅の金持ちを騙くらかす

 

 イケメンの坊さんに化けて、大商人の娘に近づいて、悪さをする.

 蔵から千両箱をいくつか持ち出せてて、娘は置いてトンズラする.

 「一緒に逃げよう!」と言っていたのに・・・・


 うつ病か、適応障害かなんかの心の病.庄屋の奥方に、医者になって近づいて、病

 気をきれいに治したのはいいが、同時に悪いことも吹き込んで、家ごと、掻っ攫っ 

 ていくとか・・・


 変身能力は、たぬきの体だけではない.そのアトリビュートともいうべき、石ころ

 やら、葉っぱをいろんなものに変えるというところで応用できる.


 すなわち、石ころやら葉っぱを、小判に変える.しかもそれらしく証文も用意す

 る.葉っぱをばかして、作る紙、墨やら、インクももちろんインチキである.


 相手が、返済する意図のない時には、小判が葉っぱに変わってしまうとか、証文か

 ら火が出る、文字がニョロニョロ蛇になって、まとわりつく.


 借りた金の、金額が変わっていたりとか.

 返済期限の年号が、変わっていたり、

 円で借りたつもりの証文が、ドルになっていたり、

 円で貸したはずのお金が、ウォンになっていたり・・


団三郎のしたことは、だいたいにおいて、あまりよろしくないことが多いらしい.


佐渡島には、狐が生息しない、らしい.

しかし稲荷神社は数カ所ある.


団三郎、神々のセレブである、お稲荷様の一族をことごとく、島から追い出したかったらしい.


ちなみにこの島には、くま、鹿、猪は元々生息しないそうな.

たぬきについて、実はいるのかいないかよくわからない.


自然との調和を守りつつ、

稲を育て、

取れたお米を大事に食べて

藁やら糠も大事に使い、

それをコツコツと蓄積して、財をなし、

皆で豊かになるという、お稲荷さんの理念.


正当でかつ究極の金儲けの神である、「お稲荷さん」を追放することは、

流石の団三郎にも島の住人の手前できなかったらしい.


だから、正確に言うと、理念を追い出すことには失敗したが、

団三郎は、お稲荷様の眷属の狐を一匹の残らず島から追い出してしまった.


「この頃、ネズミが多いな」

「ああ、島から狐がいなくなったからな」

「おお、うちのコメも結構食われてしまった・・・」


「お、狐がいなくなった、それは団三郎の仕業か?アンにゃろ、たんまりもうけて、そのクセ、俺ら百姓は飢え死にしろってのか!許せねえ!」

と村の百姓は、鎌やら鍬やら持って団三郎の屋敷に押しかけた.


大陸の、東の果て・・・・

とある国の最高指導者は、米を食う、スズメは害獣だから一匹残らず駆除しましょうと提唱して、実行した.

スズメは確かにいなくなった.しかし、米と同じくスズメが食べた、稲の生育に害になる、イナゴやら、その他の昆虫が大発生して農村は、崩壊したというのはどこか遠い異国の出来事か?


「もーたくさん!」とでも国民は、言い、口々にその指導者を呪ったか?

そうでもなかったらしいから不思議だ.


「ほお、村の衆、今日はどうされましたかな?」

「どうされましたもこうされましたもねえ、おめえ、狐を全部島から追い出しやがって、ネズミに米食われてこちとらてえへんだ!」


「ああ、そのことでしたか、ご安心ください、島には外来種の、テンやら、イタチ、たくさん放しておきましたから、ネズミのことは、心配入りません.」


確かにいっとき増えたネズミは減った.


しかし、テンにイタチが増えたことで家畜のニワトリが食われるなどということが起こった.


そして同じくテンに襲われた、佐渡島の野生の朱鷺はとうとう絶滅してしまった.


朱鷺が絶滅したのは、人が撃ち殺したりもあるだろうから、あながち小型の肉食動物のせいばかりとも言えないのだが.


食べもしない、見た目がきれいな朱鷺を娯楽目的に猟銃で撃ちまくった、

そしたらあの神々しい鳥は、島からいなくなってしまった・・・・


おおかたそういったところだろう.


もう一つ、大きな要因.

戦後の農業の大規模化で、農薬散布が普通に行われ、メダカやらどじょう、おたまじゃくし、イナゴやらバッタといった昆虫.

田んぼの生き物がいなくなったことも、朱鷺の絶滅には大きく関わっているらしい.


「気まぐれかでかつ、私情が入りまくりの、金融資本の参入、

農業の大規模化、

生態系のバランスを破壊・・・・」


珍しく、オリンポスから、下界を見下ろしているのは、いつものちゃらけた遊び人の、ルシフェルではない.今日は、最高神「ゼウス」として、溜息混じりにそう言った.


「しかし、あながち、団三郎を責めるわけにも行きますまい.無限に欲しがるのは、人のサガと言っても良いものでしょうから」


その盟友である、大国主命と須佐之男命も同じくため息をついている.


自然との調和が、おかしくなり、

人の浅知恵の乱暴かつ、無意味な介入が加速され、

そこから起こるのは、

自然と、人との永遠の断絶


「俺たちが目指した国はそんなんじゃなかったはずだよな」

須佐男の憤懣を、

大国主は黙って頷いて受け入れる.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(うわ、話があらぬ方向に進んでしまった!)

作者のドクトルもちょっと慌てたようである.




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