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血尿とタンパク尿


ドクトルは、泌尿器科や、腎臓内科の学生時代のノートを引っ張り出してきて、

蛋白尿と、血尿について改めて勉強をしているところである.


ルシフェルと、海丸くんも面白がって、色々と聞いてくる.


「腎臓って、なんか不思議な臓器ですよね.

そもそも、なんで、体に不要な、アンモニアをオシッコにしてこしだすことができるのでしょうね.」海丸くんの素朴な疑問である.


「確かになあ、血液の中、いるものといらないもの、どうやって判断してるんだろうな.尿素窒素にクレアチニン、尿酸なんか、これは廃棄

ナトリウムとか、カリウム、ブドウ糖とか、一部選んで再利用、こっちは、廃棄処分・・・・・・・・・・

なんて膨大な仕事をしてるわけだもんな.まさに生命の神秘、だな.」全知全能と言われた、ルシフェルも、素朴な疑問である.何千年も前、人間が何も知らなかった時代、神様がなんでも知ってて、なんでもできた、というのは実は嘘らしい.

生き物とか、世界、神様が1人で、ほんの一週間くらいで作ったというのも実は嘘らしい.


「まあ、俺ら、何千年も前は、人間が何にも知らない事いいことに、適当になんでも知ってます、なんて言ってただけかもしれねえな.人間が色々、知恵つけてくると、こちとら、うかうかと、なんでも知ってるぜ、なんて言えなくなってきた.なあ海丸、俺ら神々なんて威張ってねえで謙虚であることは必要だよな・・・」


おじさんにそう言われて、海丸くんも黙って頷いた.


「そう、腎臓、神秘の臓器ですよね.肝臓と並んで壮大な化学工場・・・・」


別館図書室の、中央の大きなテーブルに、日本語の内科の教科書やら、ハリソンやら、肉眼解剖の本、組織学の本、学生時代のノートやらを広げて、それらを眺めて、ドクトルもしみじみと「体の不思議」を思う.


「腎臓で排泄されるもの、何がありますか、海丸くんわかりますか?」ドクトルが海丸くんに質問である.

「えっとですね、ネットのAIによると、以下のようになってますね・・・・」


尿として出ていく主なもの・・・・


① 窒素代謝産物(いわゆる“老廃物”の中心)

 

尿素(urea)

 タンパク分解 → アンモニア → 肝臓で無毒化⇨一番量が多い

 クレアチニン(creatinine)→筋肉由来.腎機能の指標


尿酸(uric acid)

 プリン代謝産物.痛風と関係.(鳥では、尿素ではなくてアンモニアから尿酸を合成して、排泄する.そのことで循環血液の水分をむやみに捨てない、らしい.)


② 小分子タンパク・ペプチド


 β2ミクログロブリンなど(通常は尿細管で再吸収されるが、障害で尿に出る.間質性腎炎の診断の決め手になるらしい.)


③ 電解質・ミネラル(調節目的)

Na⁺(ナトリウム)

K⁺(カリウム)

Cl⁻

Ca²⁺

リン(P)

重炭酸イオン

・・・・・・・・・・・・・・


“老廃物”というより体内バランス調整


④ 水 尿のほとんど(95%以上)


⑤ その他

薬物・代謝物

ホルモンの分解産物

色素(ウロビリンなど → 尿の色)


「そうなると金属の排泄なんかも興味出てくるね、ちょっと横道に逸れることに注意しつつ・・・」とドクトルもネットのAIに金属の排泄についてもお伺いを立ててみた.


金属の主な排泄ルートは2つ

腎臓(尿):水に溶けやすい・小さい・遊離しやすい

肝臓→胆汁→便:タンパク結合・大きい・重金属

 

金属ごとの排泄

腎排泄(尿が主)


比較的「可溶・小分子」


マグネシウム(Mg)

マンガン(Mn)(※一部胆汁も)

一部の無機水銀(Hg)

腎機能に強く依存


胆汁排泄(便が主)

「重金属・タンパク結合」


銅(Cu)

 → 典型(肝→胆汁)

 → ウィルソン病 で障害

鉄(Fe)

 → 実はほぼ排泄されない

 (脱落上皮・月経などで微量)

亜鉛(Zn)

鉛(Pb)

有機水銀(メチル水銀)


「肝臓が処理して腸へ捨てる」


特殊

金(Au)・銀(Ag)

 → ほぼ排泄されにくい

 → 組織に蓄積(長期残存)


「え、すると、金沢のお菓子の中、金箔とか入ってるじゃないですか、あれ、体に蓄積するのでしょうかね?それとも便になってそのまま出ちゃう?」海丸くんが、大人たちに聞いてみた.


「さあ・・・」ルシフェルもドクトルも知らないことだらけである.

「金やら、銀やら、体の中に溜まったらやっぱり毒になるのじゃないかと心配になりますね.」


(イオン化傾向の少ない、どうやら、金、銀、水銀のこと、あるいは、すぐに酸化してしまう鉄などの金属のことは今後金属加工の歴史なんかでみていきたい.それと人体との関係も深めることができたらいいなと思う.学ぶことは膨大だ.)


ドクトルは話題を本題に戻す.

「今日は、腎臓が老廃物ではない、タンパクやら、血液の成分、血球なんかをいかに体の外に出さないようにしているか、あるいはどんな病気でその、大事なものを温存する機能が、壊れてしまうかということです.」


「それで表題が、血尿と、蛋白尿・・・・」続けて、ルシフェルがしみじみいうのは、

「ドクトル、おめえ、よくよく考えて文章書いているんだな、改めて感心するよ.」


「いえ、いえいえ、皆さんのご指導のおかげ、ですよ」


確かにこの頃は、文章の表題とか、どのようなことを話題にするかによって、ストーリー展開が、すらすら出てくるようになってきたのは、執筆に慣れてきたから?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


内科学の知識の整理.例によって朝倉出版、内科学第11版の登場である.

蛋白尿、血尿についても、症候学の中では触れられておらず、「腎・尿路系の疾患」

のなかに総論・各論ともまとめて書かれている.


タンパク尿とは?


尿蛋白排泄量は150mg/日未満

150mg/日以上でも、運動、発熱、ストレスによる一過性のものは、生理的タンパク尿という.


糸球体性タンパク尿

 アルブミン尿


尿細管性タンパク尿

 β2MG(β2ミクログロブリン) 尿細管で再吸収される.

 NAG(N-アセチルグルコサミダーゼ)尿細管上皮から逸脱する.


多発性骨髄腫などで血中のBence Jones 蛋白が増加すると尿中に漏出するようになり、溢脱性蛋白尿、腎前性蛋白尿と呼ばれる.


糸球体の三層構造


 血管内皮

 基底膜 

 ポドサイト 


チャージバリア

(陰性に荷電している、アルブミンを、尿細管の細胞も、陰性に家電して、電気的に弾き返して通さない!)


  基底膜 陰性荷電ヘパラン硫酸プロテオグリカン

  ポドサイト ポドカリキシンは陰性荷電シアル酸含有糖蛋白


サイズバリア

 基底膜のIV 型コラーゲン IgGなどの中分子以上のタンパクの漏出を予防する.


ポドサイトの足突起は互いに組み合わさり、網の目のように、毛細血管壁を覆っている


ポドサイトの足突起間を結合するスリット膜の構成成分である、ネフリン、ポドシンやCD2関連蛋白分子の異常は、先天性および後天性のネフローゼ症候群の発症に関与する.


分子量の小さい順

β2ミクログロブリン(β2MG)

< Bence Jones蛋白(BJ蛋白=遊離軽鎖)

< アルブミン

< トランスフェリン

< IgG

< IgA

< IgM


おおよその分子量イメージ

β2MG:約 12 kDa

BJ蛋白(軽鎖):約 25 kDa

アルブミン:約 66 kDa

トランスフェリン:約 80 kDa

IgG:約 150 kDa

IgA:約 160〜320 kDa(単量体〜二量体)

IgM:約 900 kDa(五量体)

チャージバリア

サイズバリア


serectivity index: IgG/トランスフェリン


serectivity indexが

小さいほど、選択性が高い.糸球体のチャージバリアの障害.ステロイドが効く可能性が高い.


大きいほど、選択性が低い.


特定健診では、蛋白尿プラス以上のん頻度は、4%である.


タンパク尿が陽性となる危険因子は、

年齢、血尿、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満と喫煙



臨床症状

 無症候性タンパク尿

 ネフローゼレベル >3.5g/日.浮腫を認める.


アルブミン尿をきたす病気


微小糸球体病変

巣状分節性糸球体硬化症

膜性糸球体腎炎・膜性腎症

メサンギウム増殖性糸球体腎炎 IgA腎症

管内増殖性糸球体腎炎

膜性増殖性糸球体腎炎

半月体形成性壊死性糸球体腎炎


どういう病態でタンパク尿が出るかということは、疾患の各論的なことは機会があれば述べたい.


続いて、「血尿」について・・・・


腎臓および尿路系のいずれかの部位から赤血球が混入し、尿中赤血球≧20個/μl、尿沈渣で赤血球≧5個/HPF (X400)を認める場合を血尿という.


分類

1Lの尿に、1ml以上の血液が混入すると、赤色調を呈するようになり、肉眼的血尿という.


一方、尿沈渣において初めて赤血球≧5個HPFが確認される場合を、顕微鏡的血尿という.


赤血球の70%以上が、ドーナツ状、あるいは金平糖状に変形する場合を、糸球体性

血尿といい、同時にタンパク尿や、赤血球円柱を伴うことが多い.これ以外を非糸球体性血尿という.


原因疾患


糸球体性血尿


非糸球体性血尿

尿管結石、膀胱癌など.


「私ね、一回尿管結石になったことある.」ドクトルの私ごとである.

「ほお、それにしてもおめえ、色々、病気とか、怪我自分で経験してて、説明するときに、便利だな」ルシフェルは変な関心の仕方をする.


「朝方、変にお腹から背中が痛い.内臓痛なんでしょうかね、どこが痛いのかがはっきりしない、しかし、なんとなく生命が脅かされる恐怖を感じる、痛み、そんな感じ・・・・・」

ドクトルは若いときに潰瘍性大腸炎をしているから、いよいよ、癌になったかな、などと余計なことを考えたりもした.


午後から脊椎・脊髄の手術があったから、早めに出勤して、当直の先生に頼んで腹部CTを取ってもらったら、尿管結石だった.ちょっと安心して、後日、泌尿器科の先生に相談したら、毎晩水を1500ml飲みなさいと指導された.


「そう言えばその数日前から、尿が赤いことがあった気がする.長距離歩いたせいかな、と思ったのですが、尿管結石!」


午後の手術までには症状が良くなったので、めでたしめでたし、という一席である.









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