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症候学⑥「自律神経と失神」


静香が、仕事から帰ってきた.今日は、職場の健康診断だったらしい.


同僚の人が、採血の時に気を失ったらしい.横になって寝ていたらよくなったらしい.蒼い顔をしていたらしい.


「献血室とか、病院の採血の時に、意識を無くす人がいるそうですけど、どういった人が採血で、気を失ってしまうのですか?血のとり過ぎとか・・・」


「いや、それはあり得ないと思いますよ・・・」ドクトルは、本を読みながら応対する.


「じゃ、なんで・・・・」海丸くんも興味を示した.


「それはね、自律神経の反射が原因と言われています.皆さんは、自律神経って知ってますよね」


「あ、走ったり、活動する時に、心臓とか呼吸を活発にするのが交感神経、食後とか寝ている時に働くのが副交感神経、みたいな?」海丸くんの理解は大体正しい.


「まあ大体、いいところついています.人の循環とか、呼吸とか、消化管、胃液を分泌したり、消化管の蠕動を起こしたり、抑えたり、排便、排尿したり、あと、手足の末梢の血管を拡張したり、収縮させたり、あるいは生毛を立てたり、汗をかいたり、瞳孔を開いたり、縮めたり、これ皆、交感神経と、副交感神経のバランスで、営まれている機能です.自分でどうこうできないから、自律神経と言われています.自律神経に対する言葉は体性神経とか随意神経とかいうのでしょうかね」


医者のくせにドクトルの認識もかなり大雑把かもしれない.


自律神経の働きは多岐にわたるから、具合の悪い人捕まえて「自律神経失調症」とそれらしく、説明するのはどうかと思う.症状とか病態の本質をぼかすという意味で.あと、更年期の不具合を「更年期障害」も・・・

「なんとなく、そこが悪い」と「診断」してしまうのは、何も分かっていない医者のすることだと思う.


採血の時の、失神は、だいたい以下のような頻度と言われています.


一般的には、

献血者で約1%〜5%、

医療機関での一般的な採血ではもっと低い割合(0.2%〜0.4%程度)

と報告されています.


失神が起こりやすい人は、

初診患者.採血室でのトラブル(血管迷走神経反射)の約50%が初診患者で発生します.

採血に対する恐怖心や緊張、 強いストレスを感じている場合.

空腹時や睡眠不足、疲労時: 体調不良が誘因となります.

一度に多くの試験管で採血、 5本以上の採血や長時間の待ち時間はリスクを高めます.


注意点と対策

採血後の転倒によるけがを防ぐことが最も重要です.

過去に気分が悪くなった経験がある場合は 事前に看護師や技師に伝えると、横になった状態で採血(臥位採血)を行ってくれます.

気分不快を感じたら、すぐにスタッフに伝え、座り込むか、その場に横になってください.


予防: 採血前は十分な睡眠をとり、極端な空腹を避けてください.(しかし、空腹時血糖とか中性脂肪の検査では、検査の前の日から禁食にしますけどね・・・)


なお、採血後の意識消失は、「失神」と言われる症状です.副交感神経の過剰な興奮で、脈がゆっくりになり、血圧が下がり、それによる一時的な脳血流低下によるもので、通常は安静にすれば数分で回復します.あるいは意識を無くすには至らない場合も、吐き気がするとか、目が回るとか、それも副交感神経亢進による、徐脈と血圧の低下が原因です.これも失神と同じように対応します.


採血の後の失神、副交感神経の興奮は、「血管迷走神経反射」と呼ばれる現象が原因とされています.


朝倉内科の教科書には、失神を次のように定義しています.


失神は、脳の血流低下による一過性の意識消失発作であ理、脳血流低下の原因は多岐にわたる.


心血管性失神

反射性失神(神経調節性失神)

 血管迷走神経性失神

 頸動脈洞失神

 状況失神.排尿、くしゃみ、咳で誘発される失神.


起立性低血圧による失神


心原性失神

 構造的心疾患.大動脈弁狭窄症、HOCMなど

 冠動脈疾患.心筋梗塞、狭心症.

 不整脈.SSS、高度のAVブロック、心室性不整脈


低血糖とか、低酸素血症、脳幹部の虚血、椎骨動脈圧迫、てんかんは厳密な意味では、「失神」ではない.


どう見ても「失神」の一過性意識障害で、頭痛も嘔吐もない患者、でも、まあ念のために、頭部CTをとってみましょうかということでとったら、なんとくも膜下出血でしたという例が、1例だけあった.その患者さん、治療経過中に一回も頭痛を訴えなかった.頭痛のない、くも膜下出血がありうるのだという経験をしているので、ドクトルは意識消失、頭痛がなくても必ず頭部CTは取ることにしている.


血管内治療の患者、10Frくらいの太めのシースが入っていた人がいた.抜去後に失神した.血液の検査では、貧血が進行したわけではない、それほど、血が出たわけではなかったし.ショックのように、頻脈にはならない.むしろ徐脈で血圧が下がっている.その方は強い痛みを訴えた後の失神だったからこれも血管迷走神経反射の範疇なのかな、と当時思った.


失神は厳密には脳に行く前の段階で、脳の血流不足が起こるから、元の病気、心臓とか自律神経の異常に対する対応が求められる.


「医学部の授業で、そういうこと聞いた覚えがないのですけどね・・・」とドクトルがいう.卒後の研修でも、大体の研修医、明らかな失神を循環器内科に相談しないで、脳外科医に相談する.


医学教育の問題がここにもあるということか?







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