俺とみんなと調達
どぞー
夕食後、一通りのことを済ませて後は寝るだけの状況になった頃、俺とセラはルフェンから聞いた話を三人にした。
反応は、予想を大きく外し、軽かった。
「らしいなー」
「やっばりそうだったんでっすね」
「となると、消耗品だけでも買い足して置かなくては」
フタとナリはともかく、小虎が反対しないのは意外だった。
事戦いの話になると反対してくる小虎が最初から受け入れているのは少しだけふしぎにおもったが。
「城の中で聞いたんだ。やらなきゃやられるって。何もせずにただ黙ってやられるのはオレの性分じゃない。
それに、戦わなきゃいけない時に戦うな、とは言えないよ」
少しだけ難しい顔をして言った。
「では、明日は消耗品の買い出しに行来ますか?」
セラの提案に俺たちは頷き話し合いは終わる。
そうして就寝の時間になった。
フタと小虎の反対を押し切り、俺と眠ることにしたセラに抱きつかれている今、出来ることは明日の買い物の内容をザッと決めることだけだ。
こんな状況下で寝ることなんで着るわけがないし、もしも寝返りか何かで変なことをしたら大変だ。
「……んん〜」
後頭部から聞こえる安らかな寝息が耳元をかすめる。
気持ちよさそうに眠りやがって…。寝不足になるこっちの身にもなってくれよ。
「ん〜」
変わらず聞こえる寝息は本当に安らかで、俺と寝ることになんの不安もないのかと疑いたくなるくらいだ。
心底信頼されてるって事、だよな…?
「(…いいや。余計なこと考えるのはやめよう)」
これ以上、現状を考えると二つの意味で恥ずかしくなってくるため、明日の買い物の内容を決めることに専念した。
窓辺で囀る数羽の小鳥の声が聞こえ、瞼にかかる光に煩わしさを覚えて目を開いた。
「…なんだ、眠れたのか」
若干重たい瞼を擦って叩き起こし、ベッドに座ると、違和感を感じた。
その正体は確かめるまでもなく…
「セラはもう下に行ったんだな。
俺も行くか」
一緒に寝ていたはずのセラが居なくなっていた。
時計を見れば丁度、朝食の時間だ。
台所ではセラと小虎辺りがご飯を使ってるか、用意が終わってる頃だろう。
あまり待たせるのも良くないし、適当に身だしなみを直して茶の間へと向かった。
「あ!おはようでっす!」
「おはよう、ルフト」
茶の間のテーブルには既にいくつかの料理が並んでいて、フタとナリが椅子についていた。
「ん、おはよー」
「…セラに、何もしなかっただろうな?」
「何にもしてない」
当然といえば当然の心配に少し不機嫌に返す。
「逆かもしれないでっすよ?セラっちがルフくんに…」
「してないですっ!」
料理を手にしたセラの焦り気味な返答に、くすくすと微笑むナリ。
朝から元気だなぁ。
「ほら、メシが出来たぞー」
続けて台所から出てきた小虎はお茶とコップをテーブルに置いて席に着いた。
「「「「「いただきまーす」」」」」
なんとも久し振りな全員の合掌の後、朝食が始まった。
食事中の話題はもっぱら買い物の事だ。
どうやら俺以外のみんなも、それぞれ必要そうな物を考えていたらしい。
お金は追加で手に入るとは言え、不必要な物を多く買うのは効率が良くない。
なら、全員が必要だと思った物から優先的に買おうとなり、それぞれの意見を言い合うことになった。
まず、満場一致だったのは回復道具だ。
俺たちの隊にはセラがあるとは言え、瀕死の人間を二人同時に診るのは不可能だ。また、二手に分かれた際にセラのいない方が回復出来ない、などという状況は避けなければならないからだ。
それに、セラ自身が術を使えないくらいの怪我をしたりした場合も回復出来る道具がないと辛いだろう。
次に必要とされた物は装備品だ。
…が、これへ使い慣れた物の方が良いだろう、と、壊れていたり裂けていたりすれば各々が買おうということになった。
他にも、潜入するのなら目立ち辛い服装や、指定した場所へ瞬時に戻れる魔道具、一時的に身体能力を底上げする秘薬などなど、色々な案が出たが、かさばると良くないだろうという考えから、本当に必要なものを実物を見て購入することに決定した。
昼食が終わり、準備を整えてから全員で消耗品の調達へ出かける。
みんな軽装にし、不必要に威圧感を与えない方が良いだろうということで武器などは携えてない。
「なんだか、ワクワクしまっすねー」
先頭を早歩き気味に進むナリの言葉に、隣を歩くセラが頷いた。
「そうですね。
思い出してみると、こうやってみなさんと買い物をするのは初めてな気がします」
「確かにそうだな。
普段はだいたい二人組みで済ませてしまうから、妙に新鮮な気持ちだ」
「てか、ルフトだけじゃないか?一緒に買い物に行ったことないのって」
「「「確かに」」」
声を揃えて納得する三人と、なぜか自慢げな小虎。
だが、悲しいことに彼女の言うことは事実で、俺がみんなのうちの誰かと買い物に出かけたことはない。
…そのせいか、少しだけこの場に居辛い心持ちだ。
「でしたらルフトさん、今日は今までの分も楽しみませんか?」
そう思っていると、セラが一つの提案をしてくれた。
「良い考えでっすね!僕、オススメのお店があるんでっすよ!」
「よくよく考えれば、そもそもルフトは休みがなかったかもしれないな。心ノ町でのアレはまた別として、王都では休暇らしい休暇を取っていなかっただろ?」
「呼び出されて報告しての繰り返しだったもんなー。通りで買い物に行かないわけだ」
うんうん、と頷く三人。
言われて気がついたが、確かに王都で何もしてないな。
唯一昼食を摂りに飲食店に行きはしたが、ネフェンと一緒だったし[楽しい休暇]かと問われると、まず絶対に違う。
「…いいかもな、それ。
王都に来てどのくらい経ったかわからないけど、いい加減、行きつけの店くらいあっても良いよな」
「決まりですね!早速行きましょう!」
「お、おい!ちょっと待てよ」
間髪入れずに手を引き走り出すセラに戸惑う俺の後を、楽しげに笑う三人がついてくる。
向かう先はまだわからない。けれど、きっと楽しいところなのだろうと胸を膨らませた。
To be next story.
それではまた次回。
さよーならー




