表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亀が空を飛ぶ方法 (第二作)  作者: 比呂よし
50/96

会社のスローガン

50. 会社のスローガン


 又一方で、社員が十数名程度のある中堅商社(=Y販売店)の事務所に、スローガンが貼ってあったのを覚えている:「一日8件の顧客を回ろう!」

 この何気ない社内のスローガンが、こっちには「重要なデータ」である。


 何故このスローガンが作られたか? 正直に一日に8件を回る営業マンが少ない(或いは、居ない)からだと判る。昔から目標とは現状の「二割アップ」と相場が決まっているから、平均の営業マンの訪問数の実態は先の八掛けで、日に5~6件なんだと判る。


 少ない方の5件として、5x20日→月間100件の顧客を回っているのが、この商社の「一人当たりの平均」である。特別な用件があって同じ部署(顧客)を二度三度と再訪する場合もあろうから、話半分として月間50件(顧客が大工場ならば、それぞれ異なる職場は1件づつと数えている)。

 先のスローガンは、どんなヘゴでバカな営業マンでも最低でも50件程度の固定客を手持ちしている、と教えて呉れている訳だ。分析は大切で、これは重要な情報である。

 だからーー、貴方が仮に3名(たったの3名!)の販売店の人間と知り合いになれば、合計150件(=50件x3名)という多大な情報(=新規顧客情報)と対峙しているのと同じ。貴方の「エロいセールス落語」が朝・昼一回づつの興業なら、150件の情報を消化するには、3~4ケ月掛かる勘定となる。

 彼らが「情報の宝庫」だと判る。これはとても大事だから、奥さんの名は忘れても、トップセールスになりたければ、この現実をしっかり覚えておこう!

 次に、先の木陰での「居眠り」セールスマンに話を戻そう。何が判るか? さぼるからと言っても、根っからの悪党ではない。ただ、彼らは少なくとも先の「一期一会」程には多忙ではない。思い切ってこう言える:「ヒマを持て余している」、だから昼寝してるんだ。


 筆者にトップセールスへの道を開いてくれた、親愛なるS工業の安井親分はどうだったろうか。彼は筆者を1ケ月間A造船所工構内を隈なく引き回してくれた。あの時、彼は自分の「本来の仕事」に超多忙だったろうか? 「アンタを好きになったよーー」と愛をささやいてくれたけれども、本音は「良い退屈凌ぎを見つけたよ!」、と言う意味だったかもしれない。かもしれないーーと書いたが、筆者はこれを確信している。


 親分は木陰で昼寝こそしなかったものの、「トン5万円」の鉄材を卸す仕事に飽き飽きし、暇でもあった。 新しい「刺激」が欲しかった。そんな最中さなか、筆者という「いいカモ」がある日、ボロくて薄暗い、退屈な建物に飛び込んで来てくれた。掃き溜めにツルならぬカモを、親分は退屈凌ぎに素早く捕まえたのだ。


 このように、メーカーは(筆者のように)情報収集の為に、最低でも一人50件の情報を有する彼らを「利用したい」一方で、暇を持て余している彼らは「利用されたがっている」と言える。筆者が神様と言われるほどトップセールスになれたのは、女と男の関係のように互を求め合い、販売店側の求める「不足」をこっちが「充足」して上げた結果に過ぎない。


 神様の振りをしたり多少のテクはあったろうが、筆者が天才的な奇策を弄した訳ではなく、「過不足の埋め合わせをする」という当たり前の事を「当たり前に為した」だけと分かる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ