第二章 販売方程式の解法
17. 第二章 販売方程式の解法
1.何処が一番難しいか?
「営業の仕事で、何処が一番難しいと思うか?」
これは、セールスマン(=以後、営業職、或いは営業マンとも称す)の中途採用で、面接時に筆者が必ず問う質問。応え方次第で力量が判る。
営業職というと、技術屋や理系の人から眺めると、「掴み処が無く・漠然としている」と映るかも知れない。これに加えて、本職の営業マン自身が「ガッツ・根性・熱意」こそ三種の神器だと称して、「漠然とした」言い方をするから、話が一層ややこしくなる。実際はそうではない、「ガッツと根性の無い筆者」にも出来たからだ。
先の三種の神器を唱える営業マンは、自分の仕事を客観的に眺める習慣が無い為かも知れない。そんな中へ筆者のような「分析好き」な理系人間が、営業の世界へ首を突っ込んで眺め回して見ると、そこが「数学の世界」だと発見する。だから「販売の方程式」と名付けて、以下はこの解法の話である。中学以上の学力があって、多少の因数分解が出来れば理解出来る。
一見漠然として何やら複雑に見える物事でも注意して眺めると、単純な事象の寄り集まりであるケースは多い。例えば、パソコンは複雑な計算を魔法みたいに瞬時にやってのけるが、根本の原理は「0か1」(=右か左か)かの連続した選択作業だ。それを光の速さで数多くやるから、魔法に見えてしまうって訳だ。
実は営業活動もそうで、細かく見れば一つ一つが「合理的な計算式」の上に成り立っていて、得体の知れない「ガッツや根性」は1%も介在する余地が無い。プロの営業マンでもこれに気づいている人は余りいない。因みに筆者は、買ってもらう為に人を接待したことも一度もない。
一口に営業マンと言っても実態は様々: アサヒビールの営業マンがスーパドライを酒屋に卸すのも営業、百貨店の紳士服売り場の女性の売り子も営業だし、保険のセールスレデイが顧客を一軒一軒訪問して形の無いものを売るのも営業。そんな中で先の紳士服売り場の売子として経験を積んだ人なら、「営業とは?」と問われると、愛想と誠実が一番と答えるかも知れない。
こんな場合の営業は、「曖昧さ」そのものに見える。 けれども、それは本当の営業とは言い難い。単なる服地の知識の「伝達係」、或いは商品知識の「受け売り係」と言った方がぴったり来る。そんな範囲に留まっているなら、その仕事は将来ロボットに置き換わられてしまうだろう。
そんな人でも、「多年の営業経験あり」と応募の履歴書に記載して来るが、正確に書くなら「多年の伝達係の経験あり、但し営業未経験」と書くべきだ。筆者はこうした区別にやかましい。
世間の営業マンと称する多くがこの手合いで、「伝達係」の域を出ない。そんなのが面接に現れても、「ロボット予備軍」がやって来たなと思うから、こっちはびくともしない。