11
うん。なんとか、いい感じかも。
私は姿見の前で仁王立ちしてつま先から頭までじっくり見たり、くるんっと一回転したりした。
現世でもやったことがない初めての男装。
興味はあったものの行動に移そうとはなかなか思えず結局やらずじまいだった。
髪をアロルドと同じ長さになるように切り、服もアロルドの制服を借りて着替え終わると本当にアロルドになった気分。
良きかな良きかな! 案外イケてるんじゃない?
トントン。
ちょうど誰かに見せびらかしたいと思ったところに扉が叩く音がした。
「どーぞ!」
「失礼します。お嬢様準備が……」
入ってきたのはマリン。
私の初男装の最初のお披露目相手はマリンのようだ。
マリンは私を見るなり目を見開いて言葉を詰まらせた。
いつもみたいに「すごいです!」とか「似合ってます!」とか言ってくれるかと思ったが、思ってたのと違う反応。
あ、ありゃ……? 似合ってないのかな?
私が自信なさげに小首を傾げてマリンの顔をのぞき込むとマリンは「すみません!」と謝ってきた。
「お嬢様があまりにも男装が似合いすぎて息を吸うのも忘れてしまいました」
私からしたら最大限の賞賛に私の失いかけてた自信を取り戻し、ついつい顔全体が緩くなってしまった。
「えへへぇ。そんなに似合ってるかなぁ?」
「はい!」
「さすが私! やればできる子! でもやらない子!」
お世辞かもしれないが褒められて嬉しく、私は上機嫌に頭をかきながらニヤケ面を隠さないでいた。
「それにしても本当にお嬢様とアロルドさんは瓜二つですね。まるで双子みたいです」
確かに。私自身アンナとは別人だから客観的な視点で見れるけど、めちゃくちゃ似てると思う。
でも、ゲームの設定だとアンナに血が繋がった兄弟はいない。だからアロルドと血の繋がりのある兄弟という可能性はないと思うけど。
「まぁ、世界中に自分と似てる人は3人はいるって言うしね〜」
私が自分の考察をそう結論付けてマリンに言うと、マリンは「なるほど!」と言い、この話題はこれで終わりとなった。
ここは乙女ゲームの世界。ビジュアルが似てしまうことなんてゲームやアニメ、2次元の世界ではよくある事だろう。
アロルドの格好をしているせいか、心做しかいつもよりも頭の回転が早くなってる気がする。たぶん気のせいだけど。
そんな雑談をしていると車の用意が出来たとほかの使用人が呼びにきた。
そうこうして、私は決戦の地。つまり交流祭の会場である学校へと急ぐのであった。




