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第二十八話 蠢く者たち

「まさか、本当に全部倒していたとはな……」


 カウンターに積まれたロックバードの山。

 五十羽にも及ぶそれを見た途端に、ガディウスさんの眼が丸くなった。

 彼は死骸を手に取りながら、その詳細を確認する。


「傷口が綺麗だな。風魔法で斬ったのか?」

「はい、そうです」

『風刃で一発だったのぅ』

「ううむ、お前たちが魔族を倒したという噂も本当だったか」


 かみしめるように呟くガディウスさん。

 彼は改めて俺たち三人を見ると、満足げな顔でうなずく。


「よし、これなら姫さんの護衛もばっちりだな! むしろ、俺より強いんじゃないのか?」

「そんなことないですよ! 俺なんてまだまだです」

「ノエルがまだまだなんて言ったら、世の中の魔導師は全部まだまだだと思うけどねぇ」

『そうじゃのう。実力に関しては、既にトップクラスであろうな』


 いやいや、いくらなんでもそんなことはないだろう。

 まぁ、弱いってことはないんだろうけどさ。

 世の中、上には上がいるはずだ。


「ま、これからよろしく頼むぜ」

「はい、よろしくお願いします」

「と言っても、私たちが出張るほどのことそうそうないと思うけどねぇ」


 そういうと、リーシャさんはからからと笑った。

 するとどうしたことだろう、ガディウスさんの表情がにわかに険しくなる。

 細められた瞳が、剣呑な空気を醸し出した。


「それがな、意外と出番がありそうなんだなこれが」

「どういうこと?」

「ここだと話しづらいな。こっち来てくれや」


 周囲に人が多いのを確認すると、外に出るように促すガディウスさん。

 俺たちは彼の後に続いてギルドを出ると、そのまま路地裏へと移動する。

 そして周囲に人がいないことを確認したところで、改めてガディウスさんは咳払いをした。


「うむ。実はな……姫さんを消そうとしている連中がいる」

「なっ!? それって、暗殺!?」

「国の一大事じゃない!」

「シーっ! 声がでかいぞ!」


 慌てて俺たちの口を塞いだガディウスさん。

 い、息が出来ない!

 俺とリーシャさんは、すぐさま彼の言葉にうなずいた。

 その反応に安心したのか、サッと手が離れる


「ふ、ふぅ……苦しかった」

「すまなかったな」

「それで、その話は確かなんですか?」

「確証はない。だが、最近になって姫さんの周りでいろいろと不可解な事件があってな。今回の外遊も、本当ならもっと早くにこの街へ来る予定になっていたんだ」

「それって、魔物の大発生とかち合うようにされてたってこと?」

「ああ。偶然と言ってしまえばそれまでだが……どうにもきな臭いんだ」


 ガディウスさんは、確信めいた口調でそういった。

 高ランク冒険者として、何か感じるものがあるらしい。

 王族なんて、いかにも陰謀が渦巻いていそうだからなぁ……。


「王位継承権で行くと、姫様は二位だ。だが、一位のローラン殿下はまだ五歳。姫様を女王として、婿を迎えるのがいいという派閥もある」

「それが気に入らないローラン派が、仕掛けてきていると?」

「ああ。連中の一部は、怪しい奴らとつるんでいるとも言われてるからな」

「怪しい奴ら?」


 俺が聞き返すと、ガディウスさんは煮え切らないような顔をした。

 彼はそのまま、歯切れの悪い口調で語る。


「そうだ。こちらでも、正体を調べようとはしたんだが……素性がはっきりしなくてな。本当に怪しい奴らとしか言いようがないんだ」

「そりゃまた。姫様たちの情報網で引っかからないとなると、相当ね」

「もしかして、魔族とかなんじゃ? 魔族なら、調べたところで身元とか分からないですし」


 俺の言葉に、ガディウスさんはハッとしたような顔をした。

 しかしすぐにまた、渋い顔つきへと戻る。


「うーん、筋道は通ってるが……伝説の連中だぞ? そうそういるとも思えねえがな」

「わかりませんよ。現に、この街には出たんですし」

「わかった、姫さんにはあとで伝えておこう」


 そういうと、先ほどまでとは打って変わっていい笑顔を見せるガディウスさん。

 彼はそのまま、グッと力強く親指を上げる。

 さすがはSランク冒険者、何とも頼もしい限りだ。


「じゃあ、今日のところはお別れだ。明日から本格的に仕事だ、よろしく頼むぞ」

「はい!」


 ガディウスさんは手を振りながら、颯爽と立ち去っていった。

 あとに残された俺たちは、ほっと息を吐きながら疲れた顔を突き合わせる。


「しかし、厄介なことに巻き込まれましたね」

「そうね。まさか、また魔族絡みなんて」

「決まったわけじゃないですけどね」

『かなり怪しいがのう。わしの作られた時代じゃと、国が亡ぶときには必ず魔族の影があるとか言われておったものじゃ』


 どこか懐かしがるような口調で言うリーフォルス。

 国が亡ぶときにはって、そんな物騒な……。


「勝負は明日から。大丈夫、ノエル様なら心配ない」

「そうね! ノエルなら魔族が来ようと安心だわ」

『うむ、そうじゃのう。ノエルだからな』

「何ですか、その俺に対する謎の信頼感は!!」


 うんうんとうなずくリーシャさんたちに、戸惑う俺。

 とにもかくにも、こうして夜は更けていった――。


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