第十一話:コンクリートの端の巣守すもり人(ザ・ガーディアン・オブ・ザ・ハイヴ)
#第11話: 侵入者への処刑。巣を守る蜘蛛となったアカリ。
一九九一年の夜は、いつも以上に濃密に感じられた。打ち捨てられた校舎の中で、エドは脆くなった教卓の上に座り、アカリはその両脚の間に身を預けていた。エドは指先から神経の糸を紡ぎ出し、アカリの首に直接馴染む透明な首飾チョーカーを編み上げていた。
「感じるかい、愛しい人?」エドがアカリの頭に触れた。「空気の振動を……。僕たちの島に、招かれざる足音が響いている」
アカリは目を閉じた。その通りだった。建物の壁を伝って桟橋まで広がる神経の網を通じて、小さなボートのエンジン音と、重いブーツの足音が伝わってくる。三人組の男たちが、端島の地に足を踏み入れたところだった。
「彼らが私たちの家を汚しているわ、エド」アカリが呟いた。その声は以前よりも低く、人ならざる響きを帯びていた。
「僕たちの絆をどれほど大切に思っているか、見せておくれ」エドが穏やかに囁いた。彼はアカリを立たせ、熱い口付けを交わした。「僕たちの巣を守るんだ。僕はここから君を見守っているよ」
アカリは三階の窓から外へ踏み出したが、落下することはなかった。強靭になった指先が、コンクリートの隙間を容易に掴み取った。彼女は月光の下を滑る影のように、壁を伝い下りていった。
階下では、三人の男が懐中電灯を照らし、下品に笑いながら歩いていた。その一人が、二人の居場所である六十五号棟に近づこうとした。
「そこでお止まりなさい」天井の闇から、アカリの声が響いた。
男たちは驚いてライトを上に向けたが、アカリの動きは電光石火だった。彼女は彼らの前に舞い降り、指先から放たれた神経の糸を鞭むちのように操り、瞬く間に侵入者を制圧した。
アカリは湧き上がる力を全身に感じていた。彼女が上の階の窓を見上げると、エドが誇らしげに彼女を見つめていた。
(私たちのために……私たちの場所のために)アカリは心の中で誓った。
もはや迷いはなかった。逃げようとする侵入者たちを、彼女は人知を超えた力で捕らえた。血管を流れる「織り手」の力の顕現けんげんが、島の秘密が漏れることを決して許さなかった。
静寂が戻ると、アカリはエドの元へと帰った。その足取りは力強く、新たな守護者としての風格を纏っていた。エドは彼女を称賛の眼差しで迎えた。
「素晴らしいよ」エドはアカリの手を握り、隠れ家の奥へと連れ戻した。「今夜、君はもう単なる人間ではないことを証明した。君こそが、この場所の真の守護者だ」
島の静寂と波音の中で、二人は運命を共にする者として並び立った。端島はもはや監獄ではない。それは彼らの王国であり、二人の絆が何よりも優先される場所となったのである。




