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仲良しJK三人、異世界に落とされました 〜三馬鹿だけど、そろえば最強〜  作者: タクト


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第1話 進路希望と黒板の魔法陣

新作です。

仲良しJK三人が、わちゃわちゃしながら異世界を雑に攻略していく話です。

コメディ多め、テンポ重視で進めます。


少しでも楽しんでもらえたら、評価やブックマークで応援してもらえると嬉しいです。



「進路希望調査?」


 放課後の教室に、日野陽菜(ひのひな)の声が響いた。


 秋の夕方だった。


 窓の外では、校庭の端に夕焼けが残っている。部活の声も、チャイムの余韻も、少しずつ薄くなっていく時間。


 教室に残っているのは、三人だけだった。


 金髪のサイドテールを揺らした陽菜が、机の上の紙をじっと見る。


「進路って、まだ早くない? ウチ、昨日まで中学生だった気分なんだけど」


「昨日ではないわね。少なくとも一年半は経ってる」


 水瀬澪(みなせみお)は、すでにシャーペンを持っていた。


 黒に近い青みの髪は肩の下までまっすぐ落ち、制服もきっちりしている。こういう紙をもらったら、とりあえず名前から書くタイプだった。


 その向かいで、風見由良(かざみゆら)が長い袖から指先だけを出し、進路希望調査を見下ろしていた。


「……ついに来たか」


「なにが?」


「魂の進路を選ぶ時が」


「普通の進路希望調査よ」


 澪が即座に切った。


 由良は紙の上に、ゆっくり名前を書く。


 風見由良。


 その横に、第一希望。


 異世界転生。


「消しなさい」


 澪が言った。


「まだ第二希望がある」


「第一希望から不受理よ」


 由良は構わず書き足した。


 王立魔法学院。


「増やさないで」


 さらに書く。


 勇者パーティの後方魔法職。


「職種だけ現実的に寄せても駄目」


 陽菜は机に突っ伏して笑った。


「由良っぽ! めっちゃ由良っぽい!」


「陽菜、笑ってないで自分のも書きなさい」


「はーい」


 陽菜はシャーペンを握り、しばらく考えた。


 そして、大きな字で書いた。


 楽しく生きる。


 澪が横から見た。


 三秒、黙った。


「陽菜」


「なに?」


「それは進路じゃない」


「でも大事じゃん」


「大事だけど、進路ではない」


「じゃあ、楽しく進学する」


「雑に進化したわね」


 由良が陽菜の紙を覗き込んだ。


「でも、陽菜らしい。世界が崩壊しても一人だけ楽しそうに生き残りそう」


「褒めてる?」


「かなり」


 陽菜はにっと笑った。


 澪は小さく息を吐いて、自分の紙に「進学」と書いた。


 そこで、手が止まる。


「澪は大学?」


「たぶん」


「たぶんなんだ」


「具体的に何をしたいかまでは、まだ決まってないから」


 その声が、いつもより少しだけ静かだった。


 陽菜も、由良も、それに気づいた。


 三人は幼なじみだった。


 ギャルと優等生とオタク。


 学校では、それぞれ別の場所にいる。話す相手も、趣味も、空気も違う。


 でも放課後になると、気づけば三人でいる。


 だから、誰かの声が少し沈んだだけで分かる。


「そっかぁ」


 陽菜は頬を机に乗せた。


「将来って、急に来るよね」


「来るわね」


 澪が言う。


「十六年もあったのに、急に紙一枚で聞いてくる」


「ねー。怖」


 陽菜が笑う。


 由良は進路希望調査を見つめたまま、ぽつりと言った。


「でも、私達には属性がある」


「急に何の話?」


「日野、水瀬、風見」


 由良は三人を順番に指差した。


「火、水、風」


 陽菜の目が光った。


「ほんとだ! ウチら属性あるじゃん!」


「陽菜、食いつかない」


「食いつくでしょ! 属性だよ? ウチ火っぽい?」


「かなり」


「やった!」


 澪は額に手を当てた。


「名字がそれっぽいだけでしょ」


「いや、これは導き」


 由良が机の横の鞄を漁り、黒いノートを取り出した。


 表紙には、白いペンで魔法陣らしきものが描かれている。


 澪の目が細くなった。


「由良、そのノートは?」


「禁書」


「市販のノートよね」


「禁書として運用している」


「運用で禁書になるの?」


 由良は立ち上がった。


 チョークを一本つかみ、黒板へ向かう。


 そして、やけに手慣れた動きで丸を描き始めた。


「ちょ、何してんの?」


 陽菜が笑いながら身を乗り出す。


「異世界接続陣」


「消しなさい」


 澪が即答した。


「まだ描き始めたばかり」


「描き終わる前に消しなさい」


「待って。火、水、風が揃った今、この教室は境界になる」


「職員室との境界がなくなるわよ」


 黒板に線が増えていく。


 円。


 三角形。


 よく分からない記号。


 由良の目は、いつもの眠そうな目ではなかった。完全にスイッチが入っている。


「右手が疼いてきた……」


 陽菜が心配そうに首をかしげた。


「病気?」


「うん、由良は病気よ」


 澪が言った。


「病気じゃねーよ!」


 由良が振り返る。


「これは選ばれし者にだけ訪れる前兆……!」


「病院行く?」


「行かない!」


 陽菜は黒板を見ながら、進路希望調査をひらひら振った。


「ねえ、これも使おうよ」


「これ?」


「ほら、適性に合わせた進路ってあるじゃん? お互いのいいとこ書けばよくない?」


 澪が紙を見る。


「自己分析としては、まあ、完全に間違いではないけど」


「じゃあやろ! ウチのいいとこいっぱい書いて!」


 陽菜が両手を上げた。


 由良はすぐに書いた。


 いい意味で馬鹿。


「一個目から悪口!」


「いい意味って付いてる」


「便利な免罪符にしないで」


 澪も続ける。


「諦めない。運動神経が人外。コミュ力が高い。明るい。生命力がすごそう。どこでも生きていけそう」


「澪、めっちゃ褒めるじゃん!」


「事実を書いただけよ」


「最後ちょっとゴキブリみたいじゃない?」


「陽菜」


「ごめんて」


 由良がさらに書く。


「火っぽい名前」


「それ、いいところ?」


「大事」


「大事なんだ」


 次は澪の番だった。


 陽菜が嬉しそうにシャーペンを握る。


「澪は真面目! あとスーパーコンピューター!」


「人間扱いして」


「なんでも一回でこなせる。要領いい。水っぽい名前。あと、他人に結界貼ってる」


「どういう意味?」


「なんか、近寄らせないオーラあるじゃん」


 澪が少し黙った。


 陽菜は慌てて手を振る。


「あ、悪い意味じゃないよ! でもウチらは入れてくれるじゃん。だから好き」


 澪は一瞬だけ目を逸らした。


「……そう」


 由良が小さく書き足した。


「冷たい時ある」


「由良」


「事実」


「否定はしないけど、書き方」


「氷っぽくてかっこいい」


「なら許す」


「許すんだ」


 最後は由良だった。


 陽菜と澪は、由良の紙を前に沈黙した。


「なに。怖いんだけど」


 陽菜が書いた。


 厨二病。


「やめろ」


 澪が書いた。


 限界オタク。


「やめろと言った直後に重ねるな」


 陽菜が続ける。


 ニートになりそう。


「未来を呪うな!」


「でも家にいそうじゃん」


「出る時は出る」


「イベントの日だけでしょ」


 澪は淡々と書いていく。


「風っぽい名前。発想がすごすぎる。間違ったらノーベル賞を取りそう。メンタルが弱い。極度の人見知り。集中力はすごい。謎の知識が多い」


 由良は紙を見た。


 口を尖らせながらも、少しだけ嬉しそうだった。


「……褒めてる?」


「かなり」


「半分くらい社会不適合者の診断書だけど」


「でも、由良のそういうところ嫌いじゃないよ」


 陽菜が笑った。


 澪も小さく頷く。


「私達には思いつかないことを、由良は思いつくから」


 由良は長い袖で口元を隠した。


「……そ、そういう真正面のやつは対人防御を貫通するからやめて」


「対人防御低すぎない?」


「紙」


「紙なんだ」


 三枚の進路希望調査が揃った。


 黒板には魔法陣。


 机には三人の名前と、三人が見ている互いの姿。


 陽菜は明るい馬鹿で、諦めない。


 澪は冷静で、なんでも形にする。


 由良は変で、でも発想だけは誰にも追いつけない。


 その時だった。


 廊下から、足音が聞こえた。


 澪の顔が変わる。


「先生」


「やば!」


 陽菜が跳ねるように立ち上がった。


「消せ消せ!」


 澪が黒板消しをつかむ。


 由良は魔法陣の前で手を広げた。


「待って、まだ第三層の補助線が」


「いらない」


「ここがないと接続が不安定に」


「そもそも接続しないで」


 陽菜も黒板消しを持つ。


「由良、どいて!」


「禁忌に触れる時が来たのに!」


「先生に触れられる方が先!」


 足音が近づく。


 三人が一斉に黒板へ手を伸ばした。


 その瞬間。


 魔法陣が、光った。


「え」


 最初に声を出したのは澪だった。


 チョークで描かれただけの線が、淡く輝いている。


 赤。


 青。


 緑。


 細い光が黒板の上を走り、三人の進路希望調査へ伸びた。


「黒板って光るの!?」


「光らない!」


 澪が叫ぶ。


 由良の目が見開かれた。


「来た……!」


「来なくていい!」


 光が弾けた。


 教室が遠ざかる。


 机も、椅子も、窓も、夕焼けも、全部が水の中の景色みたいに歪んでいく。


「手!」


 陽菜が叫んだ。


 澪が陽菜の手を握る。


 由良も澪の手を握った。


「由良! これどうすれば止まるの!?」


「知らない!」


「知らないの!?」


「本で読んだだけ!」


「何の本!?」


「ネット小説!」


「情報源が最悪!」


 次の瞬間。


 三人は消えた。


 教室の扉が開く。


 先生が顔を出した。


「あれ? あの三馬鹿の声がしたと思ったけど……」


 教室には誰もいない。


 黒板の魔法陣も、三枚の進路希望調査も、きれいに消えていた。


 先生は首をかしげる。


「……またどこかで騒いでるのか?」


 そして、扉を閉めた。


 その頃、三人は落ちていた。


 上下も左右も分からない空間だった。


 黒でも白でもない。夜の底に、色だけを溶かしたような場所。


 そこを、三人は手をつないだまま、ぐるぐると落ちていく。


「落ちてる!? これ落ちてるよね!?」


 陽菜が叫ぶ。


「たぶん落ちてる! でも床がない!」


 澪も叫ぶ。


「ふ、ふふ……」


 由良が震える声で笑った。


「ついに……ついに成功した……!」


「笑ってる場合じゃない!」


「だから言ったでしょ! 成功するって!」


「成功の定義を見直して!」


 その時、三人の周りを紙が舞った。


 進路希望調査。


 さっきまで教室にあった三枚の紙が、光を帯びて浮いている。


 そして、どこからともなく声が響いた。


 声というより、世界そのものが言葉になったみたいだった。


『適性記録を確認』


「え、なに!?」


 陽菜が目を丸くする。


『個体名、日野陽菜』


「ウチ!?」


『記録、いい意味で馬鹿』


「そこから!?」


恐怖耐性(きょうふたいせい)を獲得。精神侵食耐性せいしんしんしょくたいせいを獲得』


 陽菜の周りに、赤と金の光が弾けた。


『どこでも生きていけそう。状態異常無効じょうたいいじょうむこうを獲得。熱変動耐性(ねつへんどうたいせい)を獲得』


『生命力すごそう。超再生(ちょうさいせい)を獲得。スーパーアーマー(すーぱーあーまー)を獲得』


『明るい。感情制御(かんじょうせいぎょ)を獲得。光魔法適正(ひかりまほうてきせい)を獲得』


『火っぽい名前。炎魔法適正(ほのおまほうてきせい)を獲得』


『コミュ力すごい。人徳(じんとく)を獲得』


『運動神経人外。リミッター解除(りみったーかいじょ)を獲得』


『諦めない。英雄の雛鳥(えいゆうのひなどり)を獲得』


 陽菜は自分の両手を見た。


「え、ウチ強くない!?」


「強いわね。馬鹿が公式に肯定されたけど」


「ひどくないー?」


 続いて、青い光が澪を包んだ。


『個体名、水瀬澪』


「私ね」


『記録、スーパーコンピューター』


「人間扱いしてほしい」


思考加速(しこうかそく)を獲得。反射加速(はんしゃかそく)を獲得。動体視力向上どうたいしりょくこうじょうを獲得』


『他人に結界貼ってる。結界適正(けっかいてきせい)を獲得』


『水っぽい名前。水魔法適正(みずまほうてきせい)を獲得』


『冷たい時ある。氷魔法適正(こおりまほうてきせい)を獲得。冷血判断(れいけつはんだん)を獲得』


「冷血判断」


 澪が低く呟いた。


 陽菜が目を逸らす。


「でも澪、たまに言うじゃん。ひどいやつ」


「必要なら言うわ」


「ほらー!」


『なんでも一回でこなせる。急速学習(きゅうそくがくしゅう)を獲得。レベルブースト(れべるぶーすと)を獲得』


『真面目。ルールブック(るーるぶっく)を獲得』


 澪は光の中で息を飲んだ。


「ルールブック……」


「澪っぽい!」


「便利そうではあるわね」


 最後に、緑と紫が混じった光が由良を包んだ。


 由良は両手を広げる。


「来た……私の時代が……!」


『個体名、風見由良』


「はい!」


『記録、厨二病』


「はいじゃなかった」


認識不能(にんしきふのう)


「え?」


『限界オタク。認識不能(にんしきふのう)


「お?」


『ニートになりそう。認識不能(にんしきふのう)


「そこは認識して」


『発想がすごすぎる。認識不能(にんしきふのう)


『間違ったらノーベル賞を取りそう。認識不能(にんしきふのう)


 由良の目が輝いた。


「認識不能……? 私の才能を、世界が理解できない……?」


「かっこよく聞こえてきた!」


 陽菜が叫ぶ。


 澪は眉を寄せる。


「嫌な予感しかしない」


『複数の認識不能要素を統合』


 光が由良の背後で大きく広がった。


固有(ユニーク)スキル、創造主(そうぞうしゅ)を獲得』


「きたあああああああ!」


 由良が叫んだ。


「創造主!? やば!」


 陽菜も叫ぶ。


 澪もさすがに目を見開いた。


「名前だけなら一番危険ね」


 由良は震える手を握りしめた。


「これが……私の真の力……!」


『記録、メンタル雑魚』


「今じゃない!」


初期魔力低下(しょきまりょくていか)を獲得。危険察知(きけんさっち)を獲得』


「なんで!?」


『極度の人見知り。対人恐怖症たいじんきょうふしょうを獲得』


「いらない! 対人恐怖症はいらない!」


 陽菜と澪が同時に言った。


「元からじゃん」


「元からね」


「二人ともひどい!」


『風っぽい名前。風魔法適正(かぜまほうてきせい)を獲得』


『集中力はすごい。魔力制御(まりょくせいぎょ)を獲得』


『謎の知識が多い。解析者(かいせきしゃ)を獲得。ストレージ(すとれーじ)を獲得』


危険察知(きけんさっち)風魔法適正(かぜまほうてきせい)を統合。不穏な風(ふおんなかぜ)を獲得』


 由良は泣きそうな顔で笑った。


「強いのか弱いのか分からない……!」


「由良っぽい」


「失礼!」


 世界の声は、最後に三人をまとめて包んだ。


『三名の適性を確認』


『単独運用、難あり』


「言い方」


『相互補完率、異常値』


『三名同時運用、推奨』


 光が三つ、重なった。


『共通称号、三馬鹿(さんばか)


「三馬鹿!?」


 澪が叫ぶ。


「世界にまで言われた……」


 由良が震える。


 陽菜はなぜか嬉しそうだった。


「でも、なんかチーム名っぽくない?」


『ただし、そろえば最強』


 三人は一瞬、黙った。


 その言葉だけが、落ちていく空間の中で、妙に強く響いた。


 そして。


 世界が割れた。


 光の底を抜けた瞬間、視界が開けた。


 夕方の終わりだった。


 空の端に、まだ橙が残っている。


 でも頭上には、もう星が瞬き始めていた。


 地平線まで草原が続いている。


 遠くには、黒い森。


 その向こうには、小さな街の灯り。


 夜へ刺さるような白い塔が一本、空を支えているように立っていた。


 そして、空には月があった。


 見上げるだけで息を忘れるほど、大きな月。


 見たことのない世界だった。


 知らないのに、美しい。


 美しいのに、少し怖い。


 その広すぎる世界へ、三人は落ちていた。


「落ちてるうううううう!」


 陽菜が叫ぶ。


「さっきから落ちてる!」


 澪が叫ぶ。


 由良が突然、青ざめた。


「やばい。不穏な風(ふおんなかぜ)を感じた!」


「私達も感じてる!! 落ちてるから!!」


「このままじゃ死ぬ!」


「「知ってる!!」」


 眼下には森が近づいていた。


 木々が広がる。


 枝が見える。


 地面が見える。


 見えすぎる。


 由良が叫んだ。


「そうだ! 魔法適正だよ! こういう時は最初の覚醒で適正魔法を使って、かっこよく着地って相場が決まってる!」


「そうなの!?」


 澪が叫ぶ。


 陽菜は笑った。


「あはは! やるしか無さそうだね!」


「信じてよ! オタク舐めんな!」


 まず、澪が手を伸ばした。


 落下地点に、水が生まれる。


 大きな水の塊が、森の開けた場所に広がった。


「水!」


 澪の体が水に落ちる。


 ばしゃん、と大きな音がした。


 水しぶきが月明かりを受けて光る。


 澪はずぶ濡れになりながら、水の中から顔を出した。


「できた……!」


 次に、由良が風を呼んだ。


 緑の光が袖の周りにまとわりつく。


 落下の勢いが少しずつ弱まった。


「きた……これだ……!」


 由良はふわりと減速し、地面へ近づく。


 かなりいい感じだった。


 最後の一メートルまでは。


「え」


 どすん。


 由良は尻もちをついた。


「こんなはずじゃあ……」


 最後に、陽菜が両手を広げた。


「じゃあウチも!」


 澪が水の中から叫ぶ。


「待って! 火でどうやって減速するの!」


 由良が地面で痛がりながら叫ぶ。


「推進方向が逆ならワンチャン……!」


「燃えろおおおお!」


 陽菜の手から、炎が出た。


 赤い火が夜の入り口を照らす。


 すごかった。


 魔法だった。


 でも。


 落下は止まらなかった。


 陽菜はそのまま地面に突っ込んだ。


 どごん。


 土が跳ねた。


 地面に、人型の穴が空いた。


「え!?」


 由良が固まる。


「陽菜、し、死んだ!?」


 澪が水から這い上がりながら青ざめる。


 数秒後。


 穴の中から、陽菜の声がした。


「あはは、火じゃ着地できなかった!」


 土まみれの陽菜が、地面からひょこっと顔を出した。


 無傷だった。


 澪と由良は黙った。


 陽菜は笑っている。


「めっちゃ痛かったけど!」


「痛覚はあるんだ……」


 由良が呟いた。


 澪は濡れた髪を払いながら、深く息を吐いた。


「……これ、元の世界に戻れるの?」


 その言葉で、三人の間に少しだけ静けさが落ちた。


 遠くに街の灯りがある。


 森の匂いがする。


 草が夜風に揺れている。


 空には、知らない大きな月。


 ここは、もう教室ではなかった。


 帰り道も、駅も、コンビニも、いつものチャイムもない。


 知らない世界だった。


 由良が、ぐっと拳を握った。


「何をおっしゃる澪さん」


「なに」


「異世界って言ったら成り上がりっしょ! この世界で富と名声と力と権力とBLを貪るんだよぉ!」


「最後いる?」


「いる」


 陽菜が土を払いながら立ち上がった。


 そして、遠くの街を見て、笑った。


「楽しく生きれそう!!」


 澪が呆れたように見る。


「適応が早すぎる」


 陽菜は二人に向かって、太陽みたいに笑った。


「絶対後悔させないから!」


 澪は少しだけ黙った。


 それから、大きな月を見上げる。


「……はぁ。夢じゃないよね」


「ほっぺたつねろうか?」


「軽くね」


「多分ちぎれる!」


「やめなさい」


 由良が真顔で頷いた。


「陽菜の力でつねったら、ほっぺたが異世界転移する」


「あはは、なにそれ!」


 月が、三人を見下ろしていた。


 知らない草原。


 知らない森。


 知らない街。


 知らない空。


 濡れた澪。


 尻もちをついた由良。


 地面に埋まった陽菜。


 こうして、三馬鹿JKの異世界生活が始まった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


新作です。

今回は、仲良しJK三人が勢いとノリと友情で異世界を生きていく、コメディ多めの異世界転移ものです。


一人だと欠点だらけ。

でも三人そろうと、なぜか最強。


陽菜、澪、由良の三馬鹿がどんなふうに異世界を騒がせていくのか、楽しんでもらえたら嬉しいです。


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