side01 臨時加入
「零陵一はいるか?」
教室がざわめいた。
なんせ、かの有名な会長様が俺の名前を呼んで教室の扉の前に現れたのだから。
なんか、前にもあったか?こういうこと。
まあ覚えてないからどうでもいいのだが、俺の名前を使って騒ぎを起こさないでほしい。
「零陵ならあそこに……」
「教えてくれてありがとう」
彼女は俺の席位置を他の生徒に聞いて、こちらを視線に向ける。
そして、なにか問題を引っ提げているであろう表情で、机の前に来た。
「なんの用だ?生徒会には入らないぞ」
「まあ、そう言うな。ちょっと顔を貸してくれ」
「わかった―――どこに行けばいい?」
そう言うと、俺は会長に何も言われぬまま連れていかれる。今までなら、輩の件もあって、警戒したところだが、チーム『DeadHell』は解散しているし、メンバーもほぼ壊滅している。
それに、彼女はそういったことに加担するようなタイプでもない。
そうこうして連れてこられた教室は、誰も使っていない空き教室だった。
今は倉庫として使われているのか、結構な数のダンボールが押し込まれている。
少々、埃臭いところだが、他人に聞かれたくない話をするのならちょうどいいところなのかもしれない。
「なんだ、殺しの依頼か?場合によっては受けてやるぞ。いろいろ巻き込んでしまったからな。今回は特別にタダで受けてやる」
「ち、違うぞ!というか、お前そういうことやってるのか?ダメだぞ」
「いや、そんな依頼が来るほどの交友関係があるように見えるか?冗談だ」
「冗談がわかりにくい……ああ、そうだ。話というのはだな―――私たちを手伝ってくれ!」
彼女はそう言って頭を下げた。
安い、と思うかもしれないが、それくらい彼女は佳境にいるのかもしれない。まあ、確かに月野が消滅してからすでに2週間かそこらが経過している。
新年度もそれなりに進み、生徒会の人手が目に見えて足りなくなったのだろう。
「俺のせいで―――とか言いたいのか?」
「……?なぜ、そんなことを言わなければならないんだ。お前は私を助けてくれたじゃないか」
「まあそうか……」
「生徒会としても、少々まずいんだ。今は部活動の予算会議とか新入生が増えたことによって仕事が多い時期なんだ。月野が欠けたことによってそこら辺の仕事が完了しきってない。それに、例年通りにサッカー部と野球部が予算に対してごねていて、時間ばかりが過ぎているんだ」
「それだけなら、なんとかなりそうだけどな」
「まあ、予算だけなら最終の締め切りもあるから、決まることは決まる。最終的に我々が折れることになるのだが―――問題はそこじゃなくて、体育祭が近いことのほうがまずいんだ」
彼女の話によると、仕事の効率が幾分か悪くなったところに、例年通りの予算難癖大会が始まり、処理しきれないままに、体育祭の仕事も始まったとのことらしい。
言葉にすると簡単ではあるが、彼女がそれを説明するときの必死さはすさまじいものだった。
いつものように流されること上等の生徒会勧誘ではなく、本当に救いを求めている。
本来なら、俺が口を出すことではないが―――
「頼む!期間中はコーヒーをサービスするから!」
「……アイスも」
そうして俺は、臨時で生徒会に入ることになった。
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「と、いうわけで零陵が手伝いに入ってくれる。彼曰く、計算は早いそうだ。なので、同学年の三条と一緒に仕事を頼んでいいか?」
「……会長が言うなら仕方ないですけど。いいんですか?そいつは月野先輩を―――」
「三条、お前も見ただろう?あいつは私を殺そうとしたんだ。そして、彼は助けてくれた」
「でも、化け物じゃ―――!」
どうやら同学年の三条は俺と一緒にするのが嫌なようだった。
まあ、俺が怪物だと怖がっているのだろう。
どうでもいいか。いつものことだ
「俺にあいつがやってないほうの仕事を割り振ってくれ。一緒に仕事したくないのなら、好きに割り振れ」
「―――わかった」
そう言うと彼女は先ほどの運動部のいざこざの予算についての書類をもらう。
若干目を通すと、まあ想定していたうちの範囲内だ。
あれをしろこれをしろ―――おそらく生徒会が幾度も甘い判断を下し続けた結果だろう。
まあ、顧問が生活指導やらのそこそこ立場が高いところにいる先生なのが原因なのか、まかり通るとも思っているはずだ。
まずはそれを砕く。
とりあえず、すべての案を却下してから話を始める。
そこから、採用していいであろう予算だけを可決していく。すると、提示されていた希望予算の3割ほどで最終的に終了した。
「これでいいか?」
「あ、ああ、もう終わったのか?―――って、なんだこれ?ほぼ、野球部とサッカー部の希望予算全無視じゃないか。いや、すごいな……」
「個人のものは個人で買えと言え。その他備品についても幾分か調べて、耐久年数も調べたが、少なくとも1年周期で替えるものではないものも予算は通していない。大会で地区三回どまりの部に予算が下りると思うなと言っておけ」
「いや、言ってもだめなんだが……」
「じゃあ、俺がそこの顧問をお話をしておく。次の予算会議には、従順に話を聞くだけになるさ」
「怖いんだが……」
そういうが、これが一番手っ取り早い方法だ。
子供だろうが大人だろうが、男だろうが女だろうが、恐怖には勝てない。会長が一番わかってるんじゃないのか?まあ、それを聞くのは野暮か
「ほかに仕事はあるか?」
「あ、ああ……今日のところはない。明日から、体育祭の企画を含めて話し合いがある。本格的に頼むのは、明日以降になりそうだが、いいか?」
「問題ない。今日はもう帰っていいってことか?」
「まあ、いいが……うむ、今日はありがとう!これを機に正式に入るつもりは―――」
「ない」
「……まあ、そう言われるのはわかってはいるが―――今のすごい早さで精査して計算して。そういう人材は喉から手が出るほど欲しいものだ」
「あきらめろ。俺はそこまで暇じゃない」
そう言って、俺は生徒会室を後にする。
会計の女には嫌われているみたいだし、書記の女は特に何も言ってこない。興味がないようだが。
会長はいつも通り。
少し面倒な期間になりそうだな。
前回の章と同じようにすでにこの章は完結しています。
私が忘れなければ二日に一回投稿となります。




