side01 THE DROP
「零陵、一……」
俺が助けた会長は、どこか安心したような表情で俺を見る。
この人の情緒がもうわからない。俺のことを怖がってたんじゃないのか?
まあいい。
ようやく尻尾を出したな。これで容赦なく、殺れる。
まだ奴が変身していない?問題ない。
すでに手は打っている。
そう考えた瞬間、身を乗り出してこちらをにらみつけていた月野、生徒会副会長が窓から落ちた。
考える暇もないまま地面へと接触しそうになるが、すんでのところで奴はリアクトに変身した。
「よう、この間ぶりだな」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
朝起きて、それは起きた。
異変を感じたハジメがドアノブの確認に行ってすぐに、私の視界が白い光に包まれた。
なにが起きたのか理解する前に、私は彼に抱き寄せられて包まれた。
温かいというよりも、暑いという感覚に襲われて夢に入りそうだった意識は一気に引き戻された。
そして、次の瞬間には想像もできな程の強烈な音が響く。
ようやく私も悟った。その光と熱の正体は爆発であることに。
だけど、私が次に見た光景はいつもと何も変わらないハジメの部屋だった。
なにが起きたのか理解できたはずだったのに、想像通りのことにはなっていなかった。
「ハジメ……」
「大丈夫か?一瞬だが、判断が遅れた。そのせいで、衝撃と熱、音まで発生させてしまった」
「爆発、だよね?」
「そうだ。おそらくインパクトリアクトだ。ドアノブに仕掛けられた」
「ドアノブって―――触った瞬間にってこと?」
「そうだ」
爆発と抱かれていることへの衝撃でどうにも頭が回らないが、少なくとも彼が対処したというのはよくわかった。
だけどそんなことどうして……
「ことを動かす可能性がある。俺を殺して―――俺が死んだことにして状況を動かす。会長が狙いか?」
「ま、待ってよ。犯人ってもうわかってる感じなの?」
「……副会長の月野だ」
「そう……あいつが、頭目」
「その通り。奴を殺せば、お前を狙う奴もいなくなるだろうな」
「でも、私、あの時以外危なかったことなんて―――」
「俺がいたからだ」
「あ、そうだよね。ありがとう」
「じゃあ、その感謝ついでに一つ頼む」
そうして私は、なかったことになった爆発の後、彼の頼みを遂行することになった。
私たちはすぐさま制服に着替えて、休日の学校へと向かっていく。
彼はリアクトの身体能力を考えればこの短時間でも学校に到着できると言った。じゃあ、どうするのかと聞こうとしたとき、彼は私をお姫様抱っこし、いきなり近くの民家の屋根へと飛んだ。
「ひゃあああ!?」
「喚くな。うるさい」
あれよあれよと、目を回してるうちに学校に到着してしまう。と、思ったら一は私を捨てて校庭へと飛び込んでいった。
次の瞬間には、彼の腕の中に生徒会長である紀里谷奈央が入り込んでいた。
何の迷いもなく抱きしめに言った姿に嫉妬心を覚えたが、私は彼に渡された指示通りに生徒会室に向かっていく。
校舎の2階にあるおかげで、ものの数十秒で到達して部屋の中に入る。
中には、唖然とした様子の同学年の女子に、あくまで冷静そうな先輩の女子。
そして、目的の男子生徒は窓際に体重を預けて―――むしろ乗り出している。これなら、私の力でも!
「うおおりゃあああ!」
私は気合を込めて、声を張り上げながら副会長の月野に向けて体当たりをかます。
バスンと力ない音が鳴るが、窓から身を乗り出している男子高校生一人程度を突き飛ばすくらいの力はできた。
副会長はびっくりしたような表情で振り返るけど、全部後の祭り。ゆっくりと落ちていく様を見送ると、ハジメを見る。
後は頼んだよ。
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俺が少し煽るように目の前のリアクトに声をかけると、奴は目に見えて不機嫌そうな雰囲気になった。
「ちっ、なんでそいつなんだよ」
「あ……?」
「お前じゃねえよ。こいつみたいな薄汚い人間をなんで選ぶんだよ!」
これは俺に対する言葉じゃない。
それを理解すると同時に、腕の中にいた会長が言葉を紡いだ。
「その姿―――お前も人を殺してきたのだろう?だったら、私は受け入れられない」
「そいつだって同じだろうが!そいつは俺の弟も、仲間も!」
「あれはお前の弟たちが原因じゃないのか―――そうだ。零陵はお前のような輩とは違う。怖がる必要なんてないんだ」
そう言って彼女は俺の頬を撫でてくる。
「なんで触る。鬱陶しいな」
「そう言うな。だが、ありがとう」
「……気にするな。―――それにしても迂闊だな。こんなにも簡単に身内にその姿を見せてしまうとは」
「誰のせいだと……!」
そう言って月野は上を見る。
その視線の先には美晴がいた。
あいつは俺の言った指示を達成し、奴の姿の炙り出しに成功した。
いや、もっとも俺は奴が犯人ではないかと思っていたが。
色々考えてはいるが、今優先すべきは会長誰かのもとに預けること。なら、適任がいるか。
俺は飛び上がり、生徒会室に窓から入る。
今は土足だが、それを気にする無粋はいないだろう。
「会長!」
「会長、大丈夫ですか?」
「ああ、二人とも、心配をかけた。だが、零陵が助けてくれた」
「零陵、君―――その……」
会長は助けてくれたと俺を見て言うが、生徒会メンバーの三条楠葉は恐怖の視線がある。
「苦しいのなら無理に関われとは言わん。だが、会長はこの場に預ける。ここで待っていろ。すぐに終わらせる」
それだけ言うと、俺は変身して窓の淵から倒れるように落ち、下の地面にキレイに着地した。
「さあ、さっさと決着つけようか」
「はあ、弟の仇もとらないといけないな」
「お前にそんな感情があるのか。びっくりだ」
「……」
煽りを入れてみるが効いている様子はない。
反応する意味はないと、無視している様子。
ここで感情的になるようなら、周辺一帯の不良グループの頭なんかやらないか。
いや、感情的だからこそ、怒りに震えているのか?
「でも、参考までにどうして俺の正体に気づいた?」
「お前、気付かれてないと思ってたのか?本心からびっくりだよ。あれだけ、わかりやすいことすればおのずとバレるだろ」
「そうか、ならもう少し気を付けないとな」
「いや、次はない。ここで殺すからな」




