side01 犯人は現場に戻る
「犯人は現場に戻ってくる―――こうしてその場に立ち会うと、なかなかの名言だな」
「あ……?お前は、零陵一―――なぜここにいる」
「なぜってそりゃあ、お前がここに来ると踏んでいたからだ」
「なんで……」
なんでという疑問に対しての返答は簡単だ。
先刻の戦闘を行った場所ではあるが、それ以前にこの場所は例のグループの集まりがある場所だ。トルーパーの中のリーダー格をここに置くくらいだ。頭目としても見ることはあるのだろう。
連絡が途絶え、行方も知れなくなったのならなおさらのことだ。
「あいつは弟だったらしいな?頭目さん」
「そうか―――お前があいつを」
「是と返せば?」
「決まってるだろう。殺す」
そう言うと、相手は影の中から姿を現して攻撃を繰り出して来る。
露わになった姿は、先刻のトルーパーに似ていたが、相違点も見られる。
やはりこいつが、インパクトリアクトだ。こいつを殺せば、グループは崩壊するはず。
俺はすぐさま姿を変えて、相手の拳を受け止めた。
「なに……?お前のその姿はなんだ?」
「さあな、知ってどうする?」
「まあそうだな。これから死ぬやつのことに興味なんてない!」
「そうだな。死ぬやつに対しては、不要な情報か」
そう言って、俺は敵のがら空きとなっていた腹部に掌底を叩き込む。
リアクトはくの字で浮き上がる。そこに追撃として、落下直前に側頭部への蹴りを入れた。
「がっ!?」
「なんだよ、頭目だっていうから期待してたのに、大したことないじゃないか」
「な、んで……能力が発動しない。零陵一―――お前、何者だ」
「必要ない情報じゃないのか?二言を多用する男は、本当に無様だな」
「お前、そんな奴だったのか……」
いくつか会話を続けると、ふと疑問がわいた。
「そういえばお前、俺を知ってるのか?」
「ぐっ……お前みたいな不良生徒―――知らないわけないだろ!」
「違うなあ。そこじゃない―――お前は俺の顔を見て俺と認識したな?確かに俺は、名前は全校生徒レベルに知られてるだろう。あれだけ、ガキどもを痛めつければな」
「知ってるなら問題ないだろ……」
「問題大ありだ、馬鹿。名前知ってても、顔がわからなきゃ、そこで終わりだ。俺はほとんど他人と関わってないし、教室から登下校以外で出たりもあまりしていない。そのおかげでな、全校生徒のほとんどは俺の顔を知らない。となると、お前はクラスのやつか―――生徒会メンバーの誰かだな」
「っ……!?」
「その反応、図星だな?それも、生徒会のほうに」
「クソっ!」
リアクトは言葉を吐き捨てながら地面に手のひらを叩きつけた。
その瞬間、叩かれた地面が炸裂し、衝撃波が走る。
頭は使うのか。
だが、これで犯人が絞れた容疑者は三人―――生徒会役員の、書記、会計、副会長のどれか。
今は男の声をしているが、変身後なら声帯をいじることもできないことではない。
そう考えると、どこまでも犯罪に特化した嫌な力だな。
炸裂したことにより、砂煙が発生していたが、以前膠着状態が続いている。
下手に動くこともできない。相手はそこそこできるやつみたいだ。気配が薄い。
これはさすがに意図的だ。
煙が段々と晴れてきて、視界が露わになってくると―――
「ん……?」
先ほどいた場所に奴の姿がない。
逃げたか?―――いや、
「どらあああああ!」
上だ
奴の掌底が俺に当たる前に、上体をのけぞらせて回避する。
それによって、リアクトの攻撃は地面に当たって炸裂したのだが、そこで異変があった。
「今、炸裂したの、地面じゃなかったな」
「すごいな、なんで戦いなれてるんだよ」
「頭を使ったな。手のひらに砂利か何かつけてきたな」
奴の考えている通り、俺と奴の攻撃の間に、少しでも砂があればそれを炸裂させて、俺にダメージを受けさせることは可能だ。
まあ、既出の戦術ではあるが、先の戦闘を見ていない目の前のリアクトにとっては、発見のようなものだろう。
対処法はない。ゆえに、俺も力押しだ。
右手を左腕の外殻に添え、思いっきり引きはがす。
メキメキと痛々しい音を立てるが、構わない。手に持つのに、ちょうどいいくらいの大きさのところで区切り、刀剣に変える。
「なんだよ、それ」
「羨ましいか?やめとけ、思っているよりも痛いから、これ」
「そうじゃねえ、よっ!」
ズドォォン!
「くっ……先に仕込んどいたのか」
突然、後ろにあったドラム缶が爆発した。あの大きさを爆薬に換算すればおおよそ18kg―――正確に、その重量、その威力というわけではない。だが、能力『Impact』は爆発火力が、爆発させた物体の大きさに比例する。
俺の体幹があっても、今の衝撃波を食らえば―――
「くたばれええ!」
体勢が崩れる。
だが、この程度、立て直せないレベルではない。
右足をもう一歩前に出して、無理矢理踏ん張りながら体を起き上がらせる。その起き上がる勢いを利用しながら、剣を上げていき、奴の掌底の打点に合わせた。
結果、見事に相手の手首を切り落とすことに成功する。
しかし、相手はリアクト―――体を失うことくらい、なんでもない。
考えて結論を出すよりも先に、俺はその場から飛びのいた。
次の瞬間、落とされた手が爆発した。
それに加え、リアクトの腕の切り口から手が生えてくる。
「やっぱりレベル4か―――しかも、レベル5に極限まで近づいている。もう、お前の正体に興味を示している場合じゃなくなったな。早急にここで殺す」
「やれるもんならやってみろよ!」
「やるさ。あいつのあの顔は、なんだか見ていると不快な気分になるからな」
「それって会長のことかなあ!?お前みたいな、ゴミが!」
そう言うと、奴は俺に向けて手を突き出す。と、同時にその手の上で爆発が起きて、なにかが飛んできた。
ギリギリ目視で追えるかというくらいのサイズと速度。それを紙一枚の猶予で避ける。
今のはまずかったな。かすりでもしたら、えぐれてたな。
「クソッ、避けんのかよ」
「避けはするだろ。さすがに今のはまずい。やっぱトルーパーとは知能が違うな。戦い方に知性を感じるよ」
「優秀なんでな。あんな奴より」
「そうか―――今の一言でわかった」
「あぁ?」
「お前が果てしない馬鹿だってことがな」
俺の言葉に対して、相手は怒りで声が音になっていなかった。
さあ、ともに踏み出すぞ。もう、お前に後戻りという言葉はない。




