side02 神なるしるべ
「あたしを殺す?私が今どうなっているのかわかって言ってるの?」
「ああ、リアクトに変身していることはすでに理解している」
「リアクト?この姿のことか?」
「そうだ。僕たちにとってそれが増えるのはものすごく都合が悪い。だから、ここで消させてもらうよ」
「はっ、寝言は寝てから言うんだな。お前たち!」
彼女の号令によって死体たちが動き出し、僕に襲ってくる。
その光景に花音は焦り始めてしまうが、逆に僕は極めて冷静な思考をしていた。
距離の関係か、接近のタイミングにムラがある。そこの穴を狙うことにする。
殴りかかってくる手をかいくぐり、中間あたりにいたトルーパーに銃口をくっつける。
いわば、ゼロ距離射撃の構えをとり、引き金を引く。
ズガァン!
爆発するような音が響き渡り、相手の背中側に肉片が飛び散って、後ろ側に倒れこむ。
普通なら撃破したと思うところだが、そううまくはいかないようだった。
「……」
倒したはずのトルーパーが無言で立ち上がり始めたのだ。
「見たか!これが私の能力―――Necromancyだ!お前たちは私の兵隊を殺すことはできない」
「ふむ……」
ズガァン!
彼女の言葉を受けて、僕はもう一度トルーパーを撃ってみる。だが、先ほどと同じようにゆっくりと無言で立ち上がるだけ。
ある一定度の力なら、一般兵装でもリアクトにはダメージが入るが、やはり相手が死体というのが大きいか。
だが、本当に能力は死霊術なのだろうか?
少なくとも、僕たちはそれについて聞いたことがない。いや、その時点ですでに答えは出ているようなものか。
まあ、死体が邪魔なら無視して進めばいい。それができればだけど。
「しかし数が多いな。これ、クラスメイトだけじゃないよね?」
「利用するんだよ!この街はのどかでいるようで、おぞましいほどに汚れてる!お前たちが!その洗礼を受けろ!」
「っ!?」
雨宮は、狂ったように叫び、
僕は違和感を覚えて、ショットガンを下に向けて発射し、その勢いを使って後退する。
すると、僕のいた場所が突然爆発した。
「爆弾……?―――そうか、これがこの街が汚れているという事か」
「そう、その女がのさばってる間に、世界は動いているの!だから、あんな虎ごときに!」
「くっ……」
爆弾を避けた先でトルーパーとの戦闘はかなり厳しいものがある。
少しずつ数は増えていくし、相手は倒れてくれない。
これは、さすがに使わないとまずいか?
しかし、花音を怖がらせるのではだめだ。もっと、そうしなければならないと絶対的な理由を―――彼女がなんとか受け入れられるだけの土台を……
「きゃあああっ!」
ショットガンの発砲音や半分手加減による追い詰めによって気がそれていた。
今の悲鳴は花音だ。
「アハハ!お前、カッコつける割にはなんもできないじゃんか!ほらほら、早くしないとこいつが死んじゃうよ!犯すこともできないんだから、もういても意味ないんだよね!」
「れ、零蘭君……」
「花音!がああああああ!」
一瞬だけ沸き上がった感情―――僕は、これを形容する言葉を知らないが、おのずと拳に力が入った。
なぜだろう―――彼女がトルーパーに首をつかまれて壁に押し付けられているさまを見ると、どうにも腹の底から湧き上がってくる。
多分何も考えてないただのストレート。
その一撃は、目の前の怪人の頭部を粉砕する。
「なっ!?あ、あんた、どこからそんな力が……!」
「高みの見物を決めているところ悪いけど、引きずりおろして殺させてもらう。さっきまでの余裕を見せられると思うなよ?」
「やってみろ!」
僕の煽りに対して彼女は台から飛び降りてくる。
その瞬間を狙っていたかのように―――
ドガァ!
建物の壁をぶち破って、虎のリアクト―――サイコリアクトが現れた。
「グアアアアアアアア!」
「なっ、こいつ!」
「見つけたぞ!雨宮ぁ!」
「なんなんだよ!私の邪魔ばっかりして!みんなを殺して!なにがしたいんだよ!」
「黙れ!お前が、花音を!俺の大事な人を!」
「はっ!死人の分際で良く叫ぶわね!神代雄真!」
「があああああ!」
なぜここがわかった。などと野暮なことは思わない。もはや、想像通りだ。これでもう一つの結論も出た。
しかし、最優先はそちらではない。
優先事項を間違えるようでは、その神代雄真とかいう男となんら変わらない。
僕は花音を助けるために動き出す。
彼女に群がっているトルーパーの排除に動く。少しだけ気合の入った僕は違うよ。
僕は今できる本気でトルーパーを殴る。
殴られたトルーパーは頭部を破裂させて弾け飛ぶ。その際に、血飛沫が飛んできて僕の服を汚した。
その要領を以て、他の怪人たちも殺していく。
いや―――死体を殺すというのは中々に詩的な表現だね。
「零蘭君―――にげ、て……」
「僕はだいじょ―――」
―――大丈夫。そう言おうとした瞬間に、トルーパーたちが僕を囲ってくる。
ふむ……数がよくない。さすがに多すぎる。
僕もどうにかして近接格闘で対応するが、限界だった。
1体2体をつぶしたところで、その上に5体も6体もくれば追いつかない。
これだけの死体を集めたというのは、穏やかな話じゃないね。
そう思案しているうちに、怪人の1体に取りつかれる。
それを皮切りに僕を中心に怪人たちが取り囲むように覆いかぶさってきて、奴らの自重で押しつぶしてきた。
「待って……零蘭君が!はな、離して!」
壁に押しつけられている花音には僕のつぶれていく様が見えていた。その時に何を考えているかはわからなかったが、僕が死んでしまったと考えたに違いない。
ったく、人間として戦うのはここら辺が限界かな。
次の瞬間、僕は上に重なっていたすべてのトルーパーを吹き飛ばす。
「零蘭く……っ!?」
一見窮地を脱した様に見えたが、彼女の眼には一抹の不安が見える。
だが、その反応はむこうで戦っていた雨宮とサイコリアクトも同じことだった。
「なっ!?あいつ、なんなのあの姿は!」
「零蘭颯二……お前は何者なんだ?」
そんな彼女たちの目に映るのは、禍々しいほどのに異形の姿となった僕。
2本の角を持つクワガタのリアクトのような姿になっていることだろう。だが、これが―――この姿が神なる威光。
僕たちの約束の姿だ。
「さあ、行くよ」
次回で一章の最終回となります。
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