第十一話 神官長ランフェル
ランフェル様とクロアは仕事の事で話があるからと、私だけ先に客室へと通された。
1人の修道女の人が来てくれて、これから私の世話などをしてくれるらしい。
「初めまして。私はリーシェと申します。リヴィリカ様のお世話を申し付けられておりますので何かありましたら何なりとお申し付けくださいませ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
ペコリとお辞儀をされたので私もお辞儀を返す。
とりあえずは1人でゆっくりしたいとお願いしたので、紅茶だけ入れてもらい退室してもらった。
「それにしてもあれで90歳なんだ……どうなってるんだろう??魔法かな」
私はベッドで仰向けになってぼぅーと考えた。
しばらくして紅茶を入れてもらっていたことを思い出して、暖かいうちに飲まなければとベッドから起き上がった。
「……リヴィ。風邪を引くから寝るならベッドで寝なさい。」
「うーん……クロア??」
いつの間にか眠っていたみたい……肩を優しく叩かれて目覚めると、外は薄っすらと赤くなっていてもう夕方になっていた。
隣の椅子に座ったクロアは騎士の服から軽装に着替えていた。
「仕事の話はおわった??」
「ああ……明日から近くの海岸に流れ着いた海賊船の調査をしてくる」
「海賊船??私も……」
「リヴィはお留守番だ。どうやら船内に魔物の気配があるらしいからな」
危険な場所には連れて行ってくれないらしい……残念。
しょぼん、と肩を落とすとクロアが頭を撫でてくる。
「すぐ終わらせて来るさ。そしたら一緒にステラエーンの街を周ろう。お前が好きそうなガラス細工の店が新しく出来たらしいから見に行こう。」
「わかったよ。……私も記憶を少しでも思い出せるように頑張る」
「それは構わないがランフェル殿には気を付けるように。……12歳の皮を被ったじじいだからな。」
「なんかそれ言われるとランフェル様に複雑な気持ちで会うことになるからやめてほしいな。」
ランフェル様……どんな人なんだろう。改めてちゃんと知っていきたいな。そう思って窓から空を見ると、うっすらと星たちが輝き始めていた。
そして次の日になるとクロア率いる第一部隊は海賊船に向かうようだ。
私もお見送りの為にランフェル様の横に並んだ。
「では行って参ります。ランフェル様、くれぐれも、くれぐれもリヴィリカの事よろしくお願いしますね。」
「わかっていますよ。クロアは心配しすぎです。この私がずっと一緒にいるのですから大丈夫に決まっているじゃないですか。」
「ずっと一緒にいて欲しいなんて頼んでません。やはり俺は残る」
「隊長。馬鹿な事言ってないで行きますよ。はいはい、みんな出発しますよー」
マークスさんに引っ張られてクロアはしぶしぶ出発した。
……マークスさん、いつも苦労掛けます。
私とランフェル様は騎士達みんなが見えなくなるまで見送った。
「さて、リヴィリカ。やっと落ち着いてお話が出来ますね。私の書斎に行きましょうか」
「はい。ランフェル様」
「リヴィリカ、私の事はランでいいですよ。貴女にそう堅苦しく呼ばれるのはちょっと嫌ですね」
「よろしいのですか……?ではラン様。私もリヴィと呼んでくださいね」
ランフェル様……ラン様にそう言ってもらったのでありがたくそう呼ばせてもらおうかな。
私達は2人でニコニコしながらラン様の書斎へと向かった。
「まずは何を話しましょうか……そうだ。まず私の事を知ってもらいましょう」
「ラン様の事ですか??確かに気になることが沢山あります」
ネイサンさんが入れてくれた紅茶とクッキーのお茶請けをつまみながらラン様が手を叩いて提案した。
「まず私は今年で90歳になりますが、見ての通り姿は少年のままです。これは私がリヴィ、貴女と同じ境遇だった時、力を得るために払った代償なのです。」
「同じ境遇……とは??」
「私も大昔、魔王を倒す勇者一行の聖職者に選ばれましてね。数ある神託のうち3つ目の神託を授かった時です。神託をくださった女神さまが私の容姿をえらく気に入りましてね……そのままの姿でこれからもあってほしいと言われたのです。」
ラン様も私と同じ魔王を倒す旅に出ていたなんて……今まで沢山の冒険者が旅に出ては失敗してきたと聞いている。
「私はその時死者の声を聞く力を頂いた代わりに、代償として老いることが出来なくなったのです。
ですがその直後、魔王がどこかへ身を隠してしまったのです。まぁ、そのおかげで魔物の凶暴化も無くなり一時的に平和になったんですけど……」
魔王が行方不明、魔物の凶暴化も一時的だが収まったことで成す術もなくなりラン様の冒険は終わってしまったらしい。
「一応、また魔王が現れたら……と思ったら平和なまま数十年も経ってしまってね。私の友人達はすっかり老いてしまったよ」
「……それはなんだかとても悲しいです」
つまり自分は若いまま、他の友人達が老いて死んでしまうのを見送ってもなお、ラン様はまだこうして若い少年の姿でいる……私にはそれが耐えられるだろうか……。
一日一話の投稿を出来るようにしています・・・。




