第十話 神聖都市ステラエーン
ステラエーンの街はうっすらと雪が積もっていてレンガ造りの建物がずらりと並んでいた。
聖都は活気があって賑やかだったけど、ステラエーンはゆっくりと時間が流れているかのような穏やかさがある街だった。
まずは、神官長様に会うために街の丘の上にある大きな建物を目指す。
大きな神殿なのでその門もとてつもなく大きかった。
一番上を見ようと見上げたら頭の重さで後ろに倒れそうになり、それをすかさずクロアが背中に手を置いて倒れるのを阻止してくれた。
「ほら、寒いから早く中に入るぞ。」
「うん。……なんだか緊張してきた。」
するとクロアは優しく私の背を押して早く中に入るように促す。
私は深呼吸をしながら門の下を通った。
神殿の中に入るとまず大きな吹き抜けの広間になっていた。
入って正面には立派な装飾のされた扉があり、左右にも長い通路が続いている。…迷子にならない様に気を付けないと。
すると青と白の修道服を着た高齢の男性が出迎えてくれた。
「聖都ガルンハルト聖騎士団第一部隊隊長のクロアと申します。こちらは聖女リヴィリカ。神官長様に謁見したく参りました」
「よくおいでくださいました。ランフェル神官長がお待ちです。どうぞこちらへ」
そして私とクロアの2人は立派な装飾の扉の先にある礼拝堂のようなところに通される。
中は豪華なステンドグラスが壁一面に設置されていて、室内はステンドグラスの様々な色の光が降りそそいでいて神秘的だった。
祭壇には50~60歳ほどの年齢の神父服の眼鏡をかけた優しそうな男性がいた。この人が神官長様かな??
その隣には12歳ほどのふわふわの金髪ショートカットに白いベレー帽をちょこんと乗せた少年がいる。
白くて透き通るような肌とパッチリとした大きな瞳は美しい青色をしていて吸い込まれそうだ。
身長も私と同じぐらいで、白い修道服と白いケープを着ている姿はまさに天使を連想させられる愛らしさだった。
「お久しぶりです。神官長ランフェル様。我が国王リデル様の命令で馳せ参じました」
「ええ。よく来てくださいました。そしてリヴィリカも。また会えるのを心待ちにしていましたよ」
「……え??」
私はてっきり渋めの声聞こえるかと思えば、少年の可愛らしい声が聞こえてきた。
微笑む少年は真っすぐこちらを見つめている。
「えっと……そこの男性が神官長様じゃなくてこっちの少年が神官長様……??」
「おやおや。前回初めて私と会った時と同じ反応をしますね。記憶は無くなっても貴女は貴女ということですね。安心しました」
私が混乱していると神官長様のランフェル様は口に手を当てて上品に笑っている。
その様子を見て隣の眼鏡の神父様がやれやれとため息を吐き、クロアは私の頭をポンポン、と軽く叩いた。
その後、書斎に通されると中央に置かれたソファに座るように勧められる。
2人は余裕で座れる座り心地のいいソファに私とクロアは座ると、テーブルを挟んだ向かいのソファにランフェル様が座る。
眼鏡の神父様……ランフェル様の部下のネイサンさんは暖かいお茶とショコラを用意してくれた。
「さぁ、どうぞ。外は寒かったでしょう」
「はい。いただきます……いい香り」
ランフェル様に勧められて暖かい紅茶を一口飲む。暖かくてとても安心する味がした。
ティーカップをソーサーに置いて、ランフェル様に話しかける。
「あの、ランフェル様。私聞きたいことがあるんです。記憶が無くなってしまったのでそれを出来るだけ取り戻したくて」
「ええ、わかっていますよ。私にわかる事なら何でも教えるつもりです」
「ありがとうございます!!……ところでランフェル様は私の聖魔法のお師匠様だとお聞きしています。私より若そうなのに」
そう、ランフェル様は12歳ほどの少年に見える。
しかも私が旅の最初に訪れたという事はもっと若かっただろうし……。
「リヴィ、この神官長は姿こそ幼いが、実はすごいじじい……痛っ」
「クロア??じじいなんて言ってはいけませんよ??」
「??」
クロアが言うと、ランフェル様は手の平にショコラを置いて反対の手の人差し指でショコラを飛ばすとクロアの額にすごい勢いで当たった。
私は何を言ってるのかさっぱり理解できなくて首を傾げた。
「コホン。リヴィリカ。私は見た目は少年の姿をしていますが、年齢は今年で90歳になります。」
「……え!!90歳!?」
驚いて思わずソファから立ち上がってしまった。
テーブルに手を置いて前かがみでランフェル様を観察する。
「ふふふ。いろいろありましてね。そのことについても今後ゆっくりお話ししますよ。……それより、クロア達に仕事をお願いしたいのですが。」
「今回の遠征はリヴィをここに連れてくるためのリデルが無理やりよこしたんじゃないのか??」
「いえいえそんなまさか。貴方達騎士団の皆さんにはやっていただきたい事があるからリデル陛下にお願いしたんですよ。」
「……面倒な事じゃないだろうな」
「残念ながらちょっと面倒事ですね。頑張ってください」
情報を整理するのに必死な私と、面倒事と聞いて嫌な顔をするクロア、花が咲くように可憐に笑うランフェル様……書斎は不思議な空気になっていた。
ステラエーンに着きました。
お師匠様の神官長ランフェルも登場です。
結構お気に入りキャラなのでどんどん活躍させていきたい・・・




