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理性との闘い

 医務室で処置をさせ、クリスティアンはまた彼女を抱きかかえると王族用の休憩室へ向かった。


「申し訳ありません」

 何度も謝るリリアナに

「謝ったら口づけだ」

 という枷をかけたおかげで部屋に着くまでに…歩きながらクリスティアンは何度もリリアナに口づけをすることができた。



 ベットに彼女を横たえると、彼は上着を脱ぎ、彼女の横に寝そべった。


「君のキレイな足をこんな風にさせてしまって申し訳なかった。そしてありがとう」

「いいえ、クリス様や皆様が無事に戻って来てくださっただけで」

 そう言って涙を流すリリアナを胸に抱き寄せた。


「どうしてご存知だったのですか…足のこと」

「離れていても君の様子はちゃんと報告させていたんだ。

 今日もテオデュロがついていてくれたから安心していたのに…アイツは…私が行く前に物色を始めるなんて…君が1人になってしまった…」

 彼女の柔らかい髪を撫でながら、彼はリリアナの頭に口づけを落とした。



「でも本当に、君が毎日祈っていると聞いたから、戦地でも挫けずにいれた。強くいれたのだ。

 必ず帰る。一刻も早く君のもとへ帰ると。

 ありがとう。私はもう君がいないとダメなようだよ、リリー」


 困ったように優しく微笑むクリスティアンにリリアナは愛しさが溢れてくるのを感じた。

 そして思わずクリスティアンに強く抱きついた。

「私も。会いたくて会いたくて。寂しくて寂しくて。どうかご無事でと。怖かった…とても怖かったのです。獣に立ち向かうより怖かったです」


「!!!ぶっ!それは…喜んでいいのかな、独特な言い回しだな。ハハハ!」


 クリスティアンはそう言いながらも嬉しそうに笑い、リリアナを強く抱きしめ返した。

 しばらくして体を離すと

「リリー、愛してる」

 と言って彼女に口づけをした。

 何度も何度も激しく優しく2人は離れていた分まで口づけをした。



 口唇を離すとクリスティアンはリリアナに微笑み、彼女の額に口づけた。

 額から、眉、瞳、鼻、頬、そして耳へ。

「はっ…」

 彼女がピクリッと反応した。

 ゾクリ… 

 そのまま彼女の細く白い首を口唇でなぞる。

「はっ……あ…あっ…」

 ーーーああ、俺はこれを望んでいたのだ。あの夜に。あの艶めかしい白い首にあの夜もこうしたかったのだ。


 彼女の控えめな、でも思わずこぼれる吐息は彼の耳から身体全体を撫で回すように響く。

 ゾクゾクと…ゾワゾワと…彼の疼きが彼自身を否応なく支配していく。


 キレイに流れる鎖骨、ドレスから溢れる艷やかな胸元に彼は口づけを落とす。

「…んっ…はぁ…あ…」

 首と胸元のどの隙間も残さないとでも言うように口づけを繰り返しながら彼の左手がそっと胸の膨らみの輪郭をなぞる。

「あ…んんっ…」

 そっと目線を上げると、彼女は横を向き彼の愛撫の海に溺れるのを必死で耐え…同時に溺れることの悦びに抗えないでいるようだ。

 ーーーたまらない…



 彼は口づけを口唇に戻した。

「あ~~~~ここで我慢だ!」

 クリスティアンは急に大声を出した。


「いくらなんでもその足の状態の君を襲うのは…何より今ここで初めてというのは…うん、ダメだ。」

 リリアナは恥ずかしさとおかしさで笑いながらクリスティアンの身体に顔を埋めた。

「もぉ!すぐそういうことを口にする!」

「ハハハ…ごめん、ごめん。いや、冗談は抜きにして、私もそろそろ舞踏会に戻らなくてはね」

「はい。そうですね。私も」

「いや、君はいい。ここにいなさい」

「いいえ。今日は皆さんの労いの日ですもの。私も参加したいのです。包帯を巻いて頂いてずいぶんラクになりましたし」

 そう言うとリリアナはベッドから起き、裸足で立ち上がった。


「ホールまでは裸足で行きます。近くに行ったら履きますから」

 おどけて足踏みして見せる。

「とんだご令嬢だな」

 彼も起き上がりベッドの脇に座ると

「おいで」

 彼女を両足の間に引き入れた。



 細い腰に手を回し、下から彼女を見上げ口づけをねだると、彼女は優しくそっと彼の口唇に自分の口唇を重ねた。

 彼女の柔らかい口唇を舐める。そのままそっと舌を彼女の中へ…


 ビクリッとまた彼女の身体が強張る。思わずというように引きかけた彼女の首から頭を左手で引き寄せる。

 ーーーダメだよ、離さない…


 ほどなく彼女がそっと両手を彼の頬に添えてきた。

 彼女も彼を離すつもりはないようだ。彼の興奮が高まる。


 温かい彼女の舌を舐める。小さく狭い口内を舐め回す。

「ふっ…んっ…」

 彼女の鼻から吐息が漏れる。

 ゾクリ。

 彼女の声にならない小さい喘ぎに彼の疼きは止まらない。


 彼女の舌が控えめに彼の舌に絡んでくる。

 一度絡んでしまうと止められない。もっと、もっと…それでも足りないと2人はどんどん激しく舌を絡め合い、唾液を交換しあう。

「はっ…んん…んっ」

「はあ……はっ」


 ーーーーこれ以上はまずいぞ

 クリスティアンは口唇を離し、彼女に微笑みかけた。

 彼女の顔に恥ずかしさと、これまで見たことがなかった欲情という赤みがさしている。

 熱を帯び潤んだ瞳で微笑み返す彼女の美しさたるや…



「はあーーーーーーーーっ」

 クリスティアンは長いため息をつくと彼女の胸に顔を埋めた。

「限界だ」ーーーそして、なんて柔らかいんだ…

「ダメだ。君の、君との初めての時間をこんな風に流されてはダメだ。

 ちゃんと…ゆっくり…誰にも邪魔されない時に…もっと丁寧に…隅から隅まで…」

「もおっ!!!だからどうしてなんでも言葉にしちゃうんですかっ!」

 彼女が彼を強く抱きしめ、彼の顔はさらに彼女の胸に埋まる。

 ーーー無意識かっ!そして良い匂いだ…


「ハハハ!さぁ本当に行こうか」

「はい」


 クリスティアンは立ち上がり上着を着なおすと、またリリアナを抱き上げた。

「キャッ」

「参りましょうか、婚約者様」

「あの、大丈夫です」

「遠慮したら口づけ!」

「……はい」


 そう言うと、なんと今度はリリアナが彼の首に、そして耳に口づけをしてきた。

 ゾクゾクゾク…


「うっ………!!なっ、なっ、…」

「ふふっ、さっきのお返しです」

「…うっ……君は知らないと思うが、私は今、人生最大の危機なのだ。理性と闘いの真っ最中なのだ。……煽らないでくれ」

「ふふふふ…」

 彼女は笑うと、彼の頬に口づけをした。

「覚えておくのだ。この借りは必ず返すぞ、我が姫よ」


 2人は笑いながらもう一度口づけをして、部屋をあとにした。

読んで頂きありがとうございました。

ブクマ等頂けましたら嬉しいです。

よろしくお願いします。

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