表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
9/12

9.社長・管理職・現場・新人の優先順位

 

 会社では、立場によって見なければならないものが違う。


 社長には社長の見るべきものがある。

 管理職には管理職の見るべきものがある。

 現場社員には現場社員の見るべきものがある。

 新入社員には新入社員の見るべきものがある。


 これは、誰が偉いかという話ではない。


 役割が違う以上、優先すべき判断も違うという話である。


 社長の優先順位は、会社全体の継続である。


 会社がどこへ向かうのか。

 どの事業に力を入れるのか。

 何に投資し、何を見直すのか。

 利益は出ているのか。

 資金は回るのか。

 人材は育っているのか。

 信用は守られているのか。

 将来のリスクに備えているのか。


 社長は、会社全体を見なければならない。


 だから、社長が現場と同じ目線だけで判断していては会社は広がらない。

 目の前の作業だけでなく、数年先の方向、資金、競争力、採用、設備、取引先、社会の変化まで見なければならない。


 ただし、社長が会社全体を見ることと、現場を見なくてよいことは違う。


 会社全体の判断は、現場の基礎条件の上に成り立っている。


 現場の人員が足りているのか。

 教育は機能しているのか。

 品質は守られているのか。

 道具や設備は適切か。

 社員は報告しやすい状態か。

 現場の負担は限界を超えていないか。


 ここを見ずに、売上、利益、コスト、成長率だけを見ると判断を誤る。


 社長が見るべきなのは、数字だけではない。


 数字が何によって支えられているのか。

 今の利益は、未来を削って作られていないか。

 現場の努力に頼りすぎていないか。

 管理職が問題を上げられる空気があるか。

 基礎を壊す形で効率化していないか。


 ここまで見る必要がある。


 管理職の優先順位は、方針と現場を接続することである。


 管理職は、上からの方針を現場に伝える。

 同時に、現場の実態を上へ伝える。


 この両方が必要である。


 上の方針をただ流すだけなら、管理職としては弱い。

 現場の不満をただ上へ投げるだけでも、管理職としては弱い。


 管理職の役割は、方針を現場で実行できる形に整えることである。


 人員は足りるのか。

 時間は足りるのか。

 必要な道具はあるのか。

 誰に何を任せるのか。

 どこで確認するのか。

 どの問題を先に潰すのか。

 現場の負担が偏っていないか。


 これを調整するのが管理職である。


 管理職が優先すべきなのは、上に良く見られることではない。

 現場に好かれることでもない。


 会社の目的を、現場で実行可能な形にすることである。


 そのためには、上にも下にも都合の悪いことを言わなければならない時がある。


 現場に対しては、会社全体の利益や方針を説明する必要がある。

 上に対しては、現場の限界や基礎条件の不足を伝える必要がある。


 これを避けると、管理職はただの伝言役になる。


 伝言役の管理職が増えると、会社は歪む。


 上は現場の実態を知らないまま判断する。

 現場は上の方針を押しつけと感じる。

 問題は中間で止まり、報告されにくくなる。

 結果として、現場の基礎が静かに劣化する。


 管理職は、会社の接続部分である。


 接続部分が弱い会社は、方針と現場が噛み合わない。


 現場社員の優先順位は、品質と後工程である。


 現場社員は、目の前の作業を正確に行う必要がある。


 だが、それだけでは足りない。


 自分の作業が、次の誰に渡るのか。

 自分のミスが、どこに影響するのか。

 自分の遅れが、誰の負担になるのか。

 自分の確認が、どの問題を防いでいるのか。


 これを意識する必要がある。


 現場の仕事は、単独で終わるものではない。


 作った物は検査へ行く。

 記録は次の担当者が読む。

 顧客対応の内容は、後の対応に影響する。

 在庫管理のミスは、納期や販売に影響する。

 引き継ぎ不足は、次の人の判断を狂わせる。


 だから現場社員は、自分の作業だけを見ていてはいけない。


 自分の仕事の先を見る必要がある。


 これは、現場に経営者のような判断を求めるという意味ではない。

 現場には現場の範囲がある。


 しかし、その範囲の中で品質、確認、引き継ぎ、後工程への影響を考えることは必要である。


 現場が強い会社は、細かいところで崩れにくい。


 小さな異常に気づく。

 ミスを隠さず報告する。

 次の人が困らないように記録する。

 曖昧なことを確認する。

 新人に必要なことを教える。

 無理な作業量には早めに声を上げる。


 こうした動きが、会社の基礎を支えている。


 新入社員の優先順位は、速さより正確さである。


 新人は、早く役に立とうとする。

 早く仕事を覚えようとする。

 早く一人前に見られようとする。


 その意識自体は悪くない。


 しかし、最初から速さを優先すると危険である。


 新人が最初に身につけるべきなのは、速さではない。


 確認すること。

 報告すること。

 分からないことを聞くこと。

 記録すること。

 勝手に判断しないこと。

 基本動作を崩さないこと。


 これが先である。


 基礎が不安定なまま速さを求めると、ミスが増える。

 ミスを隠すようになると、さらに危険である。


 新人にとって大事なのは、失敗しないことだけではない。


 失敗した時に報告できること。

 分からない時に聞けること。

 教わったことを記録できること。

 同じミスを減らすために修正できること。


 これが育成の基礎になる。


 そして、会社側も新人に対する優先順位を間違えてはいけない。


 新人をすぐに即戦力として扱いすぎると、基礎が身につかない。

 教育を現場任せにしすぎると、教える人によって差が出る。

 質問しにくい空気を作ると、ミスは表に出にくくなる。


 新人教育は、会社の未来への投資である。


 新人が育たない会社は、時間が経つほど苦しくなる。

 いつまでも一部の人に負担が集中し、ベテランが疲弊し、現場の余裕がなくなる。


 社長、管理職、現場社員、新入社員。


 それぞれの優先順位は違う。


 社長は、会社全体の継続と未来を見る。

 管理職は、方針と現場を接続する。

 現場社員は、品質と後工程を支える。

 新入社員は、正確さと確認を身につける。


 どれか一つだけで会社は成り立たない。


 社長が未来を見ても、現場が崩れれば価値は生まれない。

 管理職が調整できなければ、方針は現場で歪む。

 現場が後工程を見なければ、会社の流れは乱れる。

 新人が育たなければ、会社の未来は細くなる。


 会社に必要なのは、全員が同じことを見ることではない。


 それぞれが、自分の役割に応じた優先順位を理解することである。


 そのうえで、自分の判断が会社全体のどこに繋がっているのかを見る。


 これができる会社は強い。


 立場ごとの役割が噛み合い、問題が早く見つかり、基礎が守られ、応用が正しく働く。


 会社は、全員が同じ役割をすることで強くなるのではない。

 それぞれが違う役割を理解し、正しい優先順位で動くことで強くなる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ